明日の目覚めを気持ちよくする、理想的な「寝具」の選びかた。

快眠のためには、まず眠る環境を整えることが必要。正しく寝具を選んで使うだけで、あなたの眠りはきっと変わる。理想的な寝具の選びかたと、専門家一押しの製品をご紹介。

取材・文/井上健二、神津文人 イラストレーション/小林ラン 取材協力・監修/櫻井 武(筑波大学医学医療系教授、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構副機構長、医学博士)、ヒラノマリ(スリープトレーナー)

初出『Tarzan』No.891・2024年11月7日発売

理想的な「寝具」の選びかた。

正しい寝室環境の作り方とは。

ぐっすり眠るためには、照明にも温度・湿度にも気を配り、体内時計、自律神経、深部体温といったカラダ内部のコンディションを整えることが求められる。そのうえで欠かせないのは、カラダの外側の環境もちゃんと整備してあげること。

「カラダの内側と外側、双方が整って初めて、良質な睡眠が得られるのです」(スリープトレーナーのヒラノマリさん)

外側で注目したいのは、パジャマ、枕、マットレス、掛け布団、香りといった「寝室環境」。それぞれを正しく修正して、どんな日でも安心して眠れる理想の寝室環境を作り上げよう。

パジャマ|眠りに最も適したユニフォーム。

帰宅したら部屋着になりリラックス。シャワーを浴び、ビールでも片手にダラダラし、眠たくなったらそのままベッドに入る……。そんな人も多いだろうが、そのズボラな習慣が入眠を妨げたり、眠りの質を落としたりしていることも考えられる。眠るためのルーティンとして、部屋着からパジャマへ着替える儀式も大切だからだ。

寝室は眠るための部屋で、ベッドは眠るための場所。眠る以外に使わないのが鉄則だ。寝室でテレビを観たり、ベッドで読書したりしていると、気分の切り替えがうまくいかないため、思った時刻に寝付けない。同様に部屋着は起きて部屋で寛ぐためのもの。眠る専用の服ではないから、「さぁ、寝よう」と思っても入眠しづらい。

「スポーツで競技ごとに最適のユニフォームがあるように、眠るためにも必要なユニフォームがあります。それがパジャマなのです」(ヒラノマリさん)

毎日じゃぶじゃぶ洗える素材が良い。

長袖・長ズボンは、パジャマが最低限クリアすべき条件。安眠を徹底追求するなら、他にもチェックすべきポイントがある。

まず、肌馴染みが良いこと。

「柔らかく、軽いタッチで肌に優しい素材だと、安らぎを招くオキシトシンというホルモンが分泌されやすい。自律神経で休息モードへ誘う副交感神経も優位になり、入眠しやすくなります」(ヒラノマリさん)

次に、通気性が良く、吸湿性&吸水性に優れていること。するとサラッとして汗の気化も促されるので、深部体温が下がりやすい。

イージーケアであることも必須だ。肌に密着するものだから、パジャマは下着と同じように毎日着替えるべき。洗濯機でじゃぶじゃぶ洗えるタイプを買うのが賢い。

「以上を満たすものとして私がお薦めしているのは、綿素材のガーゼ生地。夏場は2重、冬場は3重のものを着るといいでしょう」(ヒラノマリさん)

四季を通じて長袖・長ズボンで寝る。

冬以外は、街着から格下げした古いTシャツや短パンで眠る人は少なくないはず。でも、冬はもちろん、オールシーズン長袖・長ズボンのパジャマで眠るべき。

そもそもパジャマは、服作りの設計図とも言うべき「型紙」からして違う。締め付け感(衣服圧)が強いと窮屈で交感神経が優位になりやすく、気分が高ぶって良い睡眠が取りにくい。そこで全体的にゆったりめで、肩や袖の角度も緩やかに作られているのだ。加えてゆったりした作りだと、寝返りも打ちやすい。

「ヒトは一晩で20回以上寝返りを打ちます。寝返りで放熱すると深部体温が下がりやすく、眠りは中断されにくい。とくに筋肉量が多くて放熱量が多い男性こそ、寝返りが打ちやすいパジャマで寝るべき。また長袖・長ズボンなら、かいた汗を吸収して深部体温を下げやすくしてくれます」(ヒラノマリさん)

