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リバウンドしにくいダイエット食! 楽しく糖質を抑える「地中海食」のススメ

楽しく糖質を抑える「地中海食」のススメ

糖質の摂りすぎは注意したいけど、食事のたびに我慢ばかりしていてはつまらない。食事の時間を豊かに過ごして、かつ糖質も抑えられる、「地中海食」をおすすめしよう。和食にも通じる奥深い歴史を知り、外食や自炊に取り入れてみよう。

教えてくれた人

緒方哲男さん(おがた・てつお)/〈アトリエ メディテラネ 地中海総合文化研究所〉代表、オリーブオイル鑑定批評家。生まれ育った逗子の雰囲気から地中海食に興味を抱く。地中海諸国へも足を運び研鑽を積む

ユネスコも認めた地中海食とは?

地中海なら知っているが、地中海食と言われてもピンと来ない人は多いかも。でも、地中海食は糖質との付き合い方を考えるうえで、大きなヒントをくれる。地中海まで行くのは大変だから、せめて地中海食を学んでみよう。

その土台は、全粒穀物パスタ野菜果物豆類ナッツ類魚介類オリーブオイルなどの摂取。

「2010年、ユネスコ無形文化遺産に登録されて、地中海食は一気に脚光を浴びました。初めに登録されたのは、地中海沿岸のイタリア、スペイン、ギリシャ、モロッコの4か国でしたが、のちにキプロス、クロアチア、ポルトガルが追加されて全部で7か国になりました」(地中海食研究家の緒方哲男さん)

ポルトガルは地中海に面してないというツッコミは無用。地中海食は本来、地中海沿岸の伝統的な食事法だが、それにインスパイアされた食生活も含めて地中海食と呼び、両者を区別することに意味はないからだ。

地中海食を構成する国々

地中海食を構成する国々

地中海沿岸は夏場は少雨乾燥、冬場は多雨湿潤という気候が特徴。それはオリーブの生育に適し、オリーブオイルを中心に魚介類、野菜、果物といった地産地消メインの食生活が確立していった。

世界各地の食事を調べ、地中海食の優位性が明らかに

ユネスコに高く評価されるはるか以前、地中海食に注目した一人の男がいた。アメリカの生理学者アンセル・キース博士だ。

戦後アメリカでは、ファストフードが隆盛し、モータリゼーションが進んだ挙げ句、肥満が蔓延し、心臓病に悩む人が増えた。その苦境を食の力で変えられないか。そう思ったキース博士が目を向けたのが、地中海沿岸諸国。

同じヨーロッパ圏内のドイツやオランダ、北欧諸国と比べると、地中海沿岸諸国は心臓病が少なかったからだ。

違いの秘密は食生活にあるに違いない。そう睨んだキース博士らは、アメリカ、フィンランド、オランダと、イタリア、ギリシャ、旧ユーゴスラビア(現クロアチア)という地中海沿岸諸国、それに日本を加えた合計7か国16地区で、約1万2000人を対象とした大規模な研究を1956年にスタートさせた。

有名な「世界7か国共同研究」だ。

その結果、飽和脂肪酸の摂取が少ない地中海諸国では、アメリカなどより心臓病が少ないとわかり、地中海食がクローズアップされる契機に。現在は飽和脂肪酸単独では心臓病の強い危険因子ではないと考えられている。地中海食は食材の合わせ技で心臓病を抑えていたようだ。

イタリア料理やフランス料理と何が違う?

日本に地中海食の看板を掲げるレストランは多くないけれど、地中海沿岸のイタリア料理やフランス料理のお店ならたくさんある。地中海食と、イタリア料理やフランス料理は何がどう違うのだろうか。

日本でも地方によって食文化は大きく異なるように、イタリアやフランスでも食文化には地域差がある。

イタリア料理のなかでも、南イタリア料理を標榜するレストランなら、その内実は地中海食に限りなく近い。オリーブオイルを主体とした料理をメインに、パスタや野菜料理を楽しめば、地中海食そのものだ。

フランス料理といえばバターやラード(豚の背脂)を使う料理も多いが、地中海に面した南仏のプロヴァンス料理では代わりにオリーブオイルを使い、野菜や魚介類、ハーブ、ニンニクを用いるメニューが特徴。ブイヤベースやラタトゥイユがその代表格であり、こちらも地中海食。

このように、地中海食という看板を掲げていなくても、南イタリアや南仏の料理を得意とするお店なら、地中海食が味わえると思っていい。

もっと気軽に地中海食を楽しみたいなら、自分でも簡単に作れる。

「地中海食は元来素朴な家庭料理。レストランで出てくるような洗練されたよそ行きの料理ではありません。オリーブオイルをふんだんに使い、旬の魚介類や野菜を調理して、全粒粉のパンやパスタを添えれば、それで立派な地中海食なのです」

地中海食は最強のダイエット食だ

地中海食 INSALATA MISTA

INSALATA MISTA/低糖質の葉野菜やハーブを主体としたグリーンサラダに、砕いたアーモンドやクルミなどのナッツ、ナチュラルチーズを散らして。ドレッシングはオリーブオイル、ビネガー(酢)、レモン汁を合わせたもの。

