ストレッチの決定版! 結果を出す120秒ストレッチ【上半身編】

120秒じっくり伸ばして筋肉にも関節にも確実に効かせる「新ストレッチ」。ポイントは、無駄な力は極力使わないこと。「自体重を用い、椅子やクッションなどで姿勢を支えながら行うと、リラックスしてカラダがのんびり伸ばせます」と新ストレッチを監修してくれた川谷響さん。基本ルールを守りながらスマホのストップウォッチをセットして始めよう!今回は上半身編。

取材・文/井上健二 撮影/内田紘倫 スタイリスト/青木穣 ヘア&メイク/渡部翔太 エクササイズ監修/川谷 響(マンマビレッジ代表パーソナルトレーナー)

初出『Tarzan』No.882・2024年6月20日発売

川谷 響さん

川谷 響さん

教えてくれた人

かわたに・ひびき/パーソナルトレーナー。(株)ORIGINESS代表取締役兼マンマビレッジ代表パーソナルトレーナー。筑波大学運動部S&Cコーチとして多くの運動部を指導&サポートする。順天堂大学スポーツ健康科学部卒業、筑波大学大学院修了。

新ストレッチの基本ルール
  1. トータル120秒になるように行う(その間、呼吸を止めない)。
  2. 分割する場合のインターバル(休憩時間)は30秒以内。
  3. 1〜2日おきに週3回以上行う。
  4. 最低1か月続ける。

※重要な筋肉に関しては2ポーズずつ紹介している。好きな方を選んでいいが、60秒ずつ2種目やってもいい。

僧帽筋

この悩みに効く!
  • 首こり
  • 肩こり

現代生活でもっともストレスを抱える筋肉の一つは、間違いなく僧帽筋だろう。

僧帽筋は首すじから両肩にかけて広がり、頭の重みを後ろから支え、腕の付け根となる肩甲骨を自在に動かす。

ところが、デスクワークで前屈みがクセになると、首が曲がり重たい頭が前へ出る。さらに腕を前に出して作業すると、肩甲骨は背骨から離れる外転で固定される。

このダブルパンチで、僧帽筋に負荷が集中。引き伸ばされながら縮むエキセントリック収縮ばかりを強いられるハメになり、首こりや肩こりが発生しやすい。

頭の重みを上手に使い、僧帽筋がスムーズに動けるようにストレッチしてやれば、首こりも肩こりもリセットできるはず。

ベッドで頭だらんのポーズ(左右各120秒×1回)

首こり 肩こり 僧帽筋

ポイント:力を使わず、頭の重みだけでストレッチする。

  1. ベッドで左の脇の下に枕を挟んで左腕で抱え、左側を下にして寝る。
  2. 両膝を曲げて下半身を安定させる。
  3. 右腕は体側に添える。
  4. 完全に脱力して頭を下げ、頭の重みで右側の首すじをストレッチ。
  5. 左右を変えて同様に行う。

床で腕だらんのポーズ(左右各60秒×2回)

床で腕だらんのポーズ

ポイント:頭のてっぺんと肩を遠ざけるように首すじを伸ばす。

  1. 床にあぐらをかいて坐る。
  2. 左腕を伸ばして横に下げ、手のひらを正面に。
  3. 右腕はラクなポジションに置く。
  4. 右膝を見るように頭を斜め下に倒し、肩を下げ、頭の重みで左側の首すじをストレッチ。
  5. 左右を変えて同様に行う。

広背筋

この悩みに効く!
  • 猫背
  • 肩こり

通勤電車で吊り革に摑まるのがしんどく感じるタイプは、たぶん広背筋に問題アリ。広背筋は背中で腰背部から上腕へ広がり、吊り革に摑まるときのように、肩より高く上げた腕を下げるときに働くからだ。

背中の筋肉は意識しにくく、トレーニングもストレッチも疎かになり、弱く硬くなりやすい。広背筋がダメになると、猫背などの不良姿勢や肩こりを招く。まずはストレッチを。

広背筋はロウイングのように腕を前から後ろへ引いたり、ラットプルダウンのように腕を上から下げたりする筋トレで活躍。

「前者の動きを円滑にしてくれるのが“糸通しのポーズ”、後者をスムーズにするのが“斜め土下座のポーズ”です」

糸通しのポーズ(左右各60秒×2回)

糸通しのポーズ

ポイント:肩を床に重く沈み込ませる。

  1. 両手を肩の真下、両膝を股関節の真下にそれぞれついて四つん這いになる。
  2. 左手の甲を床で滑らせながら、胸を捻って左腕を右の脇の下に差し入れ、左肩と左側頭部を床につける。
  3. 右手を右肩の延長線上に伸ばし、左側の背中をストレッチ。
  4. 左右を変えて同様に行う。

斜め土下座のポーズ(左右各60秒×2回)

斜め土下座のポーズ

ポイント:両手をできるだけ遠くへ伸ばす。

  1. 両手を肩の真下、両膝を股関節の真下にそれぞれついて四つん這いになる。
  2. 両手を前へスライドさせながら、お尻を軽く後ろに引く。
  3. 右手の甲の上に、左手の手のひらを重ねる。
  4. 左側の肩を床につけ、左側の背中をストレッチする。
  5. 左右を変えて同様に行う。