ヒラノマリさんと共同開発!快適な眠りを支えるパジャマ。

CORE SLEEPのパジャマ

男性のカラダに合わせたゆとりのあるサイズ感のパジャマ《CORE SLEEP》。汗の吸収・拡散性に優れた3層のガーゼ生地を採用し、汗をかいてもベタつきにくい。17,900円。WEBサイト

いまイチオシのパジャマ

眠りの質を高めるには、睡眠専用のユニフォーム(パジャマ)が肝心。とはいえ、パジャマも千差万別。何を買えばいいかは迷うもの。メーカー各社の担当者へ、寒い時期にオススメのアイテムを教えてもらった!

〈ゴールドウイン〉リオプティマム スウェットシャツ/パンツ

ゴールドウイン リオプティマム スウェットシャツ/パンツ「僕も愛用しているのですが、寝る時はもちろん、家でくつろいでいる際にも気持ちよく過ごせるウェアです。また、睡眠時の体温を程よく調整してくれるので、室温に敏感な僕にはなくてはならない存在です」(佐藤浩貴さん)
自分の体温に近い暖かさをキープ!人体から放出される遠赤外線を利用し自然な暖かさを生む。消臭機能も備えている。シャツ22,000円、パンツ22,000円。WEBサイト

 

〈ベネクス〉リカバリーパジャマ ニットサッカー

ベネクス リカバリーパジャマ ニットサッカー

「コットン混のニットサッカー生地が着心地抜群なパジャマで、私も朝までぐっすりを実感し、感動しました。秋から、このパジャマ専用のスペシャルなギフトBOXも登場。大切な人へのギフトにもおすすめです」(下山祐佳さん)
開発期間は3年!心地よい睡眠を実現。素材、シルエット、デザイン。あらゆる角度から心地よさを追求。就寝中のカラダの動きを妨げない設計となっている。33,000円。WEBサイト

〈テンシャル〉BAKUNE Soft Knit

テンシャル BAKUNE Soft Knit

「一般医療機器の疲労回復パジャマ《BAKUNE》から、とろけるようにやわらかい質感のソフトニット素材が新登場しました。疲労回復効果と滑らかな着心地の両立により、毎日のコンディショニングをサポートします」(山川僚介さん)
血行促進により筋肉の張りや凝りを軽減!生地にシアバター加工を施し、肌との摩擦を軽減。また、肩や腕まわりの形状を工夫し、自然な寝返りができるようになっている。26,840円。WEBサイト

〈ワコール〉睡眠科学メンズパジャマ

ワコール 睡眠科学メンズパジャマ

「独自の切り替えパターンで、寝返りのしやすさを追求。脇から袖下は一枚仕立てになっていて腕を動かしやすく、背中や腕にはゆとりをもたせることで、つっぱりにくく、寝返りを妨げにくくなっています」(久保優果さん)
寝返りのしやすさを追求!綿混率の高いデニム調ニット素材を採用。腹まわりを締め付けにくい設計になっている。リラックス感の高い着心地。17,600円。WEBサイト

〈ニュートラルワークス.〉ドラウジー/ホールガーメントロングスリーブクルー/ロングパンツ

ニュートラルワークス. ドラウジー/ホールガーメントロングスリーブクルー/ロングパンツ

「スーパーファインメリノウール素材を使用した、肌触りのよいニットのスリープウェア。心地よい着心地と、“光電子”機能によってカラダから出る熱を輻射して体温を一定に保つことで、質の良い睡眠を支えます」(秋山智春さん)
良質なメリノウールの圧倒的な気持ちよさ!縫い目のないホールガーメント製法で立体的に編み立て。ゆったりとしたシルエットも特徴。トップス26,400円、パンツ22,000円。WEBサイト

