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割るより簡単! 腹を凹ませるために必要なこと

腹 腹筋 割る

誰もがつねに気になるお腹! 夏を前に「今年こそバキバキに割るぞ!」と拳を高く突き上げるのも結構だが、お腹をいきなり「割る」のではなく、まずはハードルを下げて「凹ます」ことをターゲットに据えることをおすすめしたい。「凹ます」のは「割る」ほど難しくない。腹が凹むとはどういうことか、「割る」との違いから考えてみよう。

凹ますなら皮下脂肪より内臓脂肪だ

油断すると、なぜお腹はこんなに出やすいのか。その問いに対する、もっともシンプルな答えはこうだ。

お腹には皮下脂肪と内臓脂肪という2種類の体脂肪がダブルで溜まりやすいからです」(消化器内科医の栗原毅先生

過食や運動不足により、エネルギー収支が黒字に傾くと、黒字分は体脂肪として備蓄される。その体脂肪の行き先には、大きく皮下脂肪と内臓脂肪という2つがある。

皮下脂肪とは、その名の通り、皮膚の下に溜まる体脂肪。一方、内臓脂肪とは、腸がグラグラ動かないように背骨に固定している腸間膜の周辺などにつく体脂肪だ。

指でつまめる贅肉の正体は皮下脂肪。内臓脂肪の蓄積度合いはCTを撮らないとわからないが、通常ヘソの高さで測る腹囲で推定する。腹囲が男性で85cm、女性で90cmを超える場合、内臓脂肪の溜まりすぎによる肥満=内臓脂肪型肥満の恐れアリ

では、お腹を凹ますためにはまず、どちらから減らすべきか。答えは内臓脂肪。皮下脂肪と比べて内臓脂肪の方が落ちやすいのだ。

皮下脂肪には、エネルギーの備蓄という体脂肪本来の役割以外に、保温と断熱、衝撃からの保護といった機能があるため、やすやすと落ちない。内臓脂肪は機能に乏しく、血流も代謝も盛んな内臓に蓄積されているため、分解も早く落ちやすい。

皮下脂肪を落とすには3か月以上かかりますが、内臓脂肪は3週間ほどで落ちてきます

皮下脂肪と内臓脂肪の違い

腹 腹筋 割る ヘソの高さで腹部を輪切りにしたイメージ

ヘソの高さで腹部を輪切りにしたイメージ。皮膚のすぐ下で腹部を取り囲むのが皮下脂肪、その内部の内臓周辺に溜まるのが内臓脂肪。肥満には皮下脂肪の蓄積が目立つ皮下脂肪型肥満と、内臓脂肪の蓄積が目立つ内臓脂肪型肥満がある。

日本人は内臓脂肪が溜まりやすい

お腹を内側から膨らませている内臓脂肪。残念ながら日本人の多くは、その内臓脂肪を溜めやすい体質を持っている。決め手となるのは、脂肪を溜める脂肪細胞にある「β3アドレナリンレセプター」。アドレナリンというホルモンをキャッチして、体脂肪を分解して熱に変えるスイッチを入れる役目を果たしている。

でも、日本人の3人に1人には、このレセプターに遺伝子多型(遺伝情報を伝える塩基の配列が変化しているもの)があり、感度が悪い。このため、遺伝子多型があると、安静時の基礎代謝は1日平均150キロカロリーも落ちるという。単純計算すると、これだけで年7.6kg以上の体脂肪が蓄積することに。日本人は体質的に太りやすいのである。

さらに、このβ3アドレナリンレセプターは、内臓脂肪を溜める脂肪細胞に多い。そのレセプターの感度が落ちているから、日本人は内臓脂肪がつきやすいのだ。肥満の男女を比べた研究でも、白人より日本人の方が皮下脂肪を溜めにくく、相対的に内臓脂肪を溜めやすいという結果が出ている。日本人の内臓脂肪は溜まりやすく、減りやすいのだ。

なかでも要注意なのは男性。女性ホルモンは、大事な子宮などを守るため、腹部に皮下脂肪を誘導しやすい。このため女性は太っても内臓脂肪より皮下脂肪が溜まりやすい。女性ホルモンを持たない(男性ホルモンからも多少作られるが)男性は皮下脂肪より内臓脂肪が蓄積しやすく、お腹がそれだけ出やすいのだ

内臓脂肪を減らすのに辛い運動はいらない

お腹を凹ますためにフッキン運動に励む人もいるだろうが、フッキン運動に内臓脂肪などの体脂肪を減らす作用はほとんど期待できない

運動のエネルギー源は糖質脂質。運動強度が高いほど糖質が使われやすく、低くなるほど脂質が使われやすいという性質がある。

フッキンのような筋トレは運動強度が高いため、エネルギー源となるのはおもに糖質。しかもフッキンは辛くてせいぜい3分、頑張っても5分ほどしか続かない。運動エネルギーの消費量も少ないため、内臓脂肪は思ったように落ちてくれない。

体脂肪を減らすのは、息が上がらないウォーキングやジョギングのような軽めの有酸素運動(エアロビクス)だ。酸素を介して脂質がメインのエネルギー源となる。加えて強度が低いため、長く続けやすく運動エネルギーをより多く消費するから、それだけ内臓脂肪も落ちやすい。

ウォーキングやジョギング以外でも、買い物などで歩いたり、掃除などの家事に汗を流したりするのも、いわば有酸素運動のようなもの。内臓脂肪を減らすのにひと役買う。

俗に、有酸素を始めても20分以上しないと体脂肪は燃えないというけれど、これは完全なるフェイクニュース。日常の活動は強度が低いので、内臓脂肪などの脂質は普段から盛んに使われている。何分でもいいから、カラダを積極的に動かす習慣を作ることが肝心なのである。

