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スタミナって結局、何? 疲れやすさを感じたら知っておきたいこと

スタミナ

持てるパフォーマンスを120%発揮したいなら、年とともに落ちるスタミナを効率的にチャージする必要がある。まずはスタミナの本質を理解すべきだが、よく見聞きするわりにその正体をきちんと把握している人はほとんどいない。そこで今回は3つの視点から『Tarzan』がスタミナを独自に再定義。3つの“チカラ”を身につけ、毎日を快適に!

教えてくれた人

久世浩司さん

くぜ・こうじ/ポジティブサイコロジースクール代表、認定レジリエンスマスタートレーナー。企業、自治体などで広く研修・講演を行う。『「レジリエンス」の鍛え方』など著書多数。

友金明香さん

ともかね・さやか/大阪体育大学スポーツ科学部准教授。専門分野は健康づくり、体力学。大学の陸上競技部中長距離コーチも務める。スロージョギング®アドバイザー。

梶本修身さん

かじもと・おさみ/東京疲労・睡眠クリニック院長、医師・医学博士。疲労研究の第一人者としてエビデンスに基づいた情報発信を行う。大阪大学大学院医学研究科修了。

こんな自覚があったら、スタミナが落ちているかも ?
  • 5年前と比べて無理が利かなくなった。
  • この時季になると毎年夏バテしている。
  • 朝起きたとき、前日の疲れを持ち越している。
  • 嫌なことがあるとなかなか忘れられない。
  • 階段よりも迷わずエスカレーターを選ぶ。
  • 20代と比べて10㎏以上太った。
  • 疲れたらジムかサウナで気分転換するのが習慣。
  • 駅まで急ぎ足になると息がすぐに上がる。
  • お酒がないと眠れない。
  • 一日の大半はじっと坐っている。
  • 休日のたびに泥のように眠っている。
  • 自分には頼れる人が誰もいないと思う。

スタミナ再定義① 疲れないチカラ

スタミナと疲労の関係とは?

とくに鍛えていなくても、朝から夜までパフォーマンスを落とさず、仕事も家事もバリバリこなせるタフなタイプもいる。

彼らがいつも元気いっぱいに振る舞えている秘密は、一体どこにあるのだろうか。

「大きなポイントは、疲れにくいという点でしょう。疲労の定義は精神的・肉体的なパフォーマンスの一時的な低下ですから、疲れにくい=一定のパフォーマンスが維持できている、つまりスタミナがあるといえるのです」(東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身院長)

そもそも疲労は、発熱、痛みと並ぶ人体の3大アラームの一つ

器官を構成する細胞を酷使することにより酸化ストレスにさらされると、タンパク質の正常な生成が邪魔されるため、心身の働きが落ちる。これが疲労。同時に炎症性サイトカインというシグナルが生じ、脳で疲労感をもたらす。

発熱や痛みがあれば仕事を休む立派な理由になり得るが、疲れを感じているときも本来仕事は堂々と休むべき。そこで無理をしても、スタミナ切れで仕事の能率は上がらない。疲れを放置すると、心身の思わぬトラブルに発展する恐れもある。

ではいちばん疲れるのはどこか。

「日常生活で我々が感じる疲労感の多くは、筋肉などフィジカル面に起因するものではない。その証拠に長時間にわたるフライトで、機内でじっと坐っているだけでもぐったり疲れます。もっとも疲れやすいのは脳、なかでも自律神経なのです」

自律神経のパワーが落ちると疲れやすくなる

いちばん疲れている自律神経とは何なのか。まずはおさらいから。

自律神経とは、呼吸や血液循環、消化吸収、体温維持といった、生きていくために不可欠な機能を無意識のうちに調整するシステム。活動的に整えてくれる交感神経と、休息モードへ誘ってくれる副交感神経という2系統からなる。

一日の消費エネルギーの6〜7割を占めるのは基礎代謝。じっとしているときも、生命を保つために使われるエネルギー代謝だ。この基礎代謝に深く関わるのが自律神経。自律神経に疲労が溜まると全身の機能が乱れに乱れ、炎症性サイトカインが大量に作られて疲労感は強まる