〈コラントッテ〉コラントッテRESNO MAGNEリカバリーウェアPLUS ロングスリーブ/ロングパンツ

コラントッテ コラントッテRESNO MAGNEリカバリーウェアPLUS ロングスリーブ/ロングパンツ

「肩甲骨と仙骨に沿って磁石を配置、寝ている間に血行促進・コリを緩和する管理医療機器のリカバリーウェア。肌面の特殊凹凸加工生地がコラントッテのロゴの形になっている遊び心も注目いただきたい点です」(糟谷郁美さん)
磁気の力で睡眠時の血行促進。肩甲骨に10個、仙骨に6個の磁石を配置。ゆったりとしたシルエットで、ストレッチ性も高い。トップス11,000円、パンツ11,000円。WEBサイト

〈シックスパッド〉SIXPAD Recovery Wearスリープトップ/スリープパンツ

シックスパッド SIXPAD Recovery Wearスリープトップ/スリープパンツ

「着て寝るだけで疲労回復するリカバリーウェア。独自の特殊繊維メディキュレーション®が体温を輻射し、血行促進することで、筋肉のハリ・コリの緩和や疲れを軽減。なめらかな肌触りで快適な睡眠を叶えます」(小林さん)
疲労回復できる一般医療機器。吸水・速乾性のある生地を採用。ストレッチ性が高く寝返りもしやすい。快適な睡眠を支えてくれる。トップス13,200円、パンツ13,200円。WEBサイト

〈ブレインスリープ〉ブレインスリープ ウェア サーモコントロール トップス/パンツ

ブレインスリープ ブレインスリープ ウェア サーモコントロール トップス/パンツ

「寒暖差は睡眠の質の低下にも繫がりますが、宇宙服のために開発された調温テクノロジーで人が快適だと感じる肌の表面温度(32±1℃)を保ちます。裏毛生地は吸放湿性が高く、睡眠中の嫌なムレ感を解消します」(伊藤美紀さん)
暑いときに涼しく寒いときに暖かい。繊維の中にマイクロカプセルが組み込まれた温度調整素材を採用。抗菌防臭加工が施されている。トップス12,100円、パンツ12,100円。WEBサイト

〈ニューピース〉Recovery Pajamas SetLong

ニューピース Recovery Pajamas SetLong

「前開き、寝返りしやすい広めのアームホール、着心地のいい肌触りなど、睡眠にとことんこだわったリカバリーパジャマ。疲労回復やトレーニング後のケアはもちろん、特に睡眠の質を上げたい方におすすめです」(上野紗也花さん)
快適な睡眠と心地よい目覚めをサポート。心地よい肌触り、放熱性と吸湿性、寝返りのしやすさを追求。特殊繊維「メディキュレーション®」が血行を促進、疲れを軽減してくれる。27,500円。WEBサイト

枕|ポイントは「寝姿勢」。顔の高さが快眠の鍵。

理想の寝姿勢は、立っているときと同じ骨格が保てること。仰向けに寝たときは背骨が真横から見て緩やかなS字カーブを描き、横向きに寝ると床と平行に一直線で並ぶべき。この配列が崩れると首や腰の負担となり、疲れは取れにくく、眠るほど肩こりや腰痛がひどくなることもあり得る。この寝姿勢を保つ鍵を握るのが枕とマットレス。より手軽に買い替えられる枕の話からしよう。

肝心なのは枕に頭を乗せたとき、顎が上がりすぎず、下がりすぎないこと。顔面が床に対して5度ほど下がるのがちょうどいい。枕を買いに行くなら、事前にバスタオルを重ねた「タオル枕」で寝姿勢を確かめてみる。

「タオルの厚みを変えて寝て、スマホで動画や静止画を撮り、背骨の配列と顔の角度を確認。自分に合う高さを知っておくと、枕選びに失敗するリスクが減らせます」(ヒラノマリさん)

寝返りしやすい枕を選ぶ。

枕では高さばかりが気になるけれど、大きさと内部の詰め物にも気を配りたい。起床時、いつも枕から頭が落ちているなら枕が小さすぎるのかも。

「枕が小さすぎると、無意識に寝返りを控えようとするのでNG。頭3つ分の幅、だいたい幅60㎝以上のタイプを選んでおくと、好きなように寝返りが打てて、大きく寝返りを打っても枕から頭が落ちることもありません」(ヒラノマリさん)