皮下脂肪と内臓脂肪の平均値比較

腹 腹筋 割る 皮下脂肪と内臓脂肪の平均値比較 グラフ

CTで腹部皮下脂肪と内臓脂肪の断面積を測定した複数の文献から、日本人と白人のデータを比較してまとめたもの。皮下脂肪と比べて、日本人は白人よりも相対的に内臓脂肪が溜まりやすいことがわかる。

出典/Tanaka S et al., Acta Diabetol 40, S302-303

そもそもみんなの腹は割れている

SNSなどでバキバキの6パックを自慢しているオラオラ写真を見ると、心底羨ましくなる。でも、安心してください。腹筋は誰でも割れている。上から皮下脂肪が覆い隠しているため、せっかくの割れた腹筋が見えないだけだ。

ここで腹筋についておさらい。腹筋には、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋という4枚がある(下イラスト参照)。

この中でも、初めから割れているのは腹直筋。お腹の正面にあり、肋骨の下部と骨盤の底にある恥骨をつないでいる。

腹直筋の作りは、他の腹筋とは少し異なる。真ん中を貫く白線というスジで左右に、水平に横切る数本の腱画というスジで上下に区切られているのだ。だから、6つほどに割れているように見えるというわけ。

この不思議な作りは「体節構造」と呼ばれており、同じような構造が繰り返し連なっている。ヒトでは、椎骨が積み重なる背骨がその典型であり、背骨を持つ脊椎動物に広く見受けられる作りの名残である。腹直筋の体節構造は、すでに胎児の頃に完成しているとされている。

加えて、胸の大胸筋や太腿の大腿四頭筋などとは違い、腹直筋はフッキン運動にせっせと励んでも、それほど分厚くならない。誰でもデフォルトで割れている腹直筋をアピールするなら、上を覆っている皮下脂肪を減らすのが近道なのである。

腹筋を構成する4つの筋肉

腹 腹筋 割る お腹を正面から見たところ

お腹を正面から見たところ。腹直筋はお腹の正面を縦に走っており、白線と腱画というスジで区切られて6つほどに割れている。脇腹を斜めに走るのが外腹斜筋とその内側の内腹斜筋。いちばん奥にあるのが腹横筋だ。

腹を凹ますなら腹横筋

とはいえ皮下脂肪を薄く削り、“埋蔵筋”の腹直筋を掘り起こすのは、かなり骨の折れる作業。前述のように皮下脂肪は重要な仕事を担い、ちょっとやそっとでは落ちないのだ。

だが6パックを目指すのではなく、腹を凹まそうというなら話はもっと簡単。それに関わるのは腹直筋ではなく、もっぱら腹横筋だからである。

腹横筋は、腹筋のなかでもいちばん深層にある。腹直筋が体表に近いところにあるアウターマッスル(表層筋)なのに対して、腹横筋は骨格に近いところにあるインナーマッスル(深層筋)である。

その特性は、お腹をコルセットのようにグルリと取り囲んでいること。その内側を横筋筋膜という筋膜が裏打ちしており、さらに内側には腹膜がある。この腹膜に囲まれたお腹の空間が「腹腔」。胃・小腸・大腸といった消化器などの内臓を収める。

腹横筋の役目は、腹腔内の圧力である腹圧を高め、背骨を伸ばし、姿勢を安定させること。腹横筋が鍛えられたら、まるでコルセットを締めたようにお腹は凹んでくる

幸いにも、腹横筋を鍛えるのに、辛いフッキン運動は不要。むしろ上体起こしのようないわゆるフッキン運動では、力自慢の腹直筋が率先して働いてしまうので、腹横筋を鍛える効果は限られている。腹横筋を強化してコルセットをギュギュッときつく締めたいなら、もっと軽めの運動で十分効果的である。

腹横筋を強化すると腹が凹む仕組み

腹 腹筋 割る

他の腹筋や筋膜と連携しながらお腹を一周しているのは腹横筋のみ。お腹を膨らませている内臓脂肪は腹横筋の内側にあるので、上図の樽のように、腹横筋(紐)を強化してコルセットを締めるとお腹は凹みやすい

ストレス社会では腹横筋は瀕死状態だ

腹 腹筋 割る

世の中はストレスだらけ。仕事などに不安、悩み、ストレスを感じているビジネスパーソンの割合は、80%を超えているという(厚生労働省「労働安全衛生調査」による)。

ストレスをそのままにしていると、お腹は凹みにくい。理由は大きく2つある。

第一に、もっとも手軽なストレス解消の手段は、食べたり飲んだりすることだから。それがカロリー過多を招くと、内臓脂肪も皮下脂肪も減るどころか増える一方。趣味や運動など、飲食以外にストレスを軽減する自分なりの方法をいくつか用意しておきたい。

もう一つの理由は、ストレス下では、お腹を凹ます頼りの腹横筋が機能不全に陥ってしまうから。そのメカニズムは次の通りだ。

筋肉の動きは運動神経によってコントロールされているが、部分的に自律神経の影響も受けている。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、ストレスを感じていると交感神経が優位になりやすい。一般的に腹直筋のようなアウターは交感神経優位だと働きやすくなるが、腹横筋のようなインナーは交感神経が優位だとうまく働けない。インナーは、副交感神経がオンでないと、きちんと稼働できないのである。

ストレスを減らすのは難しいが、入浴や瞑想など副交感神経を優位にする方法はいくつかある。なかでも、ゆっくりと口から息を吐き、鼻から息を吸う呼吸法は手軽かつ効果的だ。

取材・文/井上健二 イラストレーション/Hi there(vision track) 取材協力/栗原毅(栗原クリニック東京・日本橋院長、医学博士)

初出『Tarzan』No.878・2024年4月18日発売

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