ところが困ったことに、この自律神経のトータルパワーは20歳以降、加齢に従って下がる傾向がある。自律神経のパワーは、ピークを迎える20歳前後と比べて40代で2分の1、50代で3分の1、60代で4分の1までダウン。疲れやすくなる。

スタミナのレベル低下と、自律神経パワーの右肩下がりの曲線は、ほぼほぼシンクロしていると私は思っています。一般的に若い人ほどスタミナがあるのは、自律神経のトータルパワーが高いからなのです」

野生動物では、自律神経パワーが半分になった段階で餌が獲れなくなったり、天敵に襲われたりして命を落とすとか。自律神経パワーが落ちてもヒトが長生きできるのは、現代の衛生的かつ快適な環境と発達した医療により、自律神経の落ち込みをカバーできているからだ。

加齢による自律神経の衰え

グラフ 加齢による自律神経の衰え

交感神経と副交感神経を合わせた自律神経のトータルパワーは20歳前後がピーク。そこを100として加齢でどの程度トータルパワーが落ちるかを示した。自律神経がパワーダウンするほど疲れやすくスタミナが落ちる。

出典/梶本修身先生への取材に基づく

良い眠りが疲れないチカラを養ってくれる

加齢で低下する自律神経のパワーを補い、スタミナを蘇らせるセルフリカバリー術の柱は2つある。

1つ目は、自律神経に無駄な疲労を溜めないこと

体温や脈拍、呼吸などの急激な変化を伴う活動は、自律神経の負担となる。炎天下での活動、寒暖差による血圧変動などのヒートショック、息が切れる激しい運動は、できるだけ控えるべき。

暴飲暴食も内臓の負荷となり、そのツケは最終的に自律神経へ回る。ちなみに夏バテは、高温多湿の過酷な環境に必死で適応しようとして自律神経が疲れ果てた状態。エアコンを適切に使おう。

もう1つの柱は、疲れた自律神経をしっかり回復させること

生きている以上、日中の活発な活動で疲れるのは仕方ない。大切なのはそこからの確実なリカバリーだ。

そこで大事な役割を果たしているのがほかならぬ睡眠

脳にある自律神経の中枢には、昼間の活動により老廃物や酸化ストレスにさらされた細胞が溜まる

深い睡眠中にこれらの老廃物を処理したり、還元する反応が進みます。疲れてもぐっすり眠ると翌朝にはリフレッシュできるのは、こうしたメカニズムが働くからです」

睡眠が不足したり、飲酒などで睡眠の質が下がって深い睡眠(ノンレム睡眠のステージ3:詳しくはこちらの記事:“質の高い睡眠”ってどういうこと?:睡眠の科学① 理論編)が取れなかったりすると、前日の疲労を完全にリセットできない。それが続くと自律神経が疲弊し、パフォーマンスがどんどん下がってしまうのだ。

スタミナ再定義② ラクに動けるチカラ

スタミナを左右するグローバルとローカルの要素

駅で階段に怯み、エスカレーターの列に並ぶ人はスタミナが心配。

「階段を上るのは、安静時の6倍前後の運動強度(6メッツ)。スタミナの基準値は性別・年代で異なり、6メッツの運動を3分間継続できて基準値が満たせるのは70歳代女性のみ。40歳代男性の場合、基準値は10メッツの運動あるいは生活活動を3分間継続できることです」(大阪体育大学の友金明香准教授)

運動には筋トレのように瞬発的なものと、ジョギングのように持久的なものがある。このうちスタミナが要求されるのは持久的なもの。運動界ではスタミナを「全身持久力」と呼び、グローバル面ローカル面という2つの要素から分析する。

グローバルな要素は、筋肉が求める酸素と栄養素を血液で円滑に供給する力。酸素を取り込む肺の働き、酸素を含む血液を全身に循環させる心臓と血管の作用で決まる。これをまとめて「心肺機能」という。

ローカルな要素は、運ばれた酸素と栄養素を、運動の主役である筋肉がいかに効率的に利用できるか。鍵を握るのはミトコンドリア。細胞1つに数百個から数千個含まれ、酸素を介して運動エネルギーを供給する。