詰め物に関しては、重たい頭を乗せても沈み込まない適度な硬さがあり、通気性もあって熱がこもらない素材がお薦め。

「昔ながらのそばがら枕は硬さも通気性も良好ですが、天日干しなどのケアを怠ると害虫が湧いたり、体質次第ではそばアレルギーが起こったりする恐れもある。そうした心配のないポリエチレンパイプや高反発ファイバーを詰め物に用いた枕がいいでしょう」(ヒラノマリさん)

枕だけにこだわらない。

枕とともに寝姿勢を保ってくれるのがマットレス。マットレスの選び方については後述するが、ここで目を向けたいのは枕とマットレスの相性。

「それを無視すると、枕の販売店の店頭で試して良くても、自宅で寝ると違和感があり、たとえオーダーメイドで作ってもしっくりこない“枕難民”に陥りがちです」(ヒラノマリさん)

たとえば、硬めのマットレスで試して程よい高さでも、自宅のマットレスが柔らかめだと枕が沈み込みやすく、枕が思ったより低く感じる。逆に柔らかめのマットレスに置いて適正だったとしても、硬めのマットレスだと沈み込みが少なく高く感じる恐れがある。

枕とマットレスをセットで買い替えるのがベストだが、予算が限られるなら、チョイスしたいのは詰め物の抜き差しで高さが変えられる枕。これならマットレスに応じて最適の高さの枕で眠れる。

理想の枕と出合うためのチェックポイント。

理想の枕と出会うためのチェックポイント

より良い眠りを叶える、キャラ立ち枕8選。

いびきを軽減させたい人へ。|〈ロフテー〉抱き枕 ボディピローいびき

ロフテー 抱き枕 ボディピローいびき

あえて仰向け寝がしにくい設計になっている抱き枕。頭を乗せる部分が高くなっており、横向き寝をしても呼吸がしやすく、いびきの軽減にも繫がる。足を枕に乗せる設計のため、肩だけに圧力がかからず、朝まで快適に眠れる。41,800円。WEBサイト

横向きでも仰向けでも快適に眠りたい人へ。|〈フランスベッド〉ショルダーフィットピロー プラス

フランスベッド ショルダーフィットピロー プラス

後頭部を包み込む部分、肩や頸椎にフィットする部分の、枕中央の2か所では、詰め物を取り出して高さ調整可能。横向き寝時に肩や首を支えるサイド部分は中央部とは素材が違い、少し高さのある設計。枕の硬さは3種類。22,000円。WEBサイト

起床時の首・肩の違和感に悩む人へ。|〈ニューピース〉リリース

ニューピース リリース

名誉整形外科医監修。脊椎が正しいアーチを描くよう中央部の突起が首とベッドの隙間を埋める形状。首と肩の適正な姿勢を支え、負担を軽減。上下を変えることで首サポートの強さが選べ、アジャストパッドで高さ調整も可能。14,850円。WEBサイト

横向き寝をこよなく愛する人へ。|〈ドリームベッド〉P-898 マキシマムラテラルピロー

ドリームベッド P-898 マキシマムラテラルピロー

流動性のあるパイプをソフトなワタで包み、カラダにやさしくフィットする素材(パイプ量の調整も可能)。横向き寝をした際に、肩から背中にかけてサポートしてくれるL字形。肘置きクッションとして活用することもできる。Sサイズ17,600円(数量限定)。WEBサイト

うつ伏せでも快適に眠りたい人へ。|〈テンピュール®〉オンブラシオ ピロー

テンピュール® オンブラシオ ピロー

うつ伏せ寝でも首や背中に負担がかかりにくく、呼吸しやすいように設計されたピロー。カバーの表面はストレッチ素材で、預けたカラダを動かしやすく、側面はメッシュ素材で通気性を高めている。抱き枕にも適している。33,000円。WEBサイト

硬い枕が苦手な人へ。|〈シーリー〉ラテックスピロー エルゴノミック

シーリー ラテックスピロー エルゴノミック

天然ラテックスをベースに適量の合成ラテックスをブレンド。さまざまな大きさの空気孔を設けることで反発性をコントロールし、頭や首の形状に合わせて柔らかさを変えている。優れた通気性と透湿性を備えているのも魅力。26,400円。WEBサイト

