桑井太陽さん
教えてくれた人
くわい・たいよう/サンイリオス・インターナショナル代表。神奈川・東戸塚で〈サンイリオス桑井鍼灸治療院〉を開業。アスレティックトレーナー、理学療法士、鍼灸マッサージ師、スポーツ健康科学修士として活動。過去には五輪の水泳日本代表チームに帯同。パリ五輪ではウェイトリフティング日本代表チームに帯同予定。
泳がない日の陸上トレ
アスリートでない限り、毎日プールに通うのは難しい。でも泳がない日が続けば、当然カラダが重くなり泳ぎの感覚も鈍る。そこで取り入れたいのが、泳がない日の陸上トレーニングだ。水泳日本代表チームの指導実績を誇る桑井太陽トレーナーは語る。
「水中での泳ぎの修正はプロでも難しい。陸上で水泳の動作を習得し、それをプールで実践しましょう」
つまり陸上トレは、泳ぎに必要な感覚や実戦で活かせる筋力を鍛える、“泳げるカラダ”づくりに役立つ。
「泳がない日は今回紹介する6種目に励みましょう。泳法問わず、泳ぎに必要なポイントを押さえられる内容です。
泳ぎのパフォーマンスアップに加え、筋力アップによる代謝向上や肩こりなどの不調軽減などにも有効です。プールに行く直前に実践するのも、その後の泳ぎで変化を感じられるためおすすめです」
基礎編
10-5(10回、5回、5回。計2セット)
体幹を保ちながら腕と脚を動かす練習。まず仰向けになり床から頭を浮かせたら、腹筋を使い両膝と両肘を近づけ、腕と脚を伸ばす。これを10回。
続いて右手を首に添え、左肘と左膝を近づける。左の腕と脚を伸ばしつつ、右脚を曲げて上げる。5回繰り返したら反対側も同様に。
ヒップリフト&ストリームライン(10回×2セット)
ストリームラインを保ちつつ臀筋を使う練習。仰向けで両腕を頭上に伸ばして手を重ね、両膝を立てる。お尻に力を入れて肩〜膝が一直線になるまで引き上げ。
床に下りてから、腕を天井に向けて動かす反動を使って、頭〜肩甲下部を床から上げる。一連の動作を反復。
床押し“おにぎり”(10回×2セット)
胸郭と肩甲骨の動きを安定させる働きがある前鋸筋を強化して、泳ぎのストロークをより滑らかに。四つん這いになり爪先を立て、背中を丸めておく。両手は“おにぎり形”につく。
両手の形を保ったまま床をプッシュして膝を伸ばし、お尻を高く引き上げる。元の姿勢に戻り、反復。
アリゲーター(左右各5回)
背骨をしならせつつ股関節や肩甲胸郭関節を動かし、可動域と筋力を養う。右膝を伸ばした四つん這い姿勢から、左足と左手を近づける。背中は自然に丸める。この状態で左脇腹を縮めつつ、左側に重心を置く意識で、肘と膝を曲げてカラダを下げ、上げる。5回行ったら逆側も。
スプリットストローク(左右各10回)
水の中でより遠くの水をかく動作を陸上で練習。膝立ちになり左足を前に出す。左手を前方遠くに伸ばしてから、両腕でクロールの動きを行う。上半身の重心を前足に乗せる感覚を意識しながら、足を出している方の手をより遠くに伸ばし切るイメージを持って反復。逆側も同様に。
Extra|エアスイムonストレッチポール(10回×2〜3セット)
フォームローラーがあったら、こちらも。腕と脚を協調して動かし、バランス感覚を養う。ローラーに首〜腰を預けて仰向けに。両膝は曲げる。右腕を頭上に伸ばしつつ、股関節を曲げて右脚を引き上げる。
続いて右腕と右脚を戻しながら、逆側を同様に上げる。慣れたら、右腕&左脚を上げるなど左右がテレコの動きにも挑戦。
クロール編
クロールのための陸トレがこちら。
「クロールで大事なのはより遠くの水をかくこと。そのために、より長いストロークが取れるような上半身の使い方を習得しましょう」
1本の棒を用意して、いざ実践!
