ランナーの走力をアップさせる|目的別モビリティUPストレッチ(3)
自分のカラダを思い通り、自在に動かすために重要なキーワードが「モビリティ(可動性)」。そんなモビリティに着目したストレッチを紹介。今回のテーマは「ランナーの走力アップを狙う」モビリティUPストレッチ。
取材・文/黒田 創 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.810・2021年5月13日発売
モビリティの何たるか、そして自分の関節可動域もある程度はわかったところで、早速“動けるカラダ”を目指しメソッドを実践しよう。
「一般的にカラダのモビリティを司っているのは筋肉が43%、関節が38%、残り19%が筋膜です。つまり本当の意味でモビリティを手に入れたければ、まずカラダの表面に近い筋膜を“筋膜リリース”によって緩め、静的ストレッチで筋肉の柔軟性を獲得し、そのうえで関節可動域をより広げるための動的ストレッチを行う。この3つを順番にこなすストレッチ・サーキットがおすすめ」(トレーナーの齊藤邦秀さん)
今回は「ランナーの走力アップ」を目的としたストレッチサーキットを紹介する。
股関節と胸椎を狙って、走力UP。
マラソンで後半に脚が動かなくなるのはランナーにとって“キモ”となる股関節がうまく使えていないのも原因のひとつ。膝や足首に比べると意識して動かしにくく、硬くなりがち。数種類のストレッチを習慣にすれば脚の付け根の可動域が広がり、脚をより大きくダイナミックに使えるように。歩幅が広がるので自ずとランの省エネが可能になる。
今回使用するギア:短いフォームローラー
ステップ(1)筋膜リリース
前腿付け根リリース(左右30秒×2〜3回)
- うつ伏せになり、左脚の付け根をローラーに乗せ足裏を上向きに。
- 肘をついて上体を床から浮かす。右脚は曲げる。
- そのまま左の踵を30秒左右交互に捻る。
- 反対側も同様に。
ステップ(2)筋膜リリース
臀部リリース(左右30秒×2〜3回)
- 床に座り、尻をローラーに乗せ、左脚を伸ばす。
- 右膝は曲げ、手はカラダの後ろにつく。
- その姿勢を保ちつつ左足爪先を30秒左右交互に捻る。
- 反対側も同様に行う。
ステップ(3)静的ストレッチ1)
腸腰筋ストレッチ(左右30秒×2〜3秒)
- 右脚を前、左脚を後ろに大きく開く。
- 右膝を90度に曲げ、腰を落としつつ左腕を上げる。背すじを伸ばし、骨盤を立てる。
- そのままカラダを右に傾け、左脚の付け根を伸ばす。
- 元に戻したら反対側も同様に行う。
ステップ(3)動的ストレッチ2
ニーハグ(左右10回×2〜3セット)
- 背すじを伸ばしてまっすぐ立つ。
- 左膝を両手で抱えて持ち上げる。
- そのまま右足で爪先立ちし、同時に左脚をさらに引き上げる。
- 10回繰り返したら反対側も同様に行う。
- 常に背すじと軸脚を伸ばして行うのがポイント。
胸回りのモビリティにも注目!
もう一つ取り入れてほしいのが胸まわりのストレッチ・サーキット。ここは日常生活や長時間のランニングで硬くなって縮こまりがちな部位。常日頃から回旋させ、胸椎の椎骨と椎骨の間を開くクセをつければ、肩甲骨をはじめ上半身がしっかりほぐれ、背すじも伸びるため自然と腕振りが大きくなる。
ステップ(1)筋膜リリース
胸椎回旋リリース(30秒×2〜3回)
- 床にローラーを横向きに置く。
- その上に仰向けになり肩甲骨の下側を乗せ、胸を開く。
- 首が倒れないよう両手で後頭部を支え、膝を曲げる。
- そのまま上体を左右にゆっくり捻る。
ステップ(2)静的ストレッチ
胸四つん這いストレッチ(左右30秒×3回)
- 床に四つん這いになり、左腕を外に広げる。
- ローラーに左手首を置き、顔を右に向ける。
- 左手首を支点に左肩を床に近づける。このとき肩甲骨を寄せるよう意識。
- 胸~肩の筋肉の伸びを感じながらキープ。
- 反対側も同様に。
ステップ(3)動的ストレッチ
スプリットソラシックローテーション(左右10回×2〜3セット)
- 立ち姿勢から右脚を前、左脚を後ろに大きく開く。右膝の角度は90度に。
- 右脚の内側真横に左手をつき、右手を高く上げながら上半身を右側に開く。
- 右手を戻したら右手を右脚の内側真横につき、同様に上半身を左に大きく開く。これで1回。
- 足を入れ替え同じ動きを行う。
スタビリティトレも取り入れよう!
全身の関節にはモビリティ優位とスタビリティ優位、2つのタイプがある。ストレッチ・サーキットはモビリティを高めてカラダの動きを自在にすることが主な目的だが、そうしてカラダを緩めるだけでは少し物足りない。
関係する部位や体幹のスタビリティトレーニングを行い、安定性を高めておくことが重要だ。
スタビリティトレ|ワンレッグ RDL 2D(左右10回×2〜3セット)
- 背すじを伸ばして立ち、手を腰に。
- 左膝を腰の高さに上げ、続けて上体を右に倒しつつ左脚を斜め下に伸ばす。
- 上体を前傾し、左脚をカラダの後ろに伸ばす。これで1回。
- 姿勢が崩れないよう意識。
- 脚を入れ替えて反対側も同様に行う。
スタビリティトレーニングは筋肉の柔軟性や関節の可動範囲、さらにモビリティ(可動性)が狭いままでやっても使える部位と使えない部位の差が大きくなってしまう。ストレッチ・サーキットにプラスすれば、特定の部位に負担をかけずに全身の安定性を養うことができる。