枕が替わると眠れない人へ。|〈マニフレックス〉ピローグランデ

マニフレックス ピローグランデ

ソフトで弾力性のある独自素材、エリオセル・マインドフォーム®を採用。空気が循環するように全面に通気孔が施されている。付属のキャリーケースを使えばコンパクトに収納でき、旅行や出張にも手軽に持っていける。20,900円。WEBサイト

ストレートネックが気になる人へ。|〈エアウィーヴ〉エアウィーヴ ピロー スリム

アウィーヴ エアウィーヴ ピロー スリム

普段枕を使わない人や、ストレートネックの人向けに開発された、薄めの枕。独自素材、エアファイバーの沈み込みにくい適度な反発力によって、理想的な高さをキープしてくれる。2枚のシートコアで高さの調整も可能。17,600円。WEBサイト

マットレス|体格に合う反発性と厚みを選ぶ。

枕と並び、寝姿勢を保つために重要な役割を果たしているのが、マットレス。選ぶ際には、反発性と厚みにまず注目しよう。高反発タイプと低反発タイプの2種類に大別できるマットレス。

高反発は寝返りが打ちやすいのが利点。素材にはボンネルコイル、ポケットコイル、高反発ファイバー、高反発ウレタンなどが使われる。低反発はカラダにフィットしやすいのが特徴で、おもに低反発ウレタンが用いられる。好みもあるだろうが、いずれにしても正しい寝姿勢が保てるものを。

厚みも寝姿勢に影響する。ことに体重が重たい男性が薄すぎるマットレスで寝ると、体重を支えられず、横向きになったり寝返りを打ったりした際、姿勢が崩れる恐れがある。20cm以上の厚みがあるマットレスをチョイスしておくと安心。販売店で寝てみて、仰向けでも横向きでも快適なものを買おう。

ゾーニングされているマットレスが“吉”。

反発性と厚みにこだわるだけでは、残念ながらベストマッチのマットレスとは出合えない。素材と厚みに加えて重視したいのは、場所によって硬さを変えて体圧を分散させる「ゾーニング」の有無。

立っているときは、無意識に筋肉が働いて姿勢を保っている。ところが、眠るとこうした筋肉のサポートが得られなくなるため、筋肉の代わりにマットレスが姿勢を支える必要がある。

「仰向きで寝たときには、頭に8%、胸に33%、腰に44%、脚に15%の割合で体重が加わるとされています。とくに体圧が集中する胸と腰をしっかり支えるゾーニングが施されているマットレスを選ぶのがよいでしょう」(ヒラノマリさん)

ゾーニングが不十分で胸や腰の重みをきちんと支えられないと、寝ている間ずっと背骨は不自然なカーブのままで固定される。それが慢性的な首こり、肩こり、腰痛などの震源地になることだって考えられるのだ。

香り|リラックスするための「お守り」。

眠るには、外敵に襲われない安心できる環境にいるのが大前提。その感覚を作り出すのは脳だ。脳は五官というセンサーを介し、どのような状況にいるかをリアルタイムでモニタリングする。五官のなかでも嗅覚は、脳内で高度な情報処理を担う大脳皮質とダイレクトにつながる。このため、香りの情報は感情に強く関わることがわかっている。

安心できる場所でリラックスできているという情報を伝える効果が高いのは、ラベンダーの香り。この他、ベルガモット、スイートオレンジなどの香りも、心を穏やかにする。寝室でこれらのエッセンシャルオイル(精油)を使うのも、安眠へ誘う一助となる。

「香りの好みは人それぞれ。嫌いな香りを嗅ぐと交感神経が高ぶり、安らかな気持ちになれない。ラベンダーに限らず、気に入った香りで〝これを嗅ぐと安心〟と落ち着けるものを見つけましょう」(ヒラノマリさん)

好みの香りを持ち歩けば、出張先や旅先でも安眠しやすいはず。下2つのアイテムはヒラノマリさんのおすすめだ。

〈athletia〉スイッチング アロマピローミスト/SLEEP

athletia スイッチング アロマピローミスト/SLEEP

ラベンダー、セダーウッドなど100%天然植物の精油を配合したピローミスト。枕に2プッシュすることで、枕元で香りを楽しめる。3,850円。WEBサイト

〈生活の木〉スティックアロマ リラックスノーズ

生活の木 スティックアロマ リラックスノーズ

キャップを取るだけで、いつでもどこでも鼻からラベンダーやヒノキの香りを楽しめる、スティック型のアロマ。880円。WEBサイト

掛け布団|やっぱり羽毛が最高!

