安易な食事制限はNG! ダイエットのカギ“舌”を鍛える「舌トレ」3大柱
食欲を整える鍵は口内にアリ。舌を鍛えたらもう太らない! 舌が正しく機能すれば、食欲も正常化する。基本を押さえたら10日間の実践編へ。長い目で確実に!
取材・文/井上健二 イラストレーション/安ケ平正哉 取材協力/石川善樹(ハビテック)
初出『Tarzan』No.776・2019年11月7日発売
ダイエットは本来、期間限定の短期決戦ではなく長期戦であるべき。そうでないと、一時的に痩せられても、その状態をキープすることは難しい。食事量を大きく制限するダイエットに安易に走るのはNGだ。
食べたいものを我慢せずに減量するのが理想。そこでダイエットにも詳しい予防医学研究者の石川善樹さんが提案するのが「舌トレ」。
「食べ物を味わう舌から脳にアプローチし、食べたい欲求を自然に抑えて正しい食習慣が身につきます」
舌トレの鍵を握るのは、この記事で紹介した出汁も多く含む、旨味。
舌が感じる味覚には、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5つがある。加えて近年、第6の味覚として油脂を感じる脂味(脂肪味)も発見された。
ポテチのように中毒性があって過食しやすい食べ物は、甘味、塩味、脂味の組み合わせからなるものが大半。対照的に旨味リッチな食べ物は適量で脳が満たされるので、欲望と闘わなくても食べすぎる心配がない。
舌トレの基礎と実践法を学んで、美味しく食べながら痩せよう。
1. 亜鉛で舌をウォッシュアウトする。
味覚を最終的に感じるのは脳だが、そこへ情報を伝える舌がバカになっていては何にもならない。とくに外食や加工食品の濃い味付けに慣れると舌が麻痺してしまい、旨味を利かせた薄味の料理が味わいにくい。濃い味にまみれた舌を洗濯して復活させるために、10日間のウォッシュアウト期間を設けよう。
この間は旨味&薄味を選んで食べると同時に、亜鉛を積極的に摂る。舌で味覚をキャッチする味蕾という器官は新陳代謝が活発で、10日ほどですっかり入れ替わる。その新陳代謝に欠かせないのが亜鉛なのだ。
「亜鉛の大切さを教えてくれたのは、日本人シェフで初めてフランスでミシュラン一つ星を獲得した松嶋啓介シェフ。彼によると、フレンチのシェフは味覚が鈍らないように、亜鉛たっぷりの牡蠣を食べるそうです」(予防医学研究者の石川善樹さん)
亜鉛の一日の摂取推奨量は男性10mg、女性8mg。それに対して現状では男性8.4mg、女性7.4mgしか摂れておらず、亜鉛は日本人には不足気味のミネラルだ。牡蠣以外に亜鉛を多く含んでいる食品には、レバー、牛肉、パルメザンチーズ、煮干し、カニなどがある。
2. アッパー系よりダウナー系を選ぶ。
舌を蘇らせたら、次は脳をリセットする番である。
脳から見ると、食べ物にはアッパー系とダウナー系がある。
アッパー系は、脳が興奮し続け、いくらでも食べられるもの。逆にいうなら、いつまで経っても脳が満たされないのだ。これは糖質(甘味)、塩(塩味)、油脂(脂肪味)の3本柱からなり、舌に乗せた瞬間にガツンと来る味付けの濃いもの。ハンバーガー、カレー、ラーメンなどのファストフードが典型だ。
ポテチやクッキーなどのスナック菓子のように、口溶けがよすぎるアッパー系はさらに厄介だ。ロクに嚙まずに脳が「食べた!」と認識する前に飲み込めるので、「やめられない、止まらない」状態に陥りやすい。
ダウナー系は旨味が豊かなので脳が興奮せず、少量でも充足感が得られやすい。出汁を利かせた和食が代表格。和食はダイエット向きとされるのは、総じて低カロリーなうえにダウナー系で食べすぎないからだ。
我らが脳には学習機能がある。アッパー系を避け、ダウナー系の薄味で旨味を探すような食べ方をするとトレーニング効果で味覚が鋭くなり、適量で満たされやすくなる。
3. 前歯ではなく奥歯でよく嚙む習慣を作る。
太りやすい早食いも卒業しよう。
早食いが日常になっていると、ファストフードのように前歯で数回嚙むだけで飲み込める食べ物を知らず知らずに選ぶようになる。それが、早食いで太りやすくなる理由。
「嚙めば嚙むほど唾液が出てきます。唾液には旨味のもとであるグルタミン酸が入っているので、しっかり咀嚼すると食事の充足感が上がり、食べすぎが防げる。前歯で飲み込むように食べると唾液が出にくく、満足感が低いので食べすぎます。嚙み応えのある食べ物を、奥歯でゆっくり嚙んで食べる癖をつけてください」
30代以降は唾液の分泌量が年々減る傾向がある。ことに口が乾くドライマウスに悩むタイプは、知らない間に唾液が減少しているのかも。思い当たる人はより咀嚼を意識して。
奥歯でよく嚙んでいると香りまで味わう余裕が出てくる。これもダイエットにはプラスに作用する。
風邪をひくと味音痴になることからわかるように、嗅覚は味わいを大きく左右する。一説によると、脳に伝わる味覚関連情報の90%に嗅覚が関わっているとか。食べ物の匂いまで味わえたらさらに満足度がアップして、過食が確実に避けられるのだ。