棒状であればOK!用意して泳法別トレにトライ
クロールと平泳ぎの泳法別の陸トレでは、棒を1本用意しよう。突っ張り棒でもゴルフクラブでもなんでもいい。床に垂直に立てた時に肩の高さくらいある長さだと理想。桑井さんが監修した《アシスティック》なら長さ調節可。
クロールエクササイズ1(左右各10回)
クロールのストロークの精度を高めるシャドースイムを立位で実践。左足を1歩前に出し、左足に体重を乗せる。その感覚を意識しつつ、目線をやや下げて、両手を同時に動かしてクロールの腕の動きを行う。足を出している方の手でより遠くの水をかくイメージで。逆側も同様に。
チェックポイント
正面から見た時に頭の位置がブレていないか、入念にチェック。また持っている棒の真ん中がカラダのほぼ中心からズレずに動かせるのが理想。
クロールエクササイズ2(低速と高速、それぞれ左右各10回)
キャッチとリカバリーの両腕を同時に動かすフォームの練習。左足を前に出して体重を乗せる。棒の両端を摑み、目線をやや下げ、両腕を同時に回してクロールの手の動きを行う。最初の10回はゆっくり丁寧に、次の10回はスピードを上げて行う。左右を変えて逆側も同様に。
チェックポイント
正面から見た時に頭の位置がブレず、また手を斜め下に伸ばす形で行えていればOK。慣れるまでは鏡の前で、正しい姿勢になっているかを確認しよう。
平泳ぎ
平泳ぎをスムーズにするには?
「カラダを丸めて伸ばす動きを伴う平泳ぎは、他の泳法に比べて上下動が大きい。また水を蹴るのには股関節の可動域やお尻の柔軟性が重要。それらを養う種目を行いましょう」
ドッグピー(前回しと後ろ回し、各5回×3セット)
平泳ぎのキックと同様の動きを片脚ずつ行い、クオリティを高めるエクササイズ。四つん這いになり左脚を後方に伸ばす。背中をまっすぐに保ったまま、股関節を大きく開いて左膝を左の脇腹に引き寄せるように回し、再び後方に伸ばす。5回行ったら、次は逆回しを5回。逆側も。
ロッドパス(5〜10回)
股関節の屈曲やカラダを“丸めて伸ばす”動きを棒を使って練習。仰向けになり、棒を両手で摑んで頭上で上げ、床から頭を浮かせる。両脚は曲げ、足を床から浮かせる。股関節を曲げてカラダを丸め、両脚を棒にくぐらせる。上体と股関節を軽く伸ばしたら逆の軌道で元の姿勢に。
腰痛改善のエクササイズ
水泳に熱中する人ほど用心したいのが腰痛などの腰の不調。
「反り腰などの不良姿勢をケアせず泳いだり、力ずくでキックをすると腰に大きな負担がかかります。なのでプールで泳ぐのと並行して、自分の姿勢を定期的に点検。NGであれば腰をニュートラルな状態に整える下のエクササイズを行いましょう」
週1程度で行いたい姿勢チェック
椅子に浅めに座り、腰〜頭にまっすぐ棒を当てる。
「仙骨・肩甲間部・後頭部の3点に棒がついてますか? 腰〜肩甲下部に隙間ができれば反り腰傾向。腰につかない人は腰を丸めがちで、水泳による腰痛のリスクが高いです」
前屈(バック3・10回×2セット)
姿勢チェックと同様に、椅子に腰かけて仙骨、肩甲間部、後頭部の3点に棒が当たる姿勢をつくる。この3点から常に棒が離れないよう意識しつつ、股関節から折り畳むように上体を倒す。元の姿勢に戻り、反復。
ラテラル(5往復)
椅子に座り、棒の両端を摑んで肩に乗せる。棒を床と平行に保ちつつ、みぞおちを股関節の上に乗せにいくイメージで上半身を左右交互、均等な幅にスライド。頭の位置が下がらないよう、棒は常に床と平行を意識。
ツイスト(5往復)
前後左右の動きを行った後は、複合的なエクササイズを。棒を肩に乗せたままラテラルの動きで上半身を真横にスライドし、床と棒の平行を保ったまま股関節からカラダを捻る。元の姿勢に戻り、逆側も同様に。