寝室の温度や湿度も大切だが、布団を掛けたときの内部の環境=寝床内気象も見逃せない。布団内部での心地よさを決めるのは、何よりも掛け布団の厚みと素材だ。

掛け布団には、冬用の分厚い本掛け、春秋用でやや薄手の合掛け、そして夏用の薄い肌掛けの3タイプがある。合掛け+肌掛けのセットを二枚合わせという。

「戸建ても集合住宅も気密性が高まった現代では、エアコンなどで室温を調整すれば、真冬でも二枚合わせで十分快適に過ごせます」(ヒラノマリさん)

掛け布団の素材として最適なのは、水鳥の羽である羽毛。軽くて空気を含んで暖かく、湿度の調節力にも優れる。羽毛の布団を掛けた際には、自然なたるみやヒダヒダで体型にフィットしてくれる。

羽毛にも多様なタイプがあるが、ダックよりグース、羽軸があるフェザーより、胸とお腹の毛で羽軸がないダウンが高品質。人工羽毛の掛け布団もある。

毛布の使い方で、暖かさは大きく変わる。

掛け布団に加えて、毛布を持っておくと、寝床内気象を一層心地よく保てる。ことに、合掛け+肌掛けの二枚合わせでもやや寒さを感じる日には、毛布が大活躍。では、掛け布団と毛布はどの順番で掛けるのが正解なのか。

「寒い日は毛布をシーツの上、カラダの下に敷くのが正解。カラダの熱は背中から逃げるので、毛布で断熱するのです。その場合、湿気がこもらないよう、吸湿発散性が高いウールなど天然素材の毛布を敷くようにしてください」(ヒラノマリさん)

ことに羽毛布団は、体温で温められて保温能力が高まる。毛布の上に羽毛布団を掛けて体温を遮断するのはNGだ。手元にもう一枚毛布があるなら羽毛布団の上から重ねる。

「ただし羽毛布団に掛ける毛布は、化繊素材の軽めのタイプにしてください。重すぎる毛布を掛けると空気を含む羽毛の膨らみが潰れてしまうので、暖かさが損なわれる恐れがあるからです」(ヒラノマリさん)

リネン素材|シーツやピローケースはコットン素材が万能。

パジャマと並び、肌に直接触れて眠りを左右するものがある。それがいわゆるリネン。シーツ、ピローケース(枕カバー)、掛け布団カバーなどの総称だ。もっとも汎用性が高く選択肢も多いのは綿素材。吸水性があり、放湿性にも優れる。ちょっと細かい話をすると、同じ綿でも糸の太さによって肌触りは変わる。

「綿では糸の太さを“番手”で表します。番手の数値が大きいものほど糸が細くて肌触りがグッド。40番手が一般的ですが、60番手以上だとソフトでより快適です」(ヒラノマリさん)

リネンで大事にしたいのは、服と同じように季節に応じて“衣替え”をすること。

「綿素材でも、平織りやサテン織りはひんやり感があるので夏向き。冬はより暖かさを感じられるパイル織りやニット織りのリネンにスイッチするといいでしょう」(ヒラノマリさん)

例年酷暑となる夏場は麻もお薦め。綿以上に吸水性が高く、汗をかいてもサラサラ感が長持ちして眠りやすい。

平織り

平織りは縦糸と横糸が均一に表面に出るような織り方。サテン織りは縦糸が表面に出やすく、平織りより凹凸が少ないのが特徴。

パイル織り

パイル織りは、生地表面にループ状態の糸が織り込まれたもの。ニット織りはセーターのように一本の糸が絡み合って生地を作る。

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