![理想的な「寝具」の選びかた。](/_next/image?url=https%3A%2F%2Ftarzanweb.jp%2Fuploads%2F2025%2F02%2FS__20168927.jpg&w=3840&q=75)
目次
正しい寝室環境の作り方とは。
ぐっすり眠るためには、照明にも温度・湿度にも気を配り、体内時計、自律神経、深部体温といったカラダ内部のコンディションを整えることが求められる。そのうえで欠かせないのは、カラダの外側の環境もちゃんと整備してあげること。
「カラダの内側と外側、双方が整って初めて、良質な睡眠が得られるのです」(スリープトレーナーのヒラノマリさん)
外側で注目したいのは、パジャマ、枕、マットレス、掛け布団、香りといった「寝室環境」。それぞれを正しく修正して、どんな日でも安心して眠れる理想の寝室環境を作り上げよう。
パジャマ|眠りに最も適したユニフォーム。
帰宅したら部屋着になりリラックス。シャワーを浴び、ビールでも片手にダラダラし、眠たくなったらそのままベッドに入る……。そんな人も多いだろうが、そのズボラな習慣が入眠を妨げたり、眠りの質を落としたりしていることも考えられる。眠るためのルーティンとして、部屋着からパジャマへ着替える儀式も大切だからだ。
寝室は眠るための部屋で、ベッドは眠るための場所。眠る以外に使わないのが鉄則だ。寝室でテレビを観たり、ベッドで読書したりしていると、気分の切り替えがうまくいかないため、思った時刻に寝付けない。同様に部屋着は起きて部屋で寛ぐためのもの。眠る専用の服ではないから、「さぁ、寝よう」と思っても入眠しづらい。
「スポーツで競技ごとに最適のユニフォームがあるように、眠るためにも必要なユニフォームがあります。それがパジャマなのです」(ヒラノマリさん)
毎日じゃぶじゃぶ洗える素材が良い。
長袖・長ズボンは、パジャマが最低限クリアすべき条件。安眠を徹底追求するなら、他にもチェックすべきポイントがある。
まず、肌馴染みが良いこと。
「柔らかく、軽いタッチで肌に優しい素材だと、安らぎを招くオキシトシンというホルモンが分泌されやすい。自律神経で休息モードへ誘う副交感神経も優位になり、入眠しやすくなります」(ヒラノマリさん)
次に、通気性が良く、吸湿性&吸水性に優れていること。するとサラッとして汗の気化も促されるので、深部体温が下がりやすい。
イージーケアであることも必須だ。肌に密着するものだから、パジャマは下着と同じように毎日着替えるべき。洗濯機でじゃぶじゃぶ洗えるタイプを買うのが賢い。
「以上を満たすものとして私がお薦めしているのは、綿素材のガーゼ生地。夏場は2重、冬場は3重のものを着るといいでしょう」(ヒラノマリさん)
四季を通じて長袖・長ズボンで寝る。
冬以外は、街着から格下げした古いTシャツや短パンで眠る人は少なくないはず。でも、冬はもちろん、オールシーズン長袖・長ズボンのパジャマで眠るべき。
そもそもパジャマは、服作りの設計図とも言うべき「型紙」からして違う。締め付け感(衣服圧)が強いと窮屈で交感神経が優位になりやすく、気分が高ぶって良い睡眠が取りにくい。そこで全体的にゆったりめで、肩や袖の角度も緩やかに作られているのだ。加えてゆったりした作りだと、寝返りも打ちやすい。
「ヒトは一晩で20回以上寝返りを打ちます。寝返りで放熱すると深部体温が下がりやすく、眠りは中断されにくい。とくに筋肉量が多くて放熱量が多い男性こそ、寝返りが打ちやすいパジャマで寝るべき。また長袖・長ズボンなら、かいた汗を吸収して深部体温を下げやすくしてくれます」(ヒラノマリさん)
ヒラノマリさんと共同開発!快適な眠りを支えるパジャマ。
男性のカラダに合わせたゆとりのあるサイズ感のパジャマ《CORE SLEEP》。汗の吸収・拡散性に優れた3層のガーゼ生地を採用し、汗をかいてもベタつきにくい。17,900円。WEBサイト
いまイチオシのパジャマ
眠りの質を高めるには、睡眠専用のユニフォーム(パジャマ)が肝心。とはいえ、パジャマも千差万別。何を買えばいいかは迷うもの。メーカー各社の担当者へ、寒い時期にオススメのアイテムを教えてもらった!
