痩せる歩き方とは? 基本から目的別まで「ウォーキングフォーム」徹底解説
歩くことは人間の基本動作のひとつ。だが、多くの人のフォームは間違っている。長く、疲れずに距離を歩けるように、正しい歩き方をまずは知っておこう。
取材・文 / 鈴木一朗 撮影 / 小川朋央 スタイリスト / 高島聖子 ヘア&メイク / 村田真弓 監修 / 神戸貴宏
初出『Tarzan』No.828・2022年2月24日発売
歩くことは、多くの人が実践できる。その通りだ。ただ、すべての人が理にかなった歩き方をしているかは疑問。少し歩いただけで疲れる。そういう人は、間違ったフォームで歩いているかもしれない。
だから、ここではまず正しい歩き方を覚えてもらうことにする。それがベーシックウォークだ。そして、これを基に痩身を目標にするダイエットウォーク、下半身の筋力を強化するためのトレーニングウォークを紹介していきたい。
ダイエットウォークとトレーニングウォークでは、より効果を高めるエクササイズウォークも併せて紹介している。ウォーキング前後のストレッチもやろう。そうすれば、必ずや今まで以上に、軽快に歩けるようになる。
① ベーシックウォーク
ちょっとした距離を歩くだけで疲れてしまう。それは、カラダの使い方を間違えているから。人間は日常生活をするうえで、さまざまなクセや習慣を持っている。たとえば、利き足があるというのも一例。
使いやすいほうの脚ばかりを過剰に働かせた結果、一部が極端に疲弊することはままある。理想の歩き方は、全身の筋肉を均等に使うことが大切。ひとつの筋肉だけが突出して力を出さないよう、バランスよく筋肉を連動させていく。
それには、脚の動かし方が重要。ここでは、左脚を基準に蹴り出してから、後方に引き、カラダの下に戻すまでを解説する。右脚も同様に動かし、交互に脚を出していけばベーシックウォークとなる。
1. 膝を伸ばしてまっすぐ前に出す
背すじを伸ばし、骨盤を前後傾させずに立ち、左足をまっすぐ前に出す(地面からの垂線に対し股関節は30度前方に屈曲するのが理想)。このとき膝はしっかり伸ばす。腕はいつもの自然な腕振りでいい。
2. 着地は踵の中心から
踵の真ん中で着地。このとき左脚の膝はやや緩める(膝関節が約5度曲がるといい)。同時に自然な腕振りで左腕は後方、右腕は前方へ移動する。
3. 足裏が接地したときも膝は緩んでいる
左足の全体で地面を捉える。このときも、左膝はやや緩んだ状態にしておきたい。左腕は前方に、右腕は後方へ。歩いているときは、常に背すじはまっすぐに保ったまま。
4. 股関節と太腿前を伸ばす
脚が後方に引かれ、左膝が伸ばされると、股関節や太腿の前面の筋肉がストレッチされる。逆に尻や太腿の裏側の筋肉は収縮して力を発揮する。
5. 最後に左脚を引き寄せる
伸展している股関節や膝を曲げ、左脚を前へと引き寄せる。このとき左腕は後方に、右腕は前方にと移動する。この後、右脚も同じように動かし、左右交互に繰り返すことでベーシックウォークは完成する。
② ダイエットウォーク
痩せるために必要なことは、エネルギーを消費すること。ダイエットウォークは、ダイナミックに歩くことにより、これを狙っている。
まずは骨盤。脚を前方に進める際、その脚側の骨盤を最大限に押し出し、逆に脚が後方に来た際は大きく引いて歩く。このイメージを持つと、ストライドは自然と伸びる。
そして、肩甲骨。片腕を引いたときに、肩甲骨を脊柱へと引き寄せる。そして同じ側の脚が後方に行くに従い、脊柱から離していく。つまり、左の骨盤(左脚)を前に出すときは、左肩が後方へ引かれることになる。上半身と下半身のねじれが生まれることで、エネルギー消費に繫がっていくのだ。
1. 左の骨盤から脚を前に出し、左肩は後方へ引く
背すじをまっすぐにして、左脚の膝を伸ばして前方に。このとき、脊柱を軸として骨盤の左側を前方へと押し出す。同時に、左腕は後方へと十分に引き、肩甲骨を脊柱へと寄せる(肩甲骨の内転)。
2. 着地と同時に右の骨盤を前に向け始める