7か国研究では心臓病にスポットを当てたが、俄然気になるダイエットにも、地中海食にはしっかりしたエビデンスがある。

それがイスラエルで行われたDIRECT研究

低糖質食、低脂質食、地中海食の3つを比べて、2年後のダイエット効果は低糖質食と地中海食がほぼ同等で低脂質食より優れており、4年後、6年後のフォローアップでも両者はリバウンドしにくいと判明している。

糖質と血糖値に超うるさいアメリカ糖尿病学会も、糖尿病の食事療法として、糖質をオフにする低糖質食に加えて、地中海食を健康的な食事パターンとして推奨している。

地中海食とDIRECT研究
地中海食とDIRECT研究 グラフ 糖質を抑える 地中海食

出典/Shai I, et al., N Engl J Med. 2008; 359: 229-41

2005〜07年、40〜65歳で肥満、2型糖尿病、冠動脈疾患のいずれかを有する322人を対象に行われた有名な研究。2年後、低脂質食は平均2.9kgだったのに、地中海食は4.4kg低糖質食は4.7kgの減量に成功していた。

地中海食を構成する食材のすごいパワー

地中海食 SPAGHETTI ALLE VONGOLE

SPAGHETTI ALLE VONGOLE/パスタは肉類ではなく魚介類を合わせたボンゴレを。デュラム・セモリナ(硬質小麦の粗挽き粉)で作られる乾麺のパスタは食物繊維が多く、血糖値が上がりにくい。消化吸収がゆっくり進むからだ。

近年、地中海食は和食と並ぶ世界最強の健康食と評価されている。秘密はその食材のパワーにある。見逃せないのは、調理にも味付けにも多用するオリーブオイル

抗酸化作用があり、パンやパスタなどの糖質も、オリーブオイルと一緒に摂ると血糖値が上がりにくくなり、食後高血糖が抑えられます」

主食は全粒粉のパンやパスタ。食物繊維が多く、やはり血糖値を上げにくい。さらに最近、小麦外皮のアルキルレゾルシノールに、血糖値の上昇を抑えたり、体内時計を調整したりする働きがあるとわかった。

主菜で多いのは魚介類。良質なタンパク源であり、青魚やマグロ類などは体内で十分合成できないEPADHAといった必須脂肪酸を多く含む。EPAやDHAは血液をサラサラにし、脂質代謝も改善する。

また、地中海食でよく食卓にのぼる野菜果物は、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルが豊富。豆類やナッツも食物繊維、タンパク質、ビタミン、ミネラルを偏りなく含む。

地中海食は元祖スローフードだ

地中海食 ACQUA PAZZA

ACQUA PAZZA/地中海食では、地元で獲れる新鮮な魚介類が貴重なタンパク源となる。ことに南イタリアでは、漁師たちが市場で売り物にならない地魚を余ったワインと水で煮込むアクアパッツァという郷土料理が誕生した。

ユネスコは、地中海食の大事な要素として「大勢でテーブルを囲み、ゆっくりとコミュニケーションを交わしながら、食事を楽しむ」という食事スタイルを挙げる。地中海食はスローフードの先駆的な存在なのだ。

そもそもスローフードは、地域の伝統的な食材を用いた料理を、みんなでスローに楽しむムーブメント。ファストフードと対照的な食事スタイルで、発祥は北イタリアだ。

南イタリアには地中海食の伝統が残る反面、経済的に豊かな北イタリアでは効率を重視する現代的な食事が広がり、それに対する反省として出てきたのがスローフードなのだ。

一人で黙って食べる孤食だと、話し相手がいないから、早食いになりやすい。すると血糖値が上がって食後高血糖が生じるし、食べ過ぎて太りやすい。

休日のブランチなどは、南仏や南イタリア料理のお店で友達とゆったり食事をしてみよう。そこでスローフードの良さが実感できたら、平日にも地中海食的でスローな食事を実践する機会を増やして。

和食に地中海食を取り入れるコツを知る

地中海食 RATATOUILLE

RATATOUILLE/ラタトゥイユはトマト、ナス、ズッキーニなどの夏野菜を煮込んで作る南仏の名物料理。ここでは豆類をプラスしてみた。南イタリアのカポナータも、地域による個性的なバリエーションといえる。

地中海食が優れた健康食&ダイエット食だとしても、毎日のように全粒粉パンやパスタを食べるわけにはいかない。

そこで大切なのは、いつもの和食に地中海食のエッセンスを取り入れること。野菜、魚介類、豆類を積極的に食べるなど、地中海食と和食には共通点が多い。そして和食もまたユネスコの無形文化遺産。相性が悪いわけがない。

まず、主食のご飯は精白米ではなく、玄米雑穀米のように精製度の低いものにスイッチする。それだけでも血糖値の上昇が抑えられる。そして和食にもオリーブオイルは案外マッチする

焼き魚冷や奴青菜のお浸しなどの仕上げにオリーブオイルを回しかけると風味がアップします。味噌汁豚汁にもオリーブオイルを垂らすと美味しくなりますよ」

和食の最大の弱点は、塩分摂取が多いところ。オリーブオイルをかけるとコクと旨みが増し、醬油や味噌などからの塩分摂取を控えめに留めたとしても満足できるはずだ。

取材・文/井上健二 撮影/大嶋千尋 スタイリスト/高島聖子 取材協力・監修/緒方哲男 撮影協力/UTUWA

初出『Tarzan』No.871・2024年1月4日発売

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