自分の眠りの問題点を見つけよう。「睡眠日誌」でわかる、4タイプのダメな眠り方
十分に睡眠時間を確保していたとしても、質が高くなければ疲労感が残るもの。自分の睡眠タイプが分かれば、対策もしやすい。「睡眠日誌」で、いまの眠りをチェックして、4つのタイプ分け改善策に取り組みましょう。
取材・文/神津文人 イラストレーション/沼田光太郎 取材協力/友野なお(睡眠コンサルタント)
目次
しっかり眠れてる? 睡眠の質をチェックしてみよう。
ここに9つのチェックリストがある。一見、睡眠とは関係なさそうに見えるジャンクフードへの食欲だが、睡眠時間が不足すると、塩分、脂質、糖質の高いものへの欲求が高まる傾向があるのだ。
以下の9つの項目のうち、1つでも当てはまったら、あなたの睡眠には質・量になんらかの解決が必要になりそうだ。
- 朝、すっきりと起きられない。
- 朝食を食べる気にならない。
- 朝、排便がない。
- 午前中から寝てしまう。
- 休日はいつもより2時間以上寝てしまう。
- ベッドに入ってから15分以内に寝れない。
- 日中、仕事や趣味をする意欲がわかない。
- いつもより活動量が落ちている。
- ジャンクフードが食べたくなる。朝、すっきりと起きられない。
睡眠時間は足りているのか、睡眠の質は高いのか低いのか。自分に合った適正睡眠時間をとり、その質が高くなければ、睡眠負債は溜まっていくばかり。
「夜にベッドに入ったら15分以内にぐっすりと眠ることができ、朝スッキリと目が覚め、日中眠くなることがなく高いパフォーマンスで活動できた日の睡眠時間が、その人の適正睡眠時間。これを知るためには睡眠日誌をつける必要があります」と、睡眠コンサルタントの友野なおさんは言う。
睡眠日誌はどうやってつくるのか。
睡眠日誌をつけるのに、決まったフォーマットはとくにない。必要な項目は「一日の合計睡眠時間」「就寝中に目を覚ました回数」「起きたときの気分」に加え、「起きている間、眠気が強かった時間帯」「寝床で横になっていた時間」の5つ。これらを毎日記録すればいい。
一日の合計睡眠時間は、寝床に入っているときはもちろん、昼寝や二度寝も含めた時間とする。また、日々の生活のなかで、普段とちがうことがあれば書いておくといい。たとえば飲み会や出張、あるいは仕事上で特別ストレスを感じたことや、激しい運動なども、あとで睡眠を振り返るのに効果的だ。
睡眠日誌には、“眠ったつもり”の思い込みに気づく効果もある。自分では十分な睡眠時間をとれている、熟睡できていると思っていても、日誌をつけて客観視してみると、問題点が浮かび上がってくることもあるのだ。
眠っても疲れが取れない、日中眠気を感じる時間が長いなど、眠りに悩みを抱えているのなら、当然、睡眠日誌をつけるべき。睡眠習慣を見える化することで、自分の睡眠がどんなタイプなのかも分かり、量が足りていないのか、質が悪いのかが判断できる。
睡眠の質を高めるための対策は、日誌から見えてくるタイプごとに違う。闇雲に眠りに良いとされるものをアレコレと試すよりも、タイプを知ったうえで、それに適した対策をとったほうが、快眠への道を最短距離で進めるはず。まずは己を知ることから始めよう!
