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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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連載「コンディショニングのひみつ」。第57回は「睡眠の科学① 理論編」。今回から全3回にわたってコンディショニングとしての睡眠を解説していく。本記事では睡眠の“質”について、まずは理論を学ぼう。
何かと忙しい現代人。「睡眠時間が十分に取れない」「朝スッキリ起きられない」と日中の眠気や疲労感に悩まされる人も少なくないだろう。
また最近のスポーツ科学においてはトレーニング後のリカバリー(回復)が重視され、心身の休養に不可欠な睡眠の科学的な知見にますます関心が集まっている。
そこで本連載では、健康の維持にはもちろん、仕事や運動のパフォーマンスを上げるためにも必須といえる「睡眠」をテーマに3回にわたって解説しよう。
まずは「良い睡眠」の定義から。
最適な睡眠時間には個人差があるが、とはいえ一般に理想とされる1日7時間は確保したいところ。慢性的な睡眠不足が続くと、いわゆる“睡眠負債”が蓄積されてカラダや精神面にもさまざまな不調をもたらすことが明らかにされている。
その一方で、近年注目されるのが“睡眠の質”だ。
睡眠の状態は役割の異なる2種類に分けられ、うち一つがカラダを休める眠りとされる「レム睡眠」。まぶたの内側で眼球運動(rapid eye movement:REM)を伴うことから名づけられたものだ。
このとき脳は起きているのに対し、もう一つの「ノンレム睡眠」ではカラダと脳の休息が行われていると考えられ、眠りの深さによって3~4段階に分類されている。
レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルにはパターンがあり、個人差はあるが90分から120分周期で睡眠中に複数回繰り返される。このうち、最も眠りが深い第1、第2サイクルのノンレム睡眠がしっかり取れることで睡眠全体の質が高まるのだ。
睡眠はレム睡眠(=浅い睡眠)とノンレム睡眠(=深い睡眠)のサイクルからなり、第1、第2周期で深いノンレム睡眠が得られることが眠りの質を高めるポイントに。
さて、一般的には“年齢とともに眠りが浅くなる”とされるが、それも一概には言えないのが実際のところ。
これを左右するのが、我々のカラダに存在する“体内時計”のシステム(=サーカディアンリズム)だ。この働きを担うのが、脳の中枢にある視床下部から分泌されるホルモンの数々。決まった時間に特定のホルモンが分泌されることで、心身のあらゆる調整機能を助けている。
こうした体内時計のリズムから見ると、質の良い睡眠に必要な行動は朝、目覚めた瞬間から始まる。要となるのが“午前中に太陽光をしっかり浴びる”こと。
というのも一般に“幸せホルモン”として知られるセロトニンは視床下部にある光受容体の働きにより生成され、体内時計の調節にも不可欠な働きを担うためだ。
また日中に分泌され、睡眠サイクルに欠かせないホルモンがコルチゾールだ。“ストレスホルモン”としての知名度が高いが、実際には日中のアクティブな活動に欠かせないホルモンの一つ。これがしっかり分泌されることで、セロトニンの分泌量も増えると考えられている。
一方で、夜に分泌されて睡眠に深く関わるホルモンがメラトニン。セロトニンから生合成され、睡眠初期の深いノンレム睡眠を実現させるため、セロトニンの量が多いほど眠りの質が高まると考えられるのだ。
朝日を浴びて日中を活動的に過ごすとコルチゾールがしっかり分泌され、体内時計を調節するセロトニン、ひいては睡眠に欠かせないメラトニンの分泌量も増える。
さらにヒトの体内リズムは実際には24時間より30分ほど長く、太陽光を浴びることで24時間にリセットされるというメリットもある。
とかく生活リズムが乱れがちな現代社会だが、まずは朝、きちんと起きてカーテンを開けることから始めてみよう。
答え:セロトニン
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.864・2023年9月7日発売