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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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スマホを持つ手は一日に何度も見るが、足をしげしげと眺める機会はめったにない。ただ、その構造や機能を知れば、足のケアを怠ることがいかに、カラダ全体にとってマイナスなのかが理解できるはず。足を熟知したナビゲーター・ふっ太の愚痴に耳を傾けながら、知られざる足の真実を見つめてみよう。
ふっ太
足の妖精。我慢強く、弱音をめったに吐かない高倉健タイプだが、足の重要性を広め、足の置かれている悲惨な状況を変えるために立ち上がった。座右の銘は「足を変えれば世界は変わる」。
目次
地面=外界との唯一の接点だから、足裏にはいろいろなセンサーが埋め込まれている。それをいつもシューズやソックスですっぽり覆ってしまうなんて本当に残念な話だよ。
直立二足歩行をしても倒れず、まっすぐに歩き続けるためには、何よりも重力に対して姿勢を正しくコントロールする必要がある。
そのために足裏に豊富に配置されているのが、メカノレセプター(機械受容器)と呼ばれるセンサーだ。これが、足裏感覚の担い手。足裏に加わる物理的な力を巧みに捉えて、そのデータを脳へとリアルタイムに伝える。
この他、ヒトには、カラダの位置や動きなどを感知し、姿勢や運動を細かく制御するシステムがある。これは「固有感覚」と呼ばれる。固有感覚に関わるセンサーには、筋肉に埋め込まれた筋紡錘、腱に埋め込まれたゴルジ腱器官、関節内にあるルフィニ終末などがある。
そこに足裏のメカノレセプターからの情報もミックスされることで、私たちは姿勢をブレずに安定させて、自由自在に動き回れるのである。
休日ビーチやキャンプに出かけたときくらい、裸足で大地を踏み締め、野生の足裏感覚を呼び覚まそう。
どんなデコボコ道もものともせずに歩けるのは、ボクのおかげ。片足だけで26個の骨があり、状況に応じてしなやかに動き、カラダを足元から支えるよ。面倒がらず、この機会に一つでも骨の名前を覚えて。
26個の骨の内訳は、次の通り。まず、足首と踵には、足根骨と総称される7個の骨がある。注目選手は、両くるぶしの間にある距骨だ。
5本の足指を作るのが、計14個の趾骨。親指だけは2個、他の4指は3個の趾骨からなる。この足根骨と趾骨を連結するのが、5個の中足骨である。
これらの骨が接する関節も片足で33か所。2つだけ紹介しよう。足は、前足部、中足部、後足部という3つのパーツに分けられるが、その境目となるのがショパール関節とリスフラン関節。
ショパール関節は、足根骨の踵骨と距骨、立方骨と舟状骨の間の関節。リスフラン関節は、4個の足根骨と5個の中足骨が接している。ショパール関節の手前が後足部、ショパール関節とリスフラン関節の間が中足部、リスフラン関節から先が前足部(爪先)である。
これら多くの骨と関節が協力し、滑らかに稼働することで、足の多彩な動きが保証されているのだ。
正解はアーチ。足裏にあるアーチは土踏まずだけじゃないんだよ。このアーチが下がるとトラブル続出。ボクの大発明、大切にして!
チンパンジーやゴリラの足裏にはアーチがなく、親指が他の四指から離れており、樹木につかまるのに適した作りをしている。
一方、ヒトの遠い祖先であるアウストラロピテクス・アファレンシスという化石人類の、360万年前の足跡の化石からも、すでに足裏アーチの存在が確認できるという。
足裏には、全部で3つのアーチがある。その起点となるのは、足の親指の付け根、小指の付け根、踵の中心という3点だ。
ヒトの足の最大の特徴が、そのユニークなアーチ構造。土踏まずでお馴染みの内側縦アーチ以外に、外側縦アーチと横アーチも備わる。
1つ目のアーチは、親指の付け根と踵をつなぐ内側縦アーチ。これが土踏まずである。2つ目は、小指の付け根と踵をつなぐ外側縦アーチ。そして3つ目は、親指と小指の付け根をつなぐ横アーチだ。
疲れずに長い距離が歩けるのは、3大アーチが体重を分散させてくれるから。加齢や運動不足などでアーチが下がり、足裏がフラットに近づくと、歩行時に支障が出る。
足裏アーチがあるのはヒトだけではなく、ゾウの4本の足にもアーチ構造はあるとか。巨体を支えるためにアーチ構造が必要なのだろう。
足の親指が外側に曲がり、付け根が出っ張るのが外反拇趾。痛いし、疲れやすくなるし、もうイヤ!
