気持ちよく&効果的にウォーキングするための6つの工夫

健康効果を得ようと思ってウォーキングを始めるなら、ただ漫然と歩くだけ、はいただけない。フォームや姿勢、歩く前のストレッチなど、簡単な工夫を知って、もっと効果的に気持ちよく歩を進めよう。

取材・文/石飛カノ 撮影/下屋敷和文(記事中) イラストレーション/内山弘隆 取材協力/齊藤太郎(ニッポンランナーズ代表)、能勢博(信州大学特任教授)

初出『Tarzan』No.866・2023年10月5日発売

1 いいフォームで歩いてこそ効果が期待できる

何らかの健康効果を得るためには、だらだら歩きは禁物だ。

崩れた歩き方で1日1万歩のノルマを課してもウォーキングの効果はほとんど得られない。歩数を増やすことよりまずは正しいフォームを習得することが先決だ。〈ニッポンランナーズ〉代表の齊藤太郎さんにポイントを伺った。

「骨盤から脚を大きくスイングさせて股関節に大きな三角形を作ることが重要なポイント。そのためには上体でリズムをとって肩甲骨まわりを動かすことが必要です。肩甲骨から肘を後ろに引くつもりで、肘と体幹の間に三角形を作る意識を持ちましょう。背骨に垂直のラインが通っていてその上に頭が乗っているイメージです」

上が上半身と下半身が連動している正しいウォーキングフォーム。自然と歩幅が大きくなりスピーディに歩ける。ところが街で見かける多くの人は下のようなトボトボ歩き。気をつけたい。

正しいウォーキングフォーム

2 まっすぐ立てていない人が多い

いきなり正しいフォームで歩けと言われて、すぐその通り実践できる人は少ない。というのも歩く以前の問題で、そもそも正しい姿勢で立てていないからだ。

「足裏の圧力を計測できる機械で調べてみると、正しく立てていない人は踵荷重に陥っています。前方の指に体重が乗っていないので、姿勢そのものが乱れます」(齊藤さん)

踵重心で立つと、頭が前に出て背中が丸くなり、骨盤が後傾して膝が曲がる。どこかで見たことあるような気が…と思ったらまさにおじいちゃん姿勢。

このまま歩き出せばトボトボ歩きになるのは当たり前。足の前後に重心を分散させて立つ習慣をつけよう。

正しい立ち姿勢

姿勢と足裏への荷重の関係。踵と指の付け根に体重が乗っているとまっすぐに立てる。これに対して踵荷重では猫背のおじいちゃん姿勢に陥ってしまう。歩き出す前に重心と姿勢の矯正を。

3 歩く前にストレッチで立ち姿勢をリセットする

歪んだ姿勢をリセットしないと歩く動作をキープすることすら危うい。

「本当は歩くときにアクセルの働きをする大臀筋やハムストリングスを使いたいのに、姿勢が悪いとブレーキの大腿四頭筋を使ってしまいがち。しかも疲れやすくもなります。なので、歩き出す前にストレッチで姿勢をリセットしましょう」(齊藤さん)

また、踵荷重の人は足の指の付け根で地面を蹴り出すことが苦手。とくに親指の付け根で踏ん張る動きができないと足裏の張力が利用できない。その結果、歩くたびに横揺れ動作が加わるおっさんのような歩き方に。

「親指の付け根をしっかり使うために壁押しで指の動かし方を練習しましょう」

壁押しストレッチ

壁押しストレッチ

壁の前に立ち、両足を前後に大きく開いて肩の高さで両手を壁につく。後ろ足の親指で床を押し、親指をしならせて踏ん張る。親指の付け根に全体重を乗せるつもりで。左右各10回を繰り返し。この感覚を摑んだら歩くときも応用。

お尻とハムのストレッチ

お尻とハムのストレッチ

両足を肩幅に開いて立ち、両膝を軽く曲げる。両手を組み、肩の高さで前方に伸ばす。腕を前にぐーっと伸ばすと同時にお尻を後ろに突き出す。上体はできるだけまっすぐキープ。硬いお尻とハムを伸ばすと同時に背すじを伸ばす。30秒キープ。

4 歩いた後30分以内に乳製品を摂る

インターバル速歩(詳しくはTarzanWebの記事:データで見る、僕らが「ウォーキング」をするべき理由)で歩いた後、30分以内に牛乳をぐびぐびっと飲む。いや、牛乳ではなくても乳製品であれば何でもいい。30分以内の摂取でカラダに嬉しいことが起こるという。

「乳製品を摂取すると肝臓でアルブミンというタンパク質が合成されます。アルブミンは高分子なので、これが血管に増えてくると血管の外から水分が引き込まれて血液量が増えます。すると汗がうまくかけるようになって体温調節機能が上がり、その後、徐々にタンパク質を材料とする筋肉が増えてきます」(信州大学・能勢博特任教授)

体温調節がうまくできれば疲れにくくなり、筋肉がつけばさらに疲れにくくなる。歩いた後の乳製品摂取でさらなる健康効果を。

90分のインターバル運動を2回実施。その後30分以内に乳製品を摂取したグラフ

『ウォーキングの科学』(講談社ブルーバックス)より

中高年を被験者にした実験。90分のインターバル運動を2回実施し、その後30分以内に乳製品を摂取させたところ、摂取しなかったグループに比べて血漿量が増加。つまり血液量が増えた。

5 習慣化したら運動強度をアップさせる

能勢特任教授によれば、インターバル速歩を実践するとおよそ2週間で何らかの自覚症状が表れるという。以前より息切れしにくくなった、歩くスピードが速くなった等々だ。

やがて歩かないと気持ちが悪くなって習慣化に見事成功する。こうなったらいつまでも同じところに留まってはいられない。ステップアップする頃合いだ。

「体力がアップするのはトレーニングを始めてから3か月以降です。そうなったら、時間を計ってスピードを上げる、低山に登るといったステップアップを図りましょう。低山がなければ坂道や階段を上る。お寺や神社は坂の上にあるので、そうした寺社を散歩コースにしてもいいでしょう」

6 30分ウォークをジョグへ切り替え

ジョギング

歩き始めてどんどんスピードが上がってきた。たまに低山にも登るようになってモチベーションもますますアップ。こうなったらそろそろウォークからジョグにスイッチするタイミング。

「速歩きで心拍を上げるのが心地よいと感じるようになったら、速歩とジョグを組み合わせていきましょう」(齊藤さん)

30分続けてウォーキングしていたという場合なら、最後の5分間だけジョグに切り替えてみる。慣れてきたら10分ウォーク→10分ジョグ→10分ウォークというように、徐々に走る時間を延ばしていく。最終的に25分ジョグを続けてフィニッシュできたら、あなたはもう立派なジョガーだ。

徐々にジョギングの時間を延ばしていく

10分ウォーク→10分ジョグ→10分ウォークの後は、5分ごとにウォークとジョグを繰り返し、敢えて波を作ってカラダを慣らす。これはインターバル速歩+ゆっくり歩きと同じ原理。最終的に5分ウォーク→25分ジョグでゴールとする。