枕|ポイントは「寝姿勢」。顔の高さが快眠の鍵。
理想の寝姿勢は、立っているときと同じ骨格が保てること。仰向けに寝たときは背骨が真横から見て緩やかなS字カーブを描き、横向きに寝ると床と平行に一直線で並ぶべき。この配列が崩れると首や腰の負担となり、疲れは取れにくく、眠るほど肩こりや腰痛がひどくなることもあり得る。この寝姿勢を保つ鍵を握るのが枕とマットレス。より手軽に買い替えられる枕の話からしよう。
肝心なのは枕に頭を乗せたとき、顎が上がりすぎず、下がりすぎないこと。顔面が床に対して5度ほど下がるのがちょうどいい。枕を買いに行くなら、事前にバスタオルを重ねた「タオル枕」で寝姿勢を確かめてみる。
「タオルの厚みを変えて寝て、スマホで動画や静止画を撮り、背骨の配列と顔の角度を確認。自分に合う高さを知っておくと、枕選びに失敗するリスクが減らせます」(ヒラノマリさん)
寝返りしやすい枕を選ぶ。
枕では高さばかりが気になるけれど、大きさと内部の詰め物にも気を配りたい。起床時、いつも枕から頭が落ちているなら枕が小さすぎるのかも。
「枕が小さすぎると、無意識に寝返りを控えようとするのでNG。頭3つ分の幅、だいたい幅60㎝以上のタイプを選んでおくと、好きなように寝返りが打てて、大きく寝返りを打っても枕から頭が落ちることもありません」(ヒラノマリさん)
詰め物に関しては、重たい頭を乗せても沈み込まない適度な硬さがあり、通気性もあって熱がこもらない素材がお薦め。
「昔ながらのそばがら枕は硬さも通気性も良好ですが、天日干しなどのケアを怠ると害虫が湧いたり、体質次第ではそばアレルギーが起こったりする恐れもある。そうした心配のないポリエチレンパイプや高反発ファイバーを詰め物に用いた枕がいいでしょう」(ヒラノマリさん)
枕だけにこだわらない。
枕とともに寝姿勢を保ってくれるのがマットレス。マットレスの選び方については後述するが、ここで目を向けたいのは枕とマットレスの相性。
「それを無視すると、枕の販売店の店頭で試して良くても、自宅で寝ると違和感があり、たとえオーダーメイドで作ってもしっくりこない“枕難民”に陥りがちです」(ヒラノマリさん)
たとえば、硬めのマットレスで試して程よい高さでも、自宅のマットレスが柔らかめだと枕が沈み込みやすく、枕が思ったより低く感じる。逆に柔らかめのマットレスに置いて適正だったとしても、硬めのマットレスだと沈み込みが少なく高く感じる恐れがある。
枕とマットレスをセットで買い替えるのがベストだが、予算が限られるなら、チョイスしたいのは詰め物の抜き差しで高さが変えられる枕。これならマットレスに応じて最適の高さの枕で眠れる。
理想の枕と出合うためのチェックポイント。
より良い眠りを叶える、キャラ立ち枕8選。
マットレス|体格に合う反発性と厚みを選ぶ。
枕と並び、寝姿勢を保つために重要な役割を果たしているのが、マットレス。選ぶ際には、反発性と厚みにまず注目しよう。高反発タイプと低反発タイプの2種類に大別できるマットレス。
高反発は寝返りが打ちやすいのが利点。素材にはボンネルコイル、ポケットコイル、高反発ファイバー、高反発ウレタンなどが使われる。低反発はカラダにフィットしやすいのが特徴で、おもに低反発ウレタンが用いられる。好みもあるだろうが、いずれにしても正しい寝姿勢が保てるものを。
厚みも寝姿勢に影響する。ことに体重が重たい男性が薄すぎるマットレスで寝ると、体重を支えられず、横向きになったり寝返りを打ったりした際、姿勢が崩れる恐れがある。20cm以上の厚みがあるマットレスをチョイスしておくと安心。販売店で寝てみて、仰向けでも横向きでも快適なものを買おう。
ゾーニングされているマットレスが“吉”。
反発性と厚みにこだわるだけでは、残念ながらベストマッチのマットレスとは出合えない。素材と厚みに加えて重視したいのは、場所によって硬さを変えて体圧を分散させる「ゾーニング」の有無。
立っているときは、無意識に筋肉が働いて姿勢を保っている。ところが、眠るとこうした筋肉のサポートが得られなくなるため、筋肉の代わりにマットレスが姿勢を支える必要がある。
「仰向きで寝たときには、頭に8%、胸に33%、腰に44%、脚に15%の割合で体重が加わるとされています。とくに体圧が集中する胸と腰をしっかり支えるゾーニングが施されているマットレスを選ぶのがよいでしょう」(ヒラノマリさん)