左足を踵の真ん中から接地させ、足裏全体で地面を捉える。骨盤を前に押し出したぶん、ベーシックウォークよりストライドは伸びる。足が地面を捉えたら、右脚を持ち上げ前方へ向け、同時に左腕を前方へ振り始め、左の肩甲骨を脊柱から離す(肩甲骨の外転)。
3. 右の骨盤を押し出し右脚を前へ
脊柱を軸にして、右側の骨盤を前へと押し出し、左側を引く。すると自然と右足が前に出る。左の肩甲骨はさらに外転し、右の肩甲骨は逆に内転していく。
4. 右足が着地した際、左の骨盤を最後方に
左脚が後方へと伸び、尻と太腿の前の筋肉が十分にストレッチされる。このとき、左の骨盤はもっとも後方に引かれた状態。逆に右の骨盤は前に。左の肩甲骨は外転し、逆に右の肩甲骨は脊柱に寄る。このウォークでは、肩甲骨の内外転によって、腕振りも大きくなる。
5. 左脚を前方へ戻していく
後方に伸びた左脚を、前方へと引き寄せる。このとき、脚の動きに合わせて、骨盤の左側を押し出していく。同時に左腕は後方に向かい、左の肩甲骨は内転を始める。この後、右脚も同じように動かし、左右交互に繰り返すことで、ダイエットウォークは完成する。
「ダイエット」のエクササイズウォーク3種目
普段からダイエットウォークを意識して歩けば、それだけでも痩身の効果はある。が、それに加えてほしいのが、この3つのエクササイズウォーク。
ダイエットウォークの途中に、左右10歩ぐらいずつ行ってみよう。エネルギーの消費に拍車がかかるし、この運動によって、骨盤や肩甲骨まわりの筋肉の柔軟性や筋力が上がる。
そして、ダイエットウォークの動きはより滑らかになっていくのだ。
③ トレーニングウォーク
太腿の前面にある大腿四頭筋の仕事は、脚を前方へと上げること。多くの人はこの筋肉を頼りに歩いているため、尻や太腿の裏側の筋肉が衰える傾向にある。だから、これらを強化できるトレーニングウォークをしよう。
この歩きはダイエットウォークとは逆の動きをする。脚を前に出したときに、その脚側の骨盤を引き、脚を後方に引いたとき、その脚側の骨盤を前に出す。
骨盤が出ることで、股関節が後方へ深く屈曲し、自然と尻や太腿裏の筋肉が大きな力を発揮できるようになる。
踵着地など足の運び、上半身のフォームはベーシックウォークと同じ。普段通りでいい。強く、疲れにくい脚を育てていこう。
1. 右の骨盤と左脚を同時に前に出す
背すじをまっすぐに伸ばし、左脚の膝を伸ばして前方に出す。骨盤の右側を前方に、左側が後方にあるイメージで爪先を前に。上体の動きはベーシックウォークと同じ。骨盤が後方に引かれたぶん、ストライドは狭まる。
2. 着地と同時に左の骨盤を前に向ける
着地したら、足裏全体で地面を捉える。左の骨盤を前方へ押し出し、右側の骨盤を後方に引きながら右脚を持ち上げる。
3. 左の骨盤をさらに前方に押し出す
右脚を前方へ、左の骨盤はさらに前に出す。すると、右の骨盤は脊柱を軸として後方へと引かれる。背すじは伸ばし、上体を左右に振らないように。重心はカラダの中心に。
4. 右脚と左の骨盤を同時に最前方に出す
左脚がもっとも後方に引かれたときに、左の骨盤は最大限まで前に出る。このときに、股関節は後方へ深く屈曲し、尻と太腿の裏の筋肉が収縮する。
5. 左脚を引き寄せ、右の骨盤を前方へ。
股関節と膝を曲げながら、左脚を前方に引き寄せる。このとき、足が前に出る動きに合わせて、右の骨盤を、脊柱を軸にして前方へと向けていく。ここから右脚も同じように動かし、交互に繰り返すことで、トレーニングウォークは完成する。
「トレーニング」のエクササイズウォーク3種目
より強力な下半身を作りたいなら、ぜひ、ここで紹介するエクササイズウォークを加えてほしい。
トレーニングウォークをしている途中で左右10歩ほど、この3種類を行えばよい。脚全体の筋力アップができるし、とくに尻や太腿の裏に効かせることができる。実はこれらの筋肉は、加齢とともにどんどん劣化してしまう筋肉でもある。
長い人生、ずっと歩き続けたいなら、鍛えたほうが賢明なのだ。