上腕三頭筋

この悩みに効く!
  • 腕のたるみ

上腕後ろ側にある上腕三頭筋は、肘を伸ばす筋肉だ。上腕前側の上腕二頭筋の陰に隠れがちだが、筋肉のボリューム自体は実は三頭筋の方が大きい。

でも、おなじみのパソコン仕事やスマホ操作は、肘を曲げて行う機会が圧倒的に多く、せっかくの三頭筋は宝の持ち腐れ状態。使わないから弱く硬くなる。

加えて体脂肪は動かさないパーツにつきやすい性質があり、上腕後ろ側に“振り袖”のように贅肉が集まりやすい。ストレッチで三頭筋の動きをよくして形を整えると、それだけで振り袖のような贅肉は目立ちにくくなる。

肘掛け胸反らしのポーズ(左右各30秒×4回)

肘掛け胸反らしのポーズ(左右各30秒×4回)

ポイント:みぞおちが床へ引っ張られるイメージで。

  1. 両手を肩の真下、両膝を股関節の真下にそれぞれついて四つん這いに。
  2. 左腕を曲げ、左肘を椅子の座面に乗せる。
  3. お尻を軽く引きながら、左肩を床に近づけるように左側の上腕後ろ側をストレッチ。
  4. 左右を変えて同様に行う。

手根屈筋・伸筋群

この悩みに効く!
  • 腱鞘炎
  • 肩こり

指先でパソコンやスマホを操るのが日常になり、悲鳴を上げているのが、手の指を動かす筋肉。多くは前腕にある。手の甲側にあるのが手根伸筋群、手のひら側が手根屈筋群だ。

とくに使いすぎて硬くなりやすいのは、手根伸筋群。手の甲を反らす働きがあり、キーボードのタイピングやタッチパネルの操作でつねに酷使される。

「使いすぎは腱鞘炎の誘因。筋膜を介してつながる肩の痛みに波及することも考えられます」

表裏のバランスを取るため、手根屈筋群も一緒にストレッチでしっかりいたわろう。

床でしばし休憩のポーズ(左右各60秒×2回)

床でしばし休憩のポーズ

ポイント:真上から手首に軽く体重をかける。

  1. 床にあぐらをかいて坐り、左膝を立てる。
  2. 左腕を左膝に乗せ、上体を右側に少し傾け、右手を右肩の真下につく。
  3. 目線は斜め左前方へ向ける。
  4. 床についた手の指先を後ろに向け、前腕内側をストレッチ。
  5. 続いて手の甲を床につけて指先を後ろに向け、前腕外側をストレッチ。
  6. 左右を変えて同様に行う。

大胸筋

この悩みに効く!
  • 猫背
  • 肩こり
  • 首こり
  • パフォーマンスUP

大胸筋は胸の谷間から両腕に向かって扇状に広がる。上半身を逞しくしたい、胸板を厚くしたいといった願いを持つ人が、ベンチプレスなどで真っ先に鍛える筋肉だ。

一方、トレーニー以外の普通の人が日常的に使う筋肉ではないので、放っておくと大胸筋は弱く硬くなりやすい。

「大胸筋が硬くなると両肩が前に引っ張られて猫背となり、肩こりや首こりに。ストレッチで大胸筋が緩むと、前に出やすい肩がスッと後ろに引けて凝りが軽くなり、背骨のS字カーブも正しいラインになります」

上半身を鍛えたい人たちにとっても、大胸筋が柔軟になると肩関節の可動域が広がるため、ベンチプレスなど上半身の筋トレの効率が上がってくる。

椅子で胸を開くポーズ(左右各60秒×2回)

椅子で胸を開くポーズ

ポイント:肩を床に近づけるように胸を伸ばしていく。

  1. 両膝を床について坐り、右側にスツールを置く。
  2. 右肘を曲げて右手を後頭部に添える。
  3. 股関節から上体を前傾させ、左肘を床について前腕を床につけ、右肘をスツールの座面に乗せる。顔を左真横に向けて、右側の胸をストレッチする。
  4. 左右を変えて同様に行う。

壁際で胸を開くポーズ(左右各60秒×2回)

壁際で胸を開くポーズ

ポイント:野球のピッチャーのように胸を大きく開く。

  1. 壁際から半歩離れてカラダを左に向けて立ち、右肘を肩の高さに上げ、右手を頭の高さで壁につける。
  2. 両足を腰幅に開いて下半身を動かさないように安定。
  3. 左腕は肩の真下に下げる。
  4. 真後ろを見るように上体を左側へ捻り、右側の胸をストレッチ。
  5. 左右を変えて同様に行う。

