肘痛や腱鞘炎…。手・腕・肩の悩みをほぐすセルフマッサージ
慢性的な凝りや痛み解消のためにはセルフマッサージが効く。大事にしたいのは、「頑張らない」こと。しんどい時には誰だって頑張りたくないはず。そこで厳選したのが、余計な力をできるだけ使わず最大限の効果が得られるメソッドだ。今回は、スマホのやりすぎによる肘痛や腱鞘炎、指の疲れ、手先の冷えといった手から肩にかけての悩みを解消する頑張らないセルフマッサージメソッドを紹介!
取材・文/井上健二 撮影/幸喜ひかり スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/天野誠吾
初出『Tarzan』No.867・2023年10月19日発売
肘痛には…ソフトカイロ
丸山祥一さん
教えてくれた人
まるやま・しょういち/カイロプラクター。サンシャイン通り接骨院院長。カイロプラクティックをベースに古武術整体、筋膜アプローチなどを整体院、接骨院、整形外科で学び、これまで25万人以上の悩みに寄り添う治療を行ってきた。
テニスやゴルフのようなスポーツで生じる肘痛は、使いすぎによるオーバーユース症候群。それ以外、とくにスポーツをしていないのに生じる肘痛の大半は、パソコンやスマホの操作を四六時中しているため、親指が屈曲ばかりしていて、外向きに開く外転・外旋ができていないのが主因。
手の指をしっかりと動かし、固まりがちな親指の付け根を緩めよう。
スポンジ摑み(左右各10〜15回)
❶手のひらサイズの大きめのスポンジを用意する。
❷片手のひらを思い切り開いてから、スポンジをゆっくり握り潰していく。
ポイント
手の指の関節を、外から一つひとつ順番に曲げていく。
親指の付け根のマッサージ(左右各10〜15回)
❶テーブルや硬い椅子の座面などにテニスボールを置く。
❷右手のひらでボールを押さえて、上から体重をかける。
❸ボールを転がしながら、親指の付け根を中心にマッサージする。
腱鞘炎には…ソフトカイロ
キーボード操作などで手首を曲げたまま指を動かしていると、前腕の屈筋群ばかりが使われて疲労を起こし、腱鞘炎を招きやすくなる。それを防ぐためにやっておきたいのが、手の指を曲げている前腕の屈筋群のマッサージ。
親指で前腕の内側を押さえたまま手のひらを返すだけで簡単にほぐすことができる。デスクワークのブレイクタイムの新習慣にしよう。
前腕内側のマッサージ(左右各10〜15回)
❶椅子に浅く坐り、右腕の前腕内側と手のひらを上に向ける。
❷右手の指を大きく開く。
❸左手の親指で右前腕内側の真ん中を押さえる。
❹右手のひらを内側に返して手の甲を上に向け、元に戻す。
ポイント
肘の近く、中央部、手首の近くと3か所に分けて丁寧にマッサージする。
押さえるのは、前腕の真ん中。親指側の橈骨と小指側の尺骨の間。
親指・小指の疲れには…ツボペッカー
寺林陽介さん
教えてくれた人
てらばやし・ようすけ/あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師。六本木・寺林治療院院長。父の治療院で修業後、24歳で独立して治療院を立ち上げ、予約の取れない人気を獲得。著書『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』(アスコム刊)はベストセラーに。
仕事でもプライベートでもスマホが手放せない生活を送っていると、親指や小指の根元が凝りやすくなる。そんなときは、親指の根元にある魚際(ぎょさい)、小指の根元にある後谿(こうけい)というツボを突いてみよう。
後谿には筋肉全体のこわばりをオフにする働きもあり、スマホの使いすぎによる眼精疲労、肩や首の痛みなどにも威力を発揮してくれる。
魚際・後谿を突く(左右各10回×1〜3セット)
ポイント
ツボペッカーには、ノック式のシャープペンシルかボールペンが便利。とくにシャープペンシルは何回でも連続してノックできるため、ツボを連続的に刺激できる。その際、芯は抜いて空っぽにしておこう。くれぐれも先端部分で突かないように。
❶シャープペンシルのノック部で魚際を突く。
❷シャープペンシルのノック部で後谿を突く。
❸反対の手の親指で魚際、中指で後谿を押さえ、同時に揉む。
手の冷えには…ツボペッカー
ストレス社会では、自律神経のうちでも交感神経のスイッチが入りっぱなし。交感神経は血管を縮める作用があるため、手のような末梢では血流が悪くなり、慢性的な冷えにつながりやすい。
お湯などで温めるのも有効だが、加えて手のツボも刺激しておく。ツボペッカーはツボ周辺をつつくメソッドだが、手に関してはオーソドックスに揉んでおこう。
手のツボを押す(10回+10回+左右各5秒+10回)
❶椅子に坐り、親指以外の4指の指先を、互い違いに組む。
❷軽く力を入れたまま、時計回りに5回、反時計回りに5回回す。
❸❶の指先の上下を入れ替え、互い違いに組む。❹軽く力を入れたまま、時計回りに5回、反時計回りに5回回す。
❺片手の親指を、反対の手の親指と人差し指で挟み、左右各5秒ほど強く押す。
❻手の甲を上に向け、お尻の坐骨(坐ると座面に当たるお尻の骨の出っ張り)の下に敷く。左右交互に体重をかけ、骨で指を揉むように刺激。
四十肩・五十肩には…アラウンドマッサージ
石垣英俊さん
教えてくれた人
いしがき・ひでとし/あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師。ホリスティッククーラ代表。手ぬぐいボール健康法提唱者。解剖学と東洋医学の知見を融合した施術を心がける。ことに背骨からのケアを重視し、日本背骨養生協会では指導者の育成にも取り組む。
四十肩・五十肩とは、40〜50代に起こりやすい肩まわりの症状。正式には肩関節周囲炎といい、肩関節を動かす筋肉や腱などに炎症が生じる。痛み以外にも、腕が上がりにくいといった動きの制限を伴う。
軽症なら自然に解消するケースが大半。症状が落ち着いたら、肩の前側と後ろ側を手ぬぐいボールでほぐしておくと治りが早くなる。
鎖骨下の手ぬぐいボールマッサージ(左右各3〜5秒×2〜3セット)
手ぬぐいボールの作り方
手ぬぐいボールは石垣英俊さんのオリジナル。作り方は簡単。長めの手ぬぐいを横に広げ、真ん中にテニスボールを置く。ボールを包むように手ぬぐい上下を帯状に畳み、ボールが真ん中で固定されるように結ぶ。
❶手ぬぐいボールの両端をまとめて右手で持つ。
❷壁際に立ち、ボールを左側の鎖骨の下に押し当てる。
❸左足を軽く引き、壁に寄りかかり、ボールで3〜5秒間強めに圧迫。少し壁からカラダを離して圧迫を解く。
肩の内旋・外旋ストレッチ(左右各3〜5回×2〜3セット)
❶手ぬぐいボールの両端をまとめて右手で持つ。
❷壁に背を向けて立ち、ボールを左肩の下に押し当てる。
❸左肘を肩の高さに上げて壁につける。
❹両膝を軽く曲げて壁に寄りかかり、ボールでやや強めに圧迫。そのまま前腕を下に下げる内旋、上に上げる外旋を行う。