「サボる」を肯定してよし!運動を継続する8つの秘訣。

やる気はあるのに、運動が続かない。そんな人に必要なのは、完璧な目標より“続けられる工夫”。無理なく始めて、楽しみながら習慣化するためのヒントをお届けしよう。

取材・文/井上健二 イラストレーション/Yo Ueda 監修/白戸拓也、中野ジェームズ修一

初出『Tarzan』No.900・2025年4月3日発売

トレーニング継続の秘訣
教えてくれた人

白戸拓也(しらと・たくや)/パーソナルトレーナー。フィットネス業界黎明期から、プログラム開発やトレーナーの育成を担当。昨年MSFitness鷺沼のディレクター就任。

中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)/スポーツモチベーションCLUB100最高技術責任者。ベストセラー著書多数。運動の始め方、継続のコツなど専門家の目線で解説。

1.目標設定が下手|100%できるものから始める。

運動を始めると決めた瞬間はモチベ最高潮、走るのが苦手なのに「毎日5km走る」といった無謀な目標を立てやすいもの。でも、目標が高いほど挫折率も上がる。

手始めは1日おきに20分歩くなど100%できそうなものに絞って行う。それで成功体験を重ねれば、運動を続ける意欲が維持できる。

そこをとば口に強度や頻度をアップさせて、最終的には「できるか・できないか」が50/50(フィフティ・フィフティ)、つまり実現可能性50%のものに取り組んでみよう。

「50/50だと成就したときの達成感が半端なく、運動により前向きになれます」(フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さん)

2.一人じゃ何もできない|目標を宣言して環境を整える。

キレイなビーチがあり、ランニングコースが整備されていてフレンドリーなジムもある……。そんなハワイやLAのような環境なら「SUPを借りて漕いでみよう」とか「明日朝イチにジムで鍛えよう」といった気分になるもの。運動をしやすい環境に身を置けば、続けるハードルは一気に下がる。

ハワイやLAへの移住は無理ゲーでも、公園やジムの近所に引っ越すことは十分可能。それより手軽なのは、知人や家族に「運動を始める!」と宣言することだ。

すると「調子どう?」などと見守ってくれ、「来年一緒にマラソンに出よう」などと仲間になってくれる人も出てくる。誰かと共に鍛える環境が整えられたら、運動は生涯を伴走する趣味となる。

3.三日坊主で飽きっぽい|「サボる」を肯定。

「こんな自分にもできた」という成功体験は、自己効力感(セルフエフィカシー)を高め、やる気を爆上げする。逆にサボったり、飽きっぽくて三日坊主で終わったりといった失敗体験は、自己肯定感を下げて運動とポジティブに向き合う意欲を削ぎやすい。

成功体験の積み上げに有効なのは、ちょっとした逆転の発想。サボるを成功体験化するのだ。

「運動する日より、運動しないオフ日の方が多い。運動日だけではなく、オフ日も“ちゃんと予定通りに休めた”と成功にカウントしましょう」(中野さん)

三日坊主も「想定通り、3日はできた! 」と全肯定。三日坊主を毎週繰り返せば、週3回は何か運動していることになるのだから。

4.忙しくて続かない|曜日と時間帯を決める。

トレーニング継続の秘訣

運動を一向に始めない人の言い訳は「忙しいから」というもの。でも、運動している人は暇だからやっているわけではない。きっと超多忙なアップルCEOのティム・クックは週数回、出社前にジムで1時間筋トレしているとか。忙しさを言い訳にしたがる人は、単にタイムマネジメントやスケジューリングが下手なだけだ。

まず黙って週2回運動すると決める。平日1回+週末1回なら、クックより多忙でも可能だろう。次に手帳やスマホで予定をチェック。水曜夕方や日曜午前など「ここなら時間が取れそう」という隙間時間を発掘して実施する。

「曜日と時間帯をFIXした方が定着しやすい」(パーソナルトレーナーの白戸拓也さん)

5.成果を焦り失敗しやすい|記録を振り返りやる気アップ。

トレーニング継続の秘訣

おデブさんほど早く痩せたいし、ビルダー体型に恋焦がれる人は明日にでもムキムキになりたい。だが、減量にも筋肉増量にもある程度の時間を要する。成果を焦ると、無鉄砲な計画を立てて頓挫するか、「頑張ってるのに全然結果が出ない!」と早々に諦めるハメに陥る。

少しでも成果が出始めたら、誰でもやる気がアップして継続できる。それまでは「続いている」という事実に目を向け、それ自体を成果と捉えよう。

「有効なのは記録。手帳やスマホに運動のログを残し、自らの努力を“見える化”すれば続ける意志が強くなります」(白戸さん)

ログを詳しく書くのが面倒なら、運動した日は手帳にシールを貼ったりするだけでもOK。

6.先を考えすぎる|運動の“歯磨き化”。

先の先を考えるくらいの心配性だと、まだ運動を始める前から「いつまで続けたらいいの? 」と悩みがち。確かに運動の効き目が続くのは、やっている期間のみ。やめてしまったら、いずれは運動前の体力や体型に逆戻りする。

効果を永続させるために必要なのは“運動の歯磨き化”。

歯磨きは人類最古の習慣ともいわれる。運動をどこまで続けるかを心配するタイプでも、「歯磨きはいつまでやる? 」と疑問には思わないはず。食後自然と歯を磨くのは気持ちいいし、虫歯や歯周病が防げると知っているから。

何でもいいから始めてみて、運動の心地よさと効能を実感すれば、運動は歯磨きレベルまでルーティン化できて自動的に続けられる。

7.軌道修正が苦手|運動のプランを複数用意。

一度決めたらテコでも動かない頑ななタイプは、意志が強そうだが案外運動を続けるのが苦手。決め事をこなせない自分がイヤで、一度決めたルーティンが達成できる見込みが薄いと、運動自体を放棄する恐れがある。

そんな人にお薦めなのは、運動プランを複数持つこと。たとえば30分で5km走るというプランしかないと「今日は15分しかないから走れない」といった誤った判断を下しがち。

「5kmコース以外にも、15分で走れる2.5kmコースを用意しておけば、より臨機応変に続けられるはず」(中野さん)

筋トレなら6種目のフルコース以外に厳選3種目のショートコースを準備するなど、ルーティンを多様化した方が継続率は上がる。

8.楽しいことしか続かない|まずは2週間、興味があることを。

トレーニング継続の秘訣

どんな運動をしたらいいのか? それに対するベストアンサーは「あなたが続けられるもの」。いかなる運動にも何らかの効果はあるものの、どのような運動も即座に成果は得られないからだ。

頑張らなくてもイケるのは、本人が楽しめるもの。「運動は楽しくないから嫌い」という人は、自分が楽しめる運動にまだ出合ってないだけ。何を楽しめるかは、試さないとわからない。似合う服を見つけるために次から次へと試着するように、トレラン、バスケ、ゴルフなどなど、少しでも興味が湧きそうなものにトライしよう。

「習慣化には最低2週間かかる。2週間やってみて、自分なりの楽しみを発見できるものを探してみましょう」(中野さん)