沢木敬介(ラグビー指導者)「休むことも“行”のように課す」。
朝3時50分起床から始まる規律ある一日、ジムやサウナで心身を整え、ラグビーと真摯に向き合う日常。「行」のように自らに課す休息と鍛錬とは。
取材・文/生島 淳 撮影/木村心保
初出『Tarzan』No.908・2025年8月7日発売

Profile
沢木敬介(さわき・けいすけ)/1975年生まれ。ラグビー指導者。日大からサントリーに進み、日本代表キャップ7。引退後はコーチとして残り、2015年ワールドカップの日本の躍進を支え、25年5月まで横浜キャノンイーグルスの監督を務めた。
休むことも「行」のように課して、自分をコントロールすることが大切。
シーズン中はルーティーンが決まっていて、朝3時50分に必ず目が覚めます。それからコールドプレスの野菜ジュースとヨーグルトを摂って、4時半には家を出ます。
夜明け前は道も空いてるので、5時にはチームのクラブハウスに着きます。そこから自分のカラダのメンテナンスをして、7時からのコーチミーティングに備えます。8時ごろには選手たちも集まってきて、全体練習。終わってランチを食べて、午後の2時過ぎにはクラブハウスを出ます。ラグビーの仕事は基本的に朝型なんです。
午後は道が渋滞しているので1時間ほどかけて帰宅し、毎日16時過ぎにはジムに行くことにしています。これは大切な気持ちの切り替えの時間で、どんなに疲れていたとしても行く。雨が降っていて面倒でも、行く。自分にとっては修行というか、「行」みたいなものです(笑)。
ジムでは、トレーニングの後に必ずサウナに入ります。かなり温度が高めのサウナなんですが、1セット10分を2、3セットと、サウナにいる時間も決めています。サウナを出て水風呂に入ると、リフレッシュできて整います。そうすると「今日も来てよかった」と思います。行にしないとサボってしまい、この快感は得られないのかもしれません。
そしてビールを飲みながら夕食を味わうのも大切な時間で、食べ終わったらもうベッドに直行。21時前には寝ます。
ただ、3時50分まで熟睡かというと、横になっていてもラグビーのことを考えだすと目がさえてしまうんです。練習やサインプレーのアイデアが浮かんできたら、すぐに起き上がってメモに書き込むようにしています。シャワーの最中でも、濡れたままメモに書き込むくらいです。
こうして睡眠時間が削られてしまうこともありますが、シーズン中も週に1日はオフがあるので、そのときは少し長めに睡眠時間を取ります。寝溜めはできないけど、しっかり眠ることでリカバリーが促されると聞いたので、カラダのことをいたわりながら、目を閉じます。
シーズンオフは海外旅行にも行きますが、休暇というよりラグビー旅行になります。今年もフランスに行ってプロラグビーを視察したり、現地で活躍している日本の選手と食事をしたりしてきました。ラグビーから完全に離れることはないけど、トゥールーズやニースといった南仏にいると、気持ちがほぐれるのを感じました。ラグビーという緊張を強いられる仕事をしているからこそ、癒やしと思える時間も大切にしたいですね。