胸鎖乳突筋

この悩みに効く!
  • ストレートネック
  • 首こり
  • 肩こり

四六時中スマホが手放せないタイプが、確実に硬くなるのが胸鎖乳突筋。首の前を走る太い筋肉で首を曲げる働きがある。

スマホを見るときは、首を曲げて覗き込むことが多い。このため胸鎖乳突筋は固まりやすい。

すると元来緩やかに前方へカーブする頸椎がまっすぐに近づくストレートネック(スマホ首)に。

加えてストレスや緊張で呼吸が浅くなると、胸郭を動かす呼吸補助筋として胸鎖乳突筋を酷使するので、使いすぎで硬くなる。スマホ首も浅い呼吸も首こり、肩こりを招く。120秒ストレッチで防ごう。

上向きで頭だらんのポーズ(左右各60秒×2回)

上向きで頭だらんのポーズ

ポイント:首すじに筋肉が浮き出るように。

  1. 右側を下にして横向きに寝て、右の脇の下にクッションを入れて両腕で抱える。
  2. 両膝を曲げて重ね、下半身を安定。
  3. 顔を天井へ向け、肩と首の力を抜いて頭の重みで左側の首すじをストレッチ。
  4. 左右を変えて同様に行う。

脊柱起立筋

この悩みに効く!
  • 肩こり
  • 腰痛

全身の大黒柱である背骨の後ろを走るのが、脊柱起立筋。

背骨は真横から見ると緩やかなS字カーブを描いており、姿勢を維持して運動の衝撃を吸収している。そのS字カーブを正しく保つうえで欠かせないのが、脊柱起立筋の柔軟性。

起立筋が硬いと背骨のカーブが乱れて、肩こりや腰痛をはじめとする全身の不定愁訴が表れてくる。

「お腹が前にせり出た中年太りだと、背骨全体が弓形に反りやすい。あるいは猫背や反り腰があると、上下から潰されたようにS字カーブの彎曲が強くなりすぎて、不自然な“スーパーS字”を描きやすくなります」

ストレッチで起立筋に柔軟性を取り戻し、本来のナチュラルなS字カーブをキープしよう。

ダンゴムシのポーズ(60秒×2回)

ダンゴムシのポーズ

ポイント:ダンゴムシのように背中を丸める

  1. 床に坐り、両脚を腰幅で前に伸ばして膝を軽く曲げる。
  2. 上体を前傾させて両脚の間に両腕を伸ばし、内側から土踏まずを摑む。
  3. 両手でロックしたまま、頭を下げて、みぞおちを引き込むように背中を丸めて腰背部をストレッチする。

三日月のポーズ(30秒×4回)

三日月のポーズ

ポイント:両足で壁を押し、両脚をしっかり伸ばす。

  1. 壁際から半歩離れ、頭を壁に向けて仰向けになる。
  2. 両脚を揃えてまっすぐ伸ばし、でんぐり返しをするように両足の裏を壁につける。
  3. 両手で腰を支え、背中を丸めて腰背部をストレッチする。

腹直筋

この悩みに効く!
  • 猫背
  • 肩こり
  • 腰痛

脊柱起立筋の反対側にあるお腹の腹筋群の代表が腹直筋。肋骨と骨盤の底をつなぎ、鍛えると6つほどに割れるのが特徴。

「ただ、割れた6パックを手に入れたいと腹筋トレばかりやりすぎると、背中も腰も丸まりやすくなる。腹直筋には背骨を曲げる働きがあるからです」

背骨が曲がっていると猫背は修正できないし、肩こりや腰痛も長引く。腹筋トレをするなら、腹直筋のストレッチも忘れずやっておくべき。腹直筋の柔軟性がアップしてくると、背骨のS字カーブが整い、理想の姿勢がラクに取りやすくなる。

両腕でバンザイのポーズ(120秒×1回)

両腕でバンザイのポーズ

ポイント:両手両足をできるだけ遠ざける。

  1. 床で仰向けになり、腰のアーチに厚めのクッションを当てる。
  2. 両腕、両脚をまっすぐ伸ばして、両手は手のひらを上に向けて重ねる。
  3. 全身を脱力させてお腹をストレッチする。

外・内腹斜筋

この悩みに効く!
  • くびれ
  • 腰痛

脇腹はキュッと絞り、ウェストのくびれをアピールしたいもの。

ところが、運動不足で体幹から力が抜けて、猫背で腰が丸まっていると、体幹が上下から押し潰されて蛇腹を縮めたような状態になる。

それだと腰の負担が増えて腰痛になりやすいし、いくら脇腹を絞るトレーニングに努めたとしても、くびれもメリハリも演出できない。

脇腹にくびれを作るのは、腹筋群の中でも外腹斜筋と内腹斜筋。固まった両者をストレッチで緩めると体幹の蛇腹が伸ばしやすくなり、腰痛が治まり、ウェストも絞りやすい。

横向きでバンザイのポーズ(左右各120秒×1回)

横向きでバンザイのポーズ

横向きでバンザイのポーズ

  1. 右側を下にして横向きに寝て、腰のくびれにクッションを当てる(左側の脇腹が十分伸びるようにクッションの位置を調整)。
  2. 右腕を前に伸ばし、右膝を曲げて姿勢を安定。
  3. 左腕と左脚をまっすぐ伸ばし、さらに左側の脇腹をストレッチ。
  4. 左右を変えて同様に行う。