筋合成を高める「微量栄養素」に注目。
お腹周りも絞れる“自宅ピラティス”にトライ。
良い悪いってどういうこと?「代謝の正体」を学ぶQ&A。
妊娠中にできる運動は?
筋力アップを狙えるヨガポーズ4選。
「猫背」はストレッチ&筋トレでリセット。
筋トレするなら知っておきたい糖質の話。
突然のギックリ腰。どう対処する?
  • 公開:

腹が凹むとこんなにいいことがいっぱい。日本人が“腹凹”にトライするべき理由

腹 腹筋 割る へこませる

誰もがつねに気になるお腹! 夏を前に「今年こそバキバキに割るぞ!」と拳を高く突き上げるのも結構だが、お腹をいきなり「割る」のではなく、まずはハードルを下げて「凹ます」ことをターゲットに据えることをおすすめしたい。「凹ます」のは「割る」ほど難しくない。それに、見栄えがよくなるほか、病気リスクが下がるなどメリットいっぱい。「腹凹」のご利益を知って、今すぐ生活改善にトライ。

内臓脂肪こそが生活習慣病を引き起こす

腹を凹ますためには、腹を内側から膨らませる内臓脂肪を減らすのが先決詳しくはこちらの記事:割るより簡単! 腹を凹ませるために必要なこと)。

すると、お腹まわりがスッキリするばかりか、病気に罹りにくい体質に整えられる。なぜなら、内臓脂肪こそ、働き盛り世代を悩ます生活習慣病の総元締めだからだ。

体脂肪を溜めるのは、脂肪細胞という専門の細胞。脂肪細胞は長らく体脂肪を溜める単なる倉庫のようなものだと軽視されてきたが、その後密かな役割が明らかになった。なんと、脂肪細胞はホルモンに似た物質を分泌していたのだ。その脂肪細胞が分泌するホルモン様の物質を「アディポサイトカイン」と呼ぶ。

腸内細菌と同様に、アディポサイトカインにも、善玉と悪玉がいる。善玉の代表格は「アディポネクチン」。カラダを蝕む酸化を防ぐ抗酸化作用に優れている

悪玉は多士済々。たとえば、「アンジオテンシノーゲン」は血圧を上げるし、「TNF-α」は血糖値を下げるインスリンの効き目を落として糖尿病の引き金となる。この他、「PAI-1(パイワン)」は、血管内で血栓という血の塊を作りやすくし、血管が詰まって起こる心臓病や脳卒中のリスクを高める

内臓脂肪が溜まると、善玉が減り、これらの悪玉が増えることがわかっている。健康寿命を少しでも延ばしたいなら、内臓脂肪を落としてお腹を凹ますことが最優先課題だ。

内臓脂肪が溜まっている人は危険な脂肪肝でもある

体脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪以外にも、“第3の脂肪”がある。それが「異所性脂肪」。“異所”、つまり本来なら溜まらない場所に溜まっている脂肪という意味。その代表格が「脂肪肝」だ。

脂肪肝とは、肝臓の内部に脂肪が溜まりすぎた状態。健康な肝臓に脂肪はほとんどないが、肝臓の重さの5%以上脂肪が溜まっているのが、脂肪肝。

腹部超音波検査で指摘されることもあるが、健康診断の血液検査で必ず測る「ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)」という肝臓の酵素の値でも脂肪肝の有無はわかる。

ALT30超だと脂肪肝の疑いが濃厚であり、成人の15%が相当するとされています。個人的にはALTは5〜16が理想だと考えています」

多くの人では、脂肪肝は内臓脂肪より先につきやすい。お腹が出るほど内臓脂肪が溜まっているタイプは、脂肪肝を覚悟した方がいい。脂肪肝があると、筋肉(骨格筋)に血糖を取り込むインスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすい(下グラフ参照)。

脂肪肝と内臓脂肪がインスリンの効き目を悪くする
腹 腹筋 へこませる 脂肪肝と内臓脂肪がインスリンの効き目を悪くする グラフ

出典/順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学、2019

筋肉(骨格筋)におけるインスリンの効き目(インスリン感受性)を比較したもの。内臓脂肪だけが単独で蓄積するケースでは大きな低下は見受けられないけれど、脂肪肝が蓄積すると有意に効き目が下がってくる

すると質を量でカバーしようと、インスリンの分泌量が増えてくる。インスリンは血糖を体脂肪に合成する働きがあるため、さらなる脂肪肝や内臓脂肪の蓄積を促しやすい。内臓脂肪+脂肪肝のダブルパンチは万病の元。邪魔な内臓脂肪と脂肪肝は即刻体外へ追い出そう。

腹 腹筋 割る

高血圧や糖尿病などの生活習慣病、そこから生じる心臓病や脳卒中などの上流には血糖値の上昇や血液・血管の異常があり、その上流に内臓脂肪蓄積や脂肪肝がある。腹を凹ませて内臓脂肪と脂肪肝を解消することが重要だ。 原図提供/栗原毅

日本人はお腹が少し出ているだけで病気に罹りやすい

そもそも肥満とは、体内に無駄な体脂肪が溜まりすぎた状態。ただ、体脂肪の蓄積度合いを正しく測るのは難しい。体組成計もかなり進化しているけれど、基本的には電気抵抗から推定しているため、必ずしも正確な値がわかるとは限らないのだ。

そこで肥満の国際的な指針となっているのはBMI(体格指数)。体重(kg)をメートル換算した身長(m)の2乗で割ったものだ。BMIと体脂肪率には相関性が高いため、肥満かどうかの目安となっている。

実は、BMIによる肥満の基準には、国内外で違いがある。日本では、BMI25以上が肥満。成人男性の3人に1人、成人女性の4人に1人が肥満となっている。ところが、日本以外の欧米諸国ではBMI30以上を肥満としている。仮に身長170cmだとすると、日本だと73kgを超えると肥満判定されてしまうが、国際基準では86kgまでなら肥満とは見做されないのである。

なぜ日本の基準は厳しいのか

これまで見てきたように、太って内臓脂肪や脂肪肝が溜まると、生活習慣病に陥りやすい。でも、日本人を含めたアジア人は、さほど太っていない段階から内臓脂肪や脂肪肝が溜まり、生活習慣病リスクが上がる。たとえば、欧米では糖尿病は太った人が罹る病気だが、日本の糖尿病患者の平均BMIは23で肥満の基準を下回る。日本人には、お腹を1ミリも出さない努力が求められるのだ。

内臓脂肪の蓄積と血糖、脂質、血圧の異常数
腹 腹筋 へこませる 内臓脂肪の蓄積と血糖、脂質、血圧の異常数 グラフ

出典/Diabetes Care, 2007 Sep; 30(9): 2392-2394

健康診断を受けた日本人男性2,336人のデータを解析したもの。BMI25未満であり肥満ではなくても、内臓脂肪が多い人は血糖、脂質、血圧の異常の数が、内臓脂肪が少ない人と比べて有意に多いことがわかった。

取材・文/井上健二 撮影/森山将人 スタイリスト/佐藤奈津美 ヘア&メイク/潮 良子 イラストレーション/Hi there(vision track) 取材協力/栗原毅(栗原クリニック東京・日本橋院長、医学博士)

初出『Tarzan』No.878・2024年4月18日発売

Share

関連記事:

Share