ゾーニングが不十分で胸や腰の重みをきちんと支えられないと、寝ている間ずっと背骨は不自然なカーブのままで固定される。それが慢性的な首こり、肩こり、腰痛などの震源地になることだって考えられるのだ。
香り|リラックスするための「お守り」。
眠るには、外敵に襲われない安心できる環境にいるのが大前提。その感覚を作り出すのは脳だ。脳は五官というセンサーを介し、どのような状況にいるかをリアルタイムでモニタリングする。五官のなかでも嗅覚は、脳内で高度な情報処理を担う大脳皮質とダイレクトにつながる。このため、香りの情報は感情に強く関わることがわかっている。
安心できる場所でリラックスできているという情報を伝える効果が高いのは、ラベンダーの香り。この他、ベルガモット、スイートオレンジなどの香りも、心を穏やかにする。寝室でこれらのエッセンシャルオイル(精油)を使うのも、安眠へ誘う一助となる。
「香りの好みは人それぞれ。嫌いな香りを嗅ぐと交感神経が高ぶり、安らかな気持ちになれない。ラベンダーに限らず、気に入った香りで〝これを嗅ぐと安心〟と落ち着けるものを見つけましょう」(ヒラノマリさん)
好みの香りを持ち歩けば、出張先や旅先でも安眠しやすいはず。下2つのアイテムはヒラノマリさんのおすすめだ。
掛け布団|やっぱり羽毛が最高!
寝室の温度や湿度も大切だが、布団を掛けたときの内部の環境=寝床内気象も見逃せない。布団内部での心地よさを決めるのは、何よりも掛け布団の厚みと素材だ。
掛け布団には、冬用の分厚い本掛け、春秋用でやや薄手の合掛け、そして夏用の薄い肌掛けの3タイプがある。合掛け+肌掛けのセットを二枚合わせという。
「戸建ても集合住宅も気密性が高まった現代では、エアコンなどで室温を調整すれば、真冬でも二枚合わせで十分快適に過ごせます」(ヒラノマリさん)
掛け布団の素材として最適なのは、水鳥の羽である羽毛。軽くて空気を含んで暖かく、湿度の調節力にも優れる。羽毛の布団を掛けた際には、自然なたるみやヒダヒダで体型にフィットしてくれる。
羽毛にも多様なタイプがあるが、ダックよりグース、羽軸があるフェザーより、胸とお腹の毛で羽軸がないダウンが高品質。人工羽毛の掛け布団もある。
毛布の使い方で、暖かさは大きく変わる。
掛け布団に加えて、毛布を持っておくと、寝床内気象を一層心地よく保てる。ことに、合掛け+肌掛けの二枚合わせでもやや寒さを感じる日には、毛布が大活躍。では、掛け布団と毛布はどの順番で掛けるのが正解なのか。
「寒い日は毛布をシーツの上、カラダの下に敷くのが正解。カラダの熱は背中から逃げるので、毛布で断熱するのです。その場合、湿気がこもらないよう、吸湿発散性が高いウールなど天然素材の毛布を敷くようにしてください」(ヒラノマリさん)
ことに羽毛布団は、体温で温められて保温能力が高まる。毛布の上に羽毛布団を掛けて体温を遮断するのはNGだ。手元にもう一枚毛布があるなら羽毛布団の上から重ねる。
「ただし羽毛布団に掛ける毛布は、化繊素材の軽めのタイプにしてください。重すぎる毛布を掛けると空気を含む羽毛の膨らみが潰れてしまうので、暖かさが損なわれる恐れがあるからです」(ヒラノマリさん)
リネン素材|シーツやピローケースはコットン素材が万能。
パジャマと並び、肌に直接触れて眠りを左右するものがある。それがいわゆるリネン。シーツ、ピローケース(枕カバー)、掛け布団カバーなどの総称だ。もっとも汎用性が高く選択肢も多いのは綿素材。吸水性があり、放湿性にも優れる。ちょっと細かい話をすると、同じ綿でも糸の太さによって肌触りは変わる。
「綿では糸の太さを“番手”で表します。番手の数値が大きいものほど糸が細くて肌触りがグッド。40番手が一般的ですが、60番手以上だとソフトでより快適です」(ヒラノマリさん)
リネンで大事にしたいのは、服と同じように季節に応じて“衣替え”をすること。
「綿素材でも、平織りやサテン織りはひんやり感があるので夏向き。冬はより暖かさを感じられるパイル織りやニット織りのリネンにスイッチするといいでしょう」(ヒラノマリさん)
例年酷暑となる夏場は麻もお薦め。綿以上に吸水性が高く、汗をかいてもサラサラ感が長持ちして眠りやすい。