実は怖い、習慣性いびき。
普段かかないが、疲労が溜まっていたり、酒量の多かった夜だけ顔を出すのは散発性いびき。これはうるさいだけで、さして心配もない。一方、毎晩かくのは習慣性いびき。そして、これが少々厄介だ。習慣性いびきをかく人の7~8割は就寝中、呼吸停止が繰り返し現れるのだ。
一晩(7時間)の睡眠中30回以上の無呼吸(1回10秒以上)、または1時間当たり5回以上の無呼吸が起これば、睡眠時無呼吸症候群だ。
同居者がいれば指摘も受けられるだろうが、一人暮らしなら気づけない。睡眠時無呼吸症候群を発症しているかどうか、セルフチェックの項目をお見せするのでお試しを。
さて、この睡眠時無呼吸症候群の患者は非常に多い。国立循環器病研究センターの発表(2013年11月)によれば推定患者数は200~300万人かそれ以上。400~500万人とする報告もある。
横向き寝と朝の味噌汁、ダメなら呼吸器科を受診。
なぜ人はいびきをかき、無呼吸になるのか? 原因はいろいろで、肥満から喉の周りの肉が増え、気道を圧迫するためとか、アレルギー性鼻炎による鼻詰まりから口呼吸に陥って、などということもある。
では、日本人とは比べものにならないほどの肥満者が多い欧米では、さぞや患者が多いかというと、有病率は実は日本と大差ない。東アジアの民族には軟口蓋が相対的に低く、顎が小さい人がいる。この構造が不利に働くことがあるという。
また、寝姿勢も影響する。仰向けに寝ると血行にはいいが、軟口蓋と舌が気道の奥に沈下し、呼吸の妨げになることがあるのだ。
とはいえ、昼間に眠気がなく、一人暮らしなら、少々の無呼吸くらい問題ないかというと、とんでもない。命に関わることがある。
起きているときの血中酸素濃度は96~100%を維持できるが、重症の睡眠時無呼吸症候群だと、就寝中60%ぐらいまで低下することがあるという。これは8,000m級の山に登るようなもの。こんなことを何年間も、そして毎晩何回も繰り返していては、到底カラダがもたない。
いびきをかいていると気づいたら、まず寝姿勢を変えてみよう。お勧めの体勢を紹介する。これはシムスの体位といって、妊娠中期以降の妊婦に推奨されるものだが、いびきの予防にも役立つはずだ。
舌の筋力が低下し、就寝中に弛緩し過ぎても呼吸を妨げる。日ごろ滑舌の悪い人は、舌の動きを怠けている可能性が高い。筋肉だから使わなければどんどん衰える。舌も筋トレをすればいいのだ。基本動作をスライドにしたので、(人目のない場所で)習慣化しよう。
こうしたカラダの使い方の改善以外にも、睡眠の質を向上するため、朝1杯の味噌汁を飲むのはよい習慣。睡眠中の発汗で失われた塩分のほどよい補給になるし、発酵食品である味噌には必須アミノ酸のトリプトファンが豊富だ。
朝補給すれば就寝時刻の近づくころ睡眠ホルモン、メラトニンに変換されるはず。味噌の他にも豆腐、納豆、乳製品や鶏卵、バナナなどにもトリプトファンは多い。どれも朝の食卓には相性がいいメンバーだ。
あれこれ試してみて、改善の手ごたえが乏しければ、最寄りの呼吸器科を受診しよう。保険適用の治療はたくさんある。一番いけないのは放置だ。そもそも日本人は世界でも一、二を争う睡眠不足大国。人生の3分の1ほどを占める睡眠時間を大切にしようではないか!