1週間分の睡眠日誌で見つける、4タイプのダメ睡眠と解決法。
睡眠日誌は2〜4週間(女性の場合は月経周期)つけるのが理想だが、1週間でもある程度の傾向が見えてくる。自分の睡眠タイプが分かれば、対策もしやすい。快眠への道は、自分の睡眠を知ることから始まるのだ。
A. 睡眠不足タイプ…平日の合計睡眠時間が30時間以下の人
B. 入眠障害タイプ…〈ベッドにいる時間〉ー〈眠った時間〉が30分以上の人
C. 中途覚醒タイプ…1日の睡眠で3回以上目が覚める人
D. 熟眠障害タイプ…7時間以上寝ているのに、日中にボーッとする人
A. 平日の合計睡眠時間が30時間以下の人は「睡眠不足タイプ」。
休日を除いた1週間(5日間)の睡眠時間の合計が30時間以下、かつ日中に強い眠気を感じているなら、睡眠不足タイプに当てはまる。
ただし、午後2時前後は睡眠に問題がない人でも眠くなってしまう時間帯。それ以外の午前中や夕方にウトウトしてしまうのが睡眠不足のサインだ。
そんな人は、自分の行動を見直してお片付け。無駄な習慣を削って睡眠時間に。
睡眠不足タイプの人に必要なのは、当たり前のことながら、睡眠時間の確保。そんなこと言われても忙しくて寝る時間をこれ以上増やすなんて無理、と言う人も多いだろう。しかし、改めて一日を見直せばどこかにムダな時間が見つけられるはず。
睡眠コンサルタントの友野なおさんが、睡眠不足の人に推奨しているのが「5大お片付け」。時間、人脈、心、情報、部屋の片付けをして、休む時間を確保しようというものだ。
まずは時間。一日の終わりに、睡眠日誌とともに簡単な行動表を書いてみよう。なんとなくダラダラとやってしまっているムダな習慣が見つかるかもしれない。
次に人脈。実は付き合う必要のなかった飲み会、目的なく参加した交流会、過度なSNSのチェックなどに時間を費やしていないだろうか。
続いて心の整理。過去を反省すること、将来に備えることは大切だが、後悔や未来を不安がることに多くの時間を使う必要はない。また情報過多な時代にあるからこそ、芸能人のゴシップなど自分に有益でない情報からは意識して離れる必要がある。
そして、部屋の整理整頓。会社のデスクが整っていれば、仕事の効率が上がるはず。塵も積もれば山となる。ムダ時間を削って、睡眠時間を確保しよう。
そのためにも「やらないことリスト」を作ってみる。
To Doリストの消化に追われて忙しい日々を過ごす現代人は、やりたいことのために睡眠時間を削りがち。しかし、睡眠時間はカラダを休めるために必要なもので、削るべきものではない。忙しいからこそ、睡眠時間の確保のために“やらないことリスト”を作ってみよう。
長時間のネットサーフィンやゲーム、際限のないSNSのやりとり、夜中のメールチェック。やらないことを明確にしておくと、睡眠時間を削ることなく、日々のTo Doリストをこなせるはず。
B. 〈ベッドにいる時間〉ー〈眠った時間〉が30分以上の人は「入眠障害タイプ」。
布団に入ったものの、30分以上経っても眠れない。そんな日が散見されるなら、「入眠障害タイプ」。症状がひどい人は、午前0時にベッドに入ったのに明け方5時まで寝付けないなんてことも。それなのに7時には起きて仕事に行っているとなると、当然睡眠不足を併発していることになる。
就床時間を思い切って遅くして徐々に睡眠時間を延ばしていく。
改善には、まず自身がどのくらい効率的に眠れているかを表す睡眠効率を確認する必要がある。睡眠効率の計算法は、総睡眠時間(実際に眠っていた時間)÷総就床時間(布団の中にいた時間)×100。
例えば午前0時に布団に入り、2時に眠れて6時に目が覚め、布団を出たのが7時だったとしよう。その場合、4(総睡眠時間)÷7(総就床時間)×100で、睡眠効率得点は57点となる。
睡眠効率得点が85点未満だった場合は、就床する時間を遅くして睡眠効率を高めるところから、改善をスタートしていく。前述の例なら2時に眠れているので、就床自体を2時に変える。あわせて起床時間は6時から6時半に変更。眠くなるまでは布団に入らずソファなどでリラックスした時間を過ごし、目が覚めたら布団から出ることが大切だ。
睡眠効率得点が85点を超えたら、今度はそこから就床時間を15分ずつ(90点以上なら30分)早くしていく。一度圧迫させた睡眠時間を少しずつ延ばしていくことで、自分に合った適切な睡眠時間を確保できるようになるという。
入眠障害タイプの人は睡眠日誌の備考欄に、睡眠効率得点を記入しておくといい。
布団に入る前に筋弛緩法を行い緊張を解く。
入眠障害タイプの人に一度試してほしいのが筋弛緩法。腰幅に足を開いて椅子に座り、足の裏は床につけ両手は膝に。手を握り爪先を天井に向け、全身にグッと力を入れて5秒キープ。息をフーッと吐きながら全身の力を抜き、脱力した状態を5秒キープする。
これを3〜5セット繰り返すことで、心とカラダの緊張がほぐれ、入眠しやすくなる。一度布団に入ってしまった場合は、ベッドの上で寝ながら、手を握って力む、脱力する、を繰り返しても構わない。
C. 1日の睡眠で3回以上目が覚める人は「中途覚醒タイプ」。
睡眠中、何度も目が覚めてしまう中途覚醒タイプ。1週間のうちに一度でも3回以上目が覚めた日があれば、睡眠習慣に何かしらの問題があることが疑われる。
起きてしまう回数が1度だとしても、そこから30分以上寝付けないならこのタイプだ。トイレに起きてすぐ眠れた場合は該当しない。
枕、ベッドのマットレス、寝間着。睡眠環境をすべて見直す!
