動物性食品の過剰摂取に要注意。腎臓の老化を抑える食習慣
自炊をほとんどしない、コンビニ食やファストフードをしょっちゅう口にする、試しに計算サイトで腎機能を測定してみたら、「軽度低下」という結果に。そんな人は即、慢性腎臓病(CKD)予防に有効な食生活導入を。腎臓老化を防ぐヒントがここにある。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/世戸ヒロアキ 取材協力/高取優二(埼友草加病院外来医長、日本腎臓学会専門医・指導医)
初出『Tarzan』No.880・2024年5月23日発売
目次
外食・中食を必要最低限にする
「現代人にとってリンが不足するということはまずありません。とくに40代の男性であれば不足より断然過剰摂取が問題です」
過剰摂取の原因は加工食品の常食。リンの中には有機リンと無機リンの2種類があり、前者は肉や魚などの生鮮食品、後者はハムやベーコン、インスタント食品、ファストフードなどに多く含まれる。
で、腸管からの吸収率は有機リンが10〜40%、無機リンが約90%。無機リンの方が圧倒的に吸収されやすいためリンの過剰摂取に繫がりやすい。
腎臓は過剰なリンの排出に追われるが、ただでさえ加齢でネフロンが減っているので負荷が大きすぎ、ますます機能低下が進む。老化も進む。外食やスーパー、コンビニの中食はたまの機会としよう。
アルカリ性食品を常備する
細胞の組織液や血液のpHは、ナトリウムやカリウムなどの電解質の割合で変化する。そして、pHが弱アルカリ性の状態だと細胞は正常に働く。
「体液のpH維持も腎臓の働きのひとつです。体液が酸性に傾いているときは尿細管で電解質の量が調節され、pHバランスが保たれています。ところが腎臓の機能が低下すると調節機能も衰えて体液が酸性に傾き、それ自体カラダを老化させる原因になります」
酸性食品の代表格は肉、魚、卵、穀類など。カラダに必須のタンパク質源と炭水化物だ。ならば、梅干しや海藻などのアルカリ性食品を積極的に摂取しpHの維持に繫げるべし。
ニンニク、瓜科食品も積極的に
スイカやメロンなど瓜科の植物に含瓜まれているシトルリンというアミノ酸はタンパク質の構成成分にはならず体内に留まる特性を持つ。
で、何をしているかというと、肝臓でアンモニアの解毒に関わったり、または腎臓でアルギニンに変換されて再びシトルリンが合成されるときに一酸化窒素(NO)を作り出す。
NOは血管拡張作用があることが知られているので、ネフロンの動脈硬化の抑制効果も期待できる。さらに利尿作用によって腎臓の働きをサポートしてくれる。
この夏はスイカ、シトルリンとセットで働くアルギニンの補給源のニンニクで腎臓を労わろう。
乳製品はたまに口にする程度に
牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品にはリンが豊富に含まれている。外食では知らないうちに乳製品の入った食品を口にしていることも少なくない。そのうえ、カラダにいいからと毎日牛乳を飲んでいる、という人は要注意。理由はむろんリンの過剰摂取。
「育ち盛りで骨が成長する子どもはともかく、大人になって乳製品を毎日のように摂る必要はないと思います。40歳以降で骨のために何かを飲むとしたら、骨の材料のタンパク質源でリンも吸収されにくい豆乳をおすすめします」
カルシウムはヒジキなどの海藻でカバー。
タンパク質は動物性より植物性
タンパク質食品に漏れなくついてくるのがリン。よって吸収のよすぎる無機リンよりも有機リンを選ぶことが鉄則。
「無機リンをできるだけ控えるだけでも効果はありますが、有機リンの中にも動物性と植物性があって、植物性の方がさらにリンの吸収率が低いということも覚えておいてください。
動物性のリンの吸収率が30〜40%としたら植物性のそれは10〜20%です」
1日三食、毎日のおかずをすべて肉や魚の動物性食品で補うのではなく、選択肢がある場合は大豆製品などで補ってみる。たとえば朝は豆腐の味噌汁と納豆でスタートする、なんていう手もありだ。
ナッツ、卵、ホウレンソウをこまめに摂る
ミネラルのひとつ、マグネシウムに腎臓を守る働きがあることが、近年の研究で明らかにされつつある。
動物実験では糖尿病のラットにマグネシウムを与えると腎障害が抑制されたという報告があったり、ヒトを対象にした比較研究でも血中のマグネシウム濃度が低いグループはCKDの発症率が高かったという。
「マグネシウムを摂取することによって、リン酸カルシウムからCPP(詳しくはこちらの記事:寿命に影響大!? 知らないとヤバい腎臓のトリセツ)が合成されるのを抑制できると考えられています。私自身もマグネシウムや亜鉛をサプリメントである程度補充しています」
マグネシウム補給にはナッツ、卵、ホウレンソウ!
塩は精製塩ではなく天然塩に
腎臓の機能低下対策といえば、減塩。腎臓は体内の余分な塩分を排泄するので、塩分過多の食事はそれだけ腎臓の負担になるからだ。
現在の日本人の塩分摂取量の目標は男性で7.5g未満、女性で6.5g未満。ところが令和元年の「国民栄養・健康調査」では男女平均の塩分摂取量は10.1gと過剰傾向。
「量を減らすことはもちろんですが、塩の質にこだわることも必要だと思います。精製塩は99%が塩化ナトリウムです。それに対して海水から作ったような天然塩にはナトリウムの他にマグネシウムやカリウム、カルシウムが含まれています。
腎臓の負担になるのは主にナトリウムですが、カリウムが入っていることでナトリウムの塩分負荷を打ち消せますし、他のミネラルの健康効果も期待できます」
今後は天然塩が大人の常識。