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フィットネスの習慣化を助ける新感覚ライト《ライフコンディショニングシリーズ》を体験
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120秒じっくり伸ばして筋肉にも関節にも確実に効かせる「新ストレッチ」。ポイントは、無駄な力は極力使わないこと。「自体重を用い、椅子やクッションなどで姿勢を支えながら行うと、リラックスしてカラダがのんびり伸ばせます」と新ストレッチを監修してくれた川谷響さん。基本ルールを守りながらスマホのストップウォッチをセットして始めよう!今回は上半身編。
川谷 響さん
かわたに・ひびき/パーソナルトレーナー。(株)ORIGINESS代表取締役兼マンマビレッジ代表パーソナルトレーナー。筑波大学運動部S&Cコーチとして多くの運動部を指導&サポートする。順天堂大学スポーツ健康科学部卒業、筑波大学大学院修了。
※重要な筋肉に関しては2ポーズずつ紹介している。好きな方を選んでいいが、60秒ずつ2種目やってもいい。
現代生活でもっともストレスを抱える筋肉の一つは、間違いなく僧帽筋だろう。
僧帽筋は首すじから両肩にかけて広がり、頭の重みを後ろから支え、腕の付け根となる肩甲骨を自在に動かす。
ところが、デスクワークで前屈みがクセになると、首が曲がり重たい頭が前へ出る。さらに腕を前に出して作業すると、肩甲骨は背骨から離れる外転で固定される。
このダブルパンチで、僧帽筋に負荷が集中。引き伸ばされながら縮むエキセントリック収縮ばかりを強いられるハメになり、首こりや肩こりが発生しやすい。
頭の重みを上手に使い、僧帽筋がスムーズに動けるようにストレッチしてやれば、首こりも肩こりもリセットできるはず。
通勤電車で吊り革に摑まるのがしんどく感じるタイプは、たぶん広背筋に問題アリ。広背筋は背中で腰背部から上腕へ広がり、吊り革に摑まるときのように、肩より高く上げた腕を下げるときに働くからだ。
背中の筋肉は意識しにくく、トレーニングもストレッチも疎かになり、弱く硬くなりやすい。広背筋がダメになると、猫背などの不良姿勢や肩こりを招く。まずはストレッチを。
広背筋はロウイングのように腕を前から後ろへ引いたり、ラットプルダウンのように腕を上から下げたりする筋トレで活躍。
「前者の動きを円滑にしてくれるのが“糸通しのポーズ”、後者をスムーズにするのが“斜め土下座のポーズ”です」
上腕後ろ側にある上腕三頭筋は、肘を伸ばす筋肉だ。上腕前側の上腕二頭筋の陰に隠れがちだが、筋肉のボリューム自体は実は三頭筋の方が大きい。
でも、おなじみのパソコン仕事やスマホ操作は、肘を曲げて行う機会が圧倒的に多く、せっかくの三頭筋は宝の持ち腐れ状態。使わないから弱く硬くなる。
加えて体脂肪は動かさないパーツにつきやすい性質があり、上腕後ろ側に“振り袖”のように贅肉が集まりやすい。ストレッチで三頭筋の動きをよくして形を整えると、それだけで振り袖のような贅肉は目立ちにくくなる。
指先でパソコンやスマホを操るのが日常になり、悲鳴を上げているのが、手の指を動かす筋肉。多くは前腕にある。手の甲側にあるのが手根伸筋群、手のひら側が手根屈筋群だ。
とくに使いすぎて硬くなりやすいのは、手根伸筋群。手の甲を反らす働きがあり、キーボードのタイピングやタッチパネルの操作でつねに酷使される。
「使いすぎは腱鞘炎の誘因。筋膜を介してつながる肩の痛みに波及することも考えられます」
表裏のバランスを取るため、手根屈筋群も一緒にストレッチでしっかりいたわろう。
大胸筋は胸の谷間から両腕に向かって扇状に広がる。上半身を逞しくしたい、胸板を厚くしたいといった願いを持つ人が、ベンチプレスなどで真っ先に鍛える筋肉だ。
一方、トレーニー以外の普通の人が日常的に使う筋肉ではないので、放っておくと大胸筋は弱く硬くなりやすい。
「大胸筋が硬くなると両肩が前に引っ張られて猫背となり、肩こりや首こりに。ストレッチで大胸筋が緩むと、前に出やすい肩がスッと後ろに引けて凝りが軽くなり、背骨のS字カーブも正しいラインになります」
上半身を鍛えたい人たちにとっても、大胸筋が柔軟になると肩関節の可動域が広がるため、ベンチプレスなど上半身の筋トレの効率が上がってくる。
四六時中スマホが手放せないタイプが、確実に硬くなるのが胸鎖乳突筋。首の前を走る太い筋肉で首を曲げる働きがある。
スマホを見るときは、首を曲げて覗き込むことが多い。このため胸鎖乳突筋は固まりやすい。
すると元来緩やかに前方へカーブする頸椎がまっすぐに近づくストレートネック(スマホ首)に。
加えてストレスや緊張で呼吸が浅くなると、胸郭を動かす呼吸補助筋として胸鎖乳突筋を酷使するので、使いすぎで硬くなる。スマホ首も浅い呼吸も首こり、肩こりを招く。120秒ストレッチで防ごう。
全身の大黒柱である背骨の後ろを走るのが、脊柱起立筋。
背骨は真横から見ると緩やかなS字カーブを描いており、姿勢を維持して運動の衝撃を吸収している。そのS字カーブを正しく保つうえで欠かせないのが、脊柱起立筋の柔軟性。
起立筋が硬いと背骨のカーブが乱れて、肩こりや腰痛をはじめとする全身の不定愁訴が表れてくる。
「お腹が前にせり出た中年太りだと、背骨全体が弓形に反りやすい。あるいは猫背や反り腰があると、上下から潰されたようにS字カーブの彎曲が強くなりすぎて、不自然な“スーパーS字”を描きやすくなります」
ストレッチで起立筋に柔軟性を取り戻し、本来のナチュラルなS字カーブをキープしよう。
脊柱起立筋の反対側にあるお腹の腹筋群の代表が腹直筋。肋骨と骨盤の底をつなぎ、鍛えると6つほどに割れるのが特徴。
「ただ、割れた6パックを手に入れたいと腹筋トレばかりやりすぎると、背中も腰も丸まりやすくなる。腹直筋には背骨を曲げる働きがあるからです」
背骨が曲がっていると猫背は修正できないし、肩こりや腰痛も長引く。腹筋トレをするなら、腹直筋のストレッチも忘れずやっておくべき。腹直筋の柔軟性がアップしてくると、背骨のS字カーブが整い、理想の姿勢がラクに取りやすくなる。
脇腹はキュッと絞り、ウェストのくびれをアピールしたいもの。
ところが、運動不足で体幹から力が抜けて、猫背で腰が丸まっていると、体幹が上下から押し潰されて蛇腹を縮めたような状態になる。
それだと腰の負担が増えて腰痛になりやすいし、いくら脇腹を絞るトレーニングに努めたとしても、くびれもメリハリも演出できない。
脇腹にくびれを作るのは、腹筋群の中でも外腹斜筋と内腹斜筋。固まった両者をストレッチで緩めると体幹の蛇腹が伸ばしやすくなり、腰痛が治まり、ウェストも絞りやすい。
取材・文/井上健二 撮影/内田紘倫 スタイリスト/青木穣 ヘア&メイク/渡部翔太 エクササイズ監修/川谷 響(マンマビレッジ代表パーソナルトレーナー)
初出『Tarzan』No.882・2024年6月20日発売