中途覚醒タイプの人がやるべきは、睡眠環境の総点検。今のベッドのマットレスや、枕はいつから使っているものだろうか。マットレスは10年、枕は2年が快眠をキープするための買い替え周期。
ケガや持病があるわけでもないのに、朝起きたときに肩が凝っている、腰が張っている、首に違和感がある場合は、不自然な寝姿勢になっている可能性が高い。寝具を見直す必要があるだろう。
またマットレスは、座ったときに適度な反発がなく深く沈み込むようなら、買い替え時期といえる。もちろんシーツや枕カバー、掛け布団も定期的に取り替えるべき。睡眠の質に悩まされているのなら、寝具への投資を惜しんではいけない。
男性にありがちなTシャツやスウェットで寝るという行為も、睡眠の質を考慮すると避けてほしいこと。走るときにそれに適したランニングウェアを着るように、寝るときにはパジャマを着たほうがいい。寝返りがしやすくカラダに余計な負荷をかけない設計、吸汗性や保湿性に優れた素材が快眠へと導いてくれる。
足先が冷えやすいという人は緩めのソックスを履いてもいい。暑い日と寒い日で掛け布団の枚数を変えて温度を調整することも大切だ。就寝時に部屋を暗くすることもお忘れなく!
就寝10分前に10分間のマインドフルネス。
就寝前に「今、ココ」に100%集中するマインドフルネス瞑想を10分程度行うことも中途覚醒予防になる。あぐらをかいて目を閉じたら、ゆっくりと鼻呼吸を繰り返すだけでOK。雑念がよぎったら、ラベリング(名付け)をして、思考から切り離そう。
音が気になったら「音」、明日の仕事が頭に浮かんだら「仕事」と心の中で唱えラベリングをすると、雑念の正体が明確になり、頭の中から追い出しやすくなる。雑念を切り離せたら、再び呼吸のみに集中しよう。
D. 7時間以上寝ているのに、日中にボーッとするのは「熟眠障害タイプ」。
毎日7時間以上の睡眠時間を確保できているにもかかわらず、午前中や夕方にボーッとしてしまったり、強い眠気を感じるなら、熟眠障害タイプに当てはまる。睡眠は時間がとれていれば十分というわけではなく、量とともに質が大切。熟眠障害タイプの人は、質が低下しているということになる。
朝起きたらまずは窓際に立ち、30秒間、荷の光を浴びる。
十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中眠気に襲われる、熟睡感が得られないという人は、睡眠の質を高めていく必要がある。
まずは就寝の準備。布団に入る1時間前には、スマホを手放し、パソコンはシャットダウンする。デジタルデバイスのディスプレイに使われているブルーライトの刺激を網膜が受けると、脳が朝だと判断。睡眠を司るホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、カラダが覚醒に向かってしまう。脳に正しく夜が来たことを判断させるために、強いブルーライトの刺激から離れる必要があるのだ。スマホを手放した就床1時間前からは、照明をブルーライトが比較的弱い暖色系のものに切り替え、部屋をやや暗くする。徐々に眠るための準備を整えよう。
起床後は、真っ先に窓際で30秒間、空を見上げて日の光を浴びる。日の光を浴びるとメラトニンの分泌が収まると同時に、セロトニンの分泌が促され、次第に覚醒していく。ここで体内時計がリセットされ、およそ14〜16時間後に睡眠に向かうスイッチが入り、徐々に眠くなる。
一日の始まりに日の光を浴び(曇りや雨でも十分な明るさがある)、夜はブルーライトを遠ざけることが睡眠の質の向上のカギなのだ。
19時前後に軽い運動を行う。
適度な負荷の運動をすることも、睡眠の質の向上につながる。理想の時間帯は19時頃(前日の就寝時間の19時間後が目安になる)。30分程度のジョギングやウォーキングがおすすめ。
この時間帯が会社からの帰宅時間なら、1つ手前の駅で降りて歩いて帰るのもいいだろう。睡眠の質に悩みがある場合は、21時以降の激しい運動は注意が必要。交感神経が優位になり、快眠の妨げになる可能性がある。夜中にトレーニングをしている人は一度見直したい。