権威が選ぶ本当に効くストレッチ3種目|中村雅俊さんのBig3

いいトレーニーはアンテナを張っている。だからいろいろ知っているし、トレーニング法も柔軟。幅の広さを知る第一歩として、みんなのお気に入りBIG3を聞いてみた。本来はベンプレ、スクワット、デッドリフトだけど、どんな種目が出てくるんだろう。今回は、西九州大学リハビリテーション学部准教授・中村雅俊さんの「私の好きなBig3」。

取材・文/井上健二 イラストレーション/モリタクマ 編集/門上奈央

初出『Tarzan』No.872・2024年1月25日発売

権威が選ぶ本当に効くストレッチ3種目

中村雅俊さん

中村雅俊さん

教えてくれたひと

なかむら・まさとし/西九州大学リハビリテーション学部リハビリテーション学科理学療法学専攻専攻主任。理学療法士。長崎大学卒業後、京都大学大学院修了。同志社大学、新潟医療福祉大学を経て2022年から現職に就いている。

権威が選ぶ本当に効くストレッチ

過去10年間でストレッチの英語論文を世界でいちばん書いた研究者がここ日本にいる。西九州大学の中村雅俊先生だ。主要テーマは柔軟性を上げる静的ストレッチ。では静的ストレッチのビッグ3は?

「デスクワークで猫背がクセになり、肩こりに悩む人が増えている。大胸筋と小胸筋をストレッチすると肩が後ろに引かれて猫背が緩和されますし、僧帽筋を柔らかくすれば肩こりも軽くなります。立ち仕事でふくらはぎが疲れる人には、腓腹筋のストレッチをお薦めします」

静的ストレッチでは一つのポーズを15〜20秒続けるように指導されることも多いが、先生は1ポーズ120秒キープを推奨する。

「筋肉が物理的に柔らかくなるのは、筋線維の間にある結合組織の性質が変わり抵抗が減るから。それまで120秒前後かかります。

一度にやるのが難しければ、30秒×4回でも15秒×8回でもOK。

お風呂上がりのように温まっている方が筋肉は伸びやすいとされますが、それはおもに“これ以上伸ばすと痛い”と感じる閾値(限界点)が上がるから。いつ行っても静的ストレッチで得られる効果は同じです」

仕事のブレイク中など、思い立ったら即ストレッチをやろう。

① 大胸筋と小胸筋のストレッチ(左右各120秒)

大胸筋と小胸筋のストレッチ(左右各120秒)

壁際でまっすぐ立ち、壁側の腕を高く上げ、肘から前腕まで壁につける。壁につけた腕を固定したまま、そこを支点に胸を壁から離すように捻り、壁側の大胸筋と小胸筋をストレッチする。

② 僧帽筋のストレッチ(左右各120秒)

僧帽筋のストレッチ(左右各120秒)

椅子に坐り、左手を右側頭部に当てる。右肩を下げたまま、左の耳を左の肩に近づけるように頭を倒し、右側の僧帽筋をストレッチ。

「僧帽筋は大きな筋肉なので、首をいろいろな角度に捻って同様に行い、全体を満遍なく緩めましょう」

③ アキレス腱伸ばし(左右各120秒)

アキレス腱伸ばし(左右各120秒)

両足を腰幅に開いてまっすぐ立ち、片足を1歩分後ろに引く。両手を前の膝に重ね、後ろ足の踵を床につけ、後ろ足のアキレス腱(腓腹筋)を伸ばす。