食後高血糖を防ぐと痩せる理由
カロリー過多の自覚ゼロで太っているなら、糖質の摂取量をチェック。糖質を摂りすぎると、痩せないのだ。
糖質は、ご飯などの主食、イモ類、果物、お菓子などに含まれる。摂った糖質が吸収されると、ブドウ糖として血中へ。血中のブドウ糖が血糖、100mL当たりの血糖が血糖値だ。
糖質の多い食事をすると、血糖値が上がりすぎる。これを「食後高血糖」という。
すると、血糖を筋肉や肝臓などに取り込ませ、血糖値を下げるインスリンというホルモンが出すぎる。その結果、血糖値が急激に下がって眠気が起こり、すぐにお腹が空いて食べすぎを招きやすい。
「食後血糖を調べると、中国人の2人に1人は血糖異常という研究がある。日本人も同様の可能性があります」(北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟医師)
また、筋肉や肝臓などに取り込める血糖には上限がある。
糖質を過食するとそのリミットを超えるため、余った分はインスリンにより、脂肪細胞に体脂肪として蓄えられる。カロリーを適正化しても、糖質を摂りすぎている限り、痩せられないのだ。
ロカボ®の基本を知る
脱・食後高血糖で痩せるための基本となる食事法が、緩やかな糖質制限食である「ロカボ®」。前述の山田医師らが普及に努めている。
改めてそのルールをおさらい。ロカボ®では、1食当たり20〜40g×3食+間食10g=1日計70〜130gの範囲内に、糖質の摂取量をコントロールする。これは、日本人の平均的な摂取量のおよそ半分。1食40gなら、ご飯やパンといった主食だって半人前くらいは食べられる。
基本はたったこれだけ。ダイエッターが気にするカロリーではなく、糖質だけに注目するのは、血糖値を上げるのは糖質のみだから。カロリーが高くても糖質が少ない食事なら、血糖値は上がらず、食後高血糖も起こらず、食べすぎないのである。
たとえば、サーロインステーキは1枚約500kcalだが、糖質はほぼゼロ。食後高血糖を起こさない。
一方、おにぎりは2個で約400kcalとサーロインステーキよりも低カロリーだが、糖質を80gほど含んでいるため、食後高血糖を招く。今後は食事中の糖質量に留意しよう。
主食の糖質含有量の目安
- うどん・そば1/2人前…20g
- パスタ1/2人前…34g
- ご飯半膳…28g
- 食パン8枚切り1枚…20g
主食以外で気をつけたい食品例
小麦食品(餃子の皮、ピザ生地)、イモ類(サツマイモ、ジャガイモ、里芋、春雨)、豆類(大豆・枝豆以外の豆類全般)、野菜の一部(カボチャ、蓮根、百合根、トウモロコシなど)、果物(アボカド、オリーブ、ココナッツ以外の果物全般)、お菓子、清涼飲料水、醸造酒
糖質をほぼ含まない食品例
肉類、魚介類、卵、葉野菜、海藻類、きのこ類、蒸留酒
ロカボ®の減量効果
カーボラスト&スローイーティングで行こう
糖質量以外に、食後高血糖を避けるために、気にしたいことがある。それは食べ方。キーワードは、カーボラストとスローイーティングだ。カーボラストとは、主食などのカーボ(糖質)を最後に摂ること。
主菜の肉類や魚介類、副菜の葉野菜、きのこ類などを先に食べると、後から食べる糖質の吸収が緩やかになり、血糖値は上がりにくい。
また、肉類や魚介類に含まれるタンパク質や脂質は、消化管から食欲を抑えるホルモンの分泌を促してくれるので、食べすぎにブレーキがかけられる。
いくらカーボラストを心掛けたとしても、早食いだとダメ。主菜や副菜と糖質がほとんど同時に入ることになり、血糖値は上がりやすい。また、食欲を抑える消化管ホルモンが効く前に、食べすぎる恐れだってある。
「食事を始めて20分ほど経ってから、糖質を摂るのが理想的です」
定番中の定番だが、ひと口ごとに箸を置く、30回をメドによく嚙むといった方法を駆使しよう。コロナで難しくなっているが、会話を弾ませながら食事をすることは最高のスローイーティング法なのだ。
無意識の食後高血糖の怖さを知る
ロカボ®は減量だけではなく、生活習慣病の予防にも有効。なぜなら、食後高血糖は万病の元だからだ。
食後高血糖の後、インスリンの働きで血糖値が急激に下がる現象を「血糖値スパイク」と呼ぶ。血糖値を描くグラフが、スパイク(棘)のように鋭い角度を描くからである。
血糖値に限らず、体内環境のドラスティックな変化は心身のストレス。ことに血糖値スパイクは、糖化と酸化のダブルパンチで、血管を攻撃して傷つける。それは、血管の老化である動脈硬化を進め、心臓病や脳卒中の危険度を高める。それ以外にも、血糖値スパイクは、認知症やがんの引き金でもあると考えられている。
食後高血糖が怖いのは、通常の健康診断ではわからないから。空腹時血糖値やヘモグロビンA1cといった血糖関連の数値が正常でも、食後高血糖を起こすケースは少なくない。
食後に眠くなる、疲れやすいといった自覚があるなら、食後高血糖&血糖値スパイクが生じているかも。病院で食後の血糖値を詳しく調べる「75g経口糖負荷試験」を受けたり、全国の多くのドラッグストアで展開する「ゆびさきセルフ測定室」で食後に血糖値を調べたりしてみよう。