やってはいけない。体の不調を招く座り方・歩き方
毎日何時間も続け、何千回も繰り返す動作。何気ない「座る」と「歩く」という動きは、実はとても重要だ。脚組みやガニ股歩きなど、身についた悪い癖を改善すれば、いやな凝りや痛みも去っていくはず。
取材・文/石飛カノ 撮影/角戸菜摘 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/天野誠吾
初出『Tarzan』No.824・2021年12月16日発売
日本人は世界一座る国民
1日420分、時間に換算するとジャスト7時間。これは日本の平均座位時間。ニッポン人は世界一座っている時間が長い国民らしい。
「それに加えてコロナ禍のテレワークで不調を訴えている人が約70%にのぼるというデータもあります。その不調の中でもダントツなのが肩こりと腰痛です」と、トレーナーの伊藤和磨さん。起きてる間はほぼ座りっぱなしのニッポン人。なら肩こり・腰痛対策はまずここから手をつけよという話。
教えてくれた人
伊藤和磨さん
いとう・かずま/代表を務める〈恵比寿・腰痛改善スタジオMaro’s〉には腰痛に悩む人々が全国から訪れる。著書に『アゴを引けば身体が変わる』(光文社)など。www.maros.jp
園原健弘さん
そのはら・たけひろ/バルセロナ五輪50km競歩代表。競技者体験をベースに健康づくりやダイエット指導などを行う。明治大学競走部監督。著書に『最高の歩き方』(きずな出版)など。
NG① 深く座る
座り姿勢で骨盤が後傾して背中が丸くなると腰まわりの筋肉や靱帯、椎間板に負担がかかる。さらに、骨盤が後傾すると頭が前に出て、首まわりの筋肉にこれまた負担がかかってしまう。以上が長時間の座位と腰痛&肩こりの因果関係。
「骨盤を立たせる“立腰”の時間を保つことが健康指標のひとつです。椅子に深く腰かけて坐骨で座るのがいい姿勢と言いますが、実はこうした座り方では100%骨盤は後傾してしまうのです」(伊藤さん)
深く座る≠正しい姿勢。
NG② 脚を組む・揃える
デスクワークでハッと気づくと脚を組んでいる。もちろんこれ、骨盤の歪みや股関節のトラブルを招く悪姿勢。これじゃいかんと膝を閉じたり、お行儀よく脚を揃える。でもこれらもまたバッドな姿勢。
「膝を閉じた内股姿勢で座ると骨盤が後傾するだけでなく、膝の半月板にも負担がかかります。脚を揃える姿勢もこれと同じことが言えます。脚を揃えた姿勢で無理に骨盤を立てようとすると、腰痛の原因になります」(伊藤さん)
組んでも閉じても腰痛必至。
NG③ 直立二足歩行できてる“つもり”
座っている時間以外の多くは、ヒトは立って移動している。だって直立二足歩行の人間だもの。
「ところが、膝や腰が曲がり、頭を前に突き出したような歩き方をする人は少なくありません。こうした歩き方では本来使いたいお尻の筋肉が使えず、骨盤を立たせることができません」(園原さん)
つまり「二足歩行」ではあっても「直立二足歩行」ではない、とはウォーキングの専門家・園原健弘さん。骨の並びや関節の動きが適切ではない歩行が筋肉に負担をかけ、肩こり・腰痛を引き起こすのだ。
NG④ 反り腰で歩く
歩く姿勢が悪くなる原因のひとつは、運動不足や座りすぎによるカラダの機能低下。そして、それを補おうとする代償動作だという。
「たとえば胸椎の動きが悪い状態で姿勢よく歩こうとすると、胸椎の代わりに腰椎を反らせて代償します。すると、腰まわりの筋肉に負担がかかり、腰痛を引き起こすことがあります」(園原さん)
胸椎主導で歩くべきところを腰椎をぐいっと反らせて歩けば、そりゃ負担は大きい。将来的にはヘルニアのリスクもあるという。怖っ。
NG⑤ ガニ股で歩く
前方から超ガニ股でのしのし歩いてくるおっさん、と思ったらお兄さん。意外とよく見る。これも膝や腰に負担のかかる歩き方。
「日本人は欧米人に比べて骨盤が薄く、太腿や脛の骨が彎曲気味。こうした骨格の特徴で脚の振り出しの軌道が外側になります。その結果、お尻や内腿の筋肉が使えないガニ股歩行になりやすいといえます」(園原さん)
貫禄のある男らしい歩き方? いや、それもまた「二足歩行」ではあっても「直立二足歩行」ではない。