知れば伸ばしたくなる!硬いカラダのデメリット&ストレッチの効果
カラダが硬くても困ってないし、という人も加齢と共にデメリットを実感するかもしれない。なぜ硬いカラダを放置してはいけないのか、そしてストレッチがいかに効果的なのか。知ればストレッチを習慣にしたくなるはず。
取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/津野真吾 ヘア&メイク/COBA イラストレーション/高橋潤 取材協力・監修/稲見崇孝(慶應義塾大学体育研究所専任講師)、山口翔大(慶應義塾大学体育研究所特任助教)
初出『Tarzan』No.856・2023年5月11日発売
ダイエットに励んでも痩せにくくなる
カラダが硬いということは筋肉が伸びにくく、本来の関節可動域を確保できないということ。同じラジオ体操をしても、ダイナミックに腕を振り上げることができる人と肘先だけちまちま動かしている人とではエネルギー消費量が違ってくる。
日常動作でも同様に、コンパクトな動作で生活を続けていれば一日の総エネルギー消費量は微々たるものになる。
ただでさえ、加齢で筋肉量は低下して基礎代謝量は落ちていく。さらにカラダが硬いことで活動代謝が低下すれば、いざダイエットに励んでも思った以上の効果が期待できないのは当たり前。10年前より痩せにくくなったという人、もしかすると柔軟性の衰えが原因のひとつかも。
老化が早まり、病気のリスクが高まる
水分を蓄えた筋肉が減り、柔軟性が低下すると、カラダの潤いは失われがち。皮膚は乾燥して硬くなり美肌作用も低下する。つまり、見た目のエイジングが進む。
さらに筋肉が伸びにくくなるということは、全身を走っている血管の伸展性が落ちることにも繫がる。たとえば、ふくらはぎの静脈は血管の周りにある筋肉が収縮することで伸び縮みし、血液を心臓に送り返している。その筋肉が硬くて活動量が落ちれば、血管の柔軟性も損なわれることになるのだ。
で、行き着く先で待っているのが、血流が滞ることで動脈硬化のリスクが高まるという可能性。生活習慣病の最悪のゴールである心筋梗塞や脳卒中といった病のリスクを高める可能性もあるのだ。
ストレッチで筋肉は伸び、素早く確実にゆるめられる
ストレッチのいいところはやれば必ずカラダに変化が表れること。
まず、硬いと思われる筋肉にストレッチを施すことによって物理的に筋肉が伸ばされる。これまでの研究では強度や時間にもよるが、ストレッチ直後には筋肉の柔軟性が概ね10〜20%、多いもので一時的に40%程度高まることが報告されている。
さらに、数週間行えば痛みに対する耐性が高くなり、筋肉を伸ばすことに抵抗がなくなってくる。そしてストレッチが習慣化すると、筋肉の最小単位であるサルコメアの数が増えていく。
ただし、その逆も然り。ストレッチを中断すれば柔軟性は徐々に失われ、カラダは元通りのガチガチ状態に。まさに継続は力なり。
ストレッチの効果は一目瞭然
1800秒間のストレッチを週2回、5週間行った場合の腓腹筋の柔軟性の変化。筋肉の伸びにくさは5週間後には改善された。その後、ストレッチを中断して5週間後に再度柔軟性を計測すると、元の状態に。
何歳から行ってもいい。ストレッチの効果は期待できる
加齢とともに柔軟性は右肩下がり。これは紛れもない事実。
ただ、文部科学省の調査によると30代後半から40代くらいの世代で柔軟性の低下がなだらかになる傾向が見られる。40代といえば子育てもひと段落し、セルフケアを行う余裕が出てくるお年頃。なんらかのケアを行うことで柔軟性が復活した可能性もある。
ところがこれ、2000年当時の話。2017年頃から2021年までのデータを見ると、柔軟性が低下している。リーマンショックやコロナ禍などを経た余裕なき時代、自らのカラダと向き合う機会が減ったということかもしれない。
そんな今だからこそ、ストレッチを行おう。実践すれば幾つになっても結果が出ることはすでに証明されている。
中年からでもカラダは柔らかくなる?
2000年と2021年の長座体前屈の結果を比較すると、前者が40代くらいで柔軟性の低下がなだらかなのに対し、後者は不可逆的な右肩下がり。由々しき事態。