乳酸が溜まる強度でもラクに動けるように整える

スマホで動画を何時間でも見続けられるからといって、スタミナがあるとは言えない。スタミナとはラクなことを延々と続ける力ではなく、階段上りのように少々しんどいことを粘り強く続ける能力を指す。

動いてしんどいと感じるとき、体内では「乳酸」という物質が増え始めている。乳酸は、筋肉などで糖質を代謝してエネルギーを生み出す際に生じる物質である。

筋肉は、速筋線維と遅筋線維というタイプの異なる線維をミックスしたもの。辛くて瞬発的な運動では速筋、ラクで持久的な運動では遅筋が使われやすい。このうち乳酸を盛んに生み出すのは、おもに速筋。速筋から出た乳酸は、隣接する遅筋でエネルギー源として利用される

辛い運動を続けると速筋が作る乳酸が増えすぎて、遅筋での代謝が追いつかなくなる。こうして乳酸が一気に増えるポイントを「乳酸性作業閾値(LT)」と呼ぶ。乳酸自体は疲労物質ではないが、乳酸が溜まりすぎる状況下では疲労が生じやすい。

「LT前後までは疲れずに動き続けられる。LTを高め、しんどいと思わずに動ける強度が上がったら、スタミナが高まったと言えるのです」

運動強度と血中乳酸濃度の関係

グラフ 運動強度と血中乳酸濃度の関係

全身持久力の指標は、体重1kg当たり1分間に摂取できる酸素の最高値である最高酸素摂取量。より厳密に測定される最大酸素摂取量と同様だ。これを強度の物差しにするとその50〜75%前後で血中の乳酸が急に増え始める。これがLTであり、通常は2mmol/L程度だ。

スタミナ再定義③ 立ち直るチカラ

メンタルのスタミナ、レジリエンスとは?

起業家や経営者などのエグゼクティブは、日々のハードワークを精力的にこなすスタミナを備えている。そこには、フィジカル以外にメンタルの要素も関わっていそう

「私が身近で接してきた多くのエグゼクティブは、カラダが多少疲れていても、心はつねに潑剌としている。心の回復力、つまりレジリエンスが高いという特徴があります」(認定レジリエンスマスタートレーナーの久世浩司さん)

カラダが元気でも、心が折れたら何もできない。そこで必要なのがレジリエンス。3つの要素がある。

1つ目は回復力。一旦心が疲れたとしても、そこから速やかに復活して立ち直れるチカラ。狭い意味でのレジリエンスである。

2つ目は緩衝力。ストレスの元となるストレッサーを受けても、衝撃を受け止め、軽くいなせる力だ。

3つ目は適応力。突然の状況変化や突発的なトラブルに遭遇した際、柔軟に対応して自らの目標を鮮やかに成し遂げる能力である。

この3要素を備えていれば、心のスタミナがバージョンアップ。仕事にも家事にもスポーツにも、忍耐強く取り組めるに違いない。

心のダメージから回復するチカラを養う

過剰なストレスに晒されると心が折れて意欲が下がり、何事にも積極的に取り組めなくなる。

それを防ぐにはストレスマネジメント(またはストレスコーピング)が求められるが、レジリエンスを身につけることと、ストレスマネジメントに違いはあるのだろうか。

「ストレスマネジメントとレジリエンスは非常に似た概念ですが、厳密には同じものではありません。現代を生きる限り、ストレスがあるのは仕方ないもの。

ストレスがある前提に立ち、心が傷ついたり、落ち込んだりしたときにどうやって元の状態に立ち戻り、いつもと変わらないパフォーマンスを発揮できるか。その点をより重視しているのが、レジリエンスなのです」

レジリエンスを上げれば、ストレスで膝をついても、カウント8で立ち直れるという自信がつく。

「ストレスでダメージを受けることがあっても何とかなると思えたら、多少リスクのある難しい仕事を任されても、自分ならできるという確信が持てます。ストレスに怯まずに、自己の成長が図れるようなチャレンジが続けられたら、人生はより豊かになります」

初出『Tarzan』No.884・2024年7月18日発売

取材・文/井上健二 イラストレーション/世戸ヒロアキ

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