日本人のおよそ30%が悩んでいるとされるのが、外反拇趾。親指の根元にある中足骨と、その先の第1基節骨の角度(外反拇趾角、HV角)が20度以上ある場合、外反拇趾という診断が下される。
外反拇趾の悪影響は広範に及ぶ。外反拇趾だと、親指で地面を正しく蹴り出せなくなり、歩幅が狭くなり、ラクに長く歩きにくくなる。下半身の骨の連なり(アライメント)も乱れ、変形性膝関節症などのトラブルに見舞われるリスクも上がる。
外反拇趾の引き金は、足に合わないシューズを履くこと。
とくにヒールが高くトウ(爪先)が細すぎると、爪先の負担が増え、親指を開く拇趾外転筋が硬く弱くなり、外反拇趾のリスクが高まる。ハイヒールを履く女性に外反拇趾が多い理由だ。
「靴を履く習慣がなかった明治維新以前、外反拇趾で悩む日本人はほとんどいなかったとか。何よりも足に合うシューズを選んでください」(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院整形外科の原口直樹病院長)
あなたには小さな一歩でも、ふっ太には大きな一歩。歩くたび、密かに高く強くなったり、柔らかく優しくなったりしているよ。その苦労話を知ったら、明日から一歩ずつ丁寧に踏み締めながら歩きたくなるさ。
歩くときに欠かせない役目を担っているのが、爪先と踵をつなぐ足裏の足底筋膜と呼ばれるパーツ。筋膜と名付けられているけれど、実態は腱の仲間。弓なりのアーチを描く足の骨の連なりを、弦のようにピンと張って支えている。
1歩蹴り出す際、爪先(足の指)が反る(背屈する)と、足底筋膜のテンションがアップ。足裏アーチが上がる。これにより、足全体の剛性が高まり、爪先を支点とするテコができて前方へ力が効率的に伝わる。これが、歩行時の蹴り出しを助ける「ウィンドラス機構(巻き上げ機構)」と呼ばれる仕組み。
続いて接地時は、「トラス機構」が働く。トラスとは、三角形のパーツを組み合わせる骨組みのことだ。
接地時に荷重すると、足底筋膜を底辺、前足部と後足部の骨を2つの辺とする三角形が生じる。上から力が加わると、力が2辺に分散されると同時に、底辺の足底筋膜が引っ張られながらアーチを保ち、トラス機構が衝撃を和らげている。
推進力が欲しい蹴り出し時はウィンドラス機構、衝撃をできるだけ和らげたい接地時はトラス機構と、足は変幻自在に形を変える。
日本人は1日平均7000歩ほど歩く。ということは、1日7000回もこの地道な作業を繰り返しているということ。ふっ太に最敬礼!
つねに体重が加わり続ける場所だけに、足首(足関節)はかなりタフだよ。だからといって酷使されると、大迷惑なんだけどね。
足首を、隣接する膝関節と比べてみよう。膝関節の作りはとても複雑だが、単純化すると、脛の脛骨の先端が作る浅い窪みに、太腿の大腿骨の丸みを帯びた先端が乗ったもの。まるで蝶番のような作りをしている。
そのままだと不安定なので、天然のサポーターである靱帯が幾重にも補強している。サッカーなどで不自然な動きで無理な力が加わると、この靱帯を損傷し大怪我につながる。
では、足関節はどうか。足関節は、距腿関節と距骨下関節という2つの関節からなる。前者は足首を上下に動かす底屈と背屈に関わり、後者は足首を捻るときに働いている。
なかでも丈夫なのは、距腿関節。作っているのは下腿の脛骨と腓骨、そして足の距骨である。距腿関節は、脛骨と腓骨が作るホゾ穴に、距骨上部のホゾ(距骨滑車)が深くハマり込む作りをしている。
このため、膝関節と比べて安定性が格段に高くなっており、関節を覆う軟骨もタフで老化しにくい。これも、足が最重要パーツである証し。
膝関節は凸面(大腿骨)も凹面(脛骨)も浅く、構造的に安定しにくい。距腿関節はホゾ穴とホゾの関係であり、抜群の安定感を誇る。
じっと立っているときと比べると、歩いたり、走ったりするときには、カラダの負担は大きくなりやすい。いちばんの犠牲者はボクなんだよ。
ウォーキングでは、片足立ちになる瞬間があるため、カラダへの衝撃(地面反力最大値)は体重の約1.2倍になる。体重70kgだとすると、84kgに相当するのだ。また、通常のウォーキングよりもスピードを速める速歩では、衝撃は約1.5倍にもなる。体重70kgなら、衝撃は105kgと100kgオーバーだ。
さらにランニングになると、地面反力最大値は倍増。軽くジャンプしてから片足で交互に着地するため、そのたびに体重の2〜3倍もの衝撃が加わるとされている。
ウォーキングでもランでも、ストレスが集中しやすいのが、足。
「荷重が集中する距骨の支持面積は、名刺2分の1枚分ほど。狭い面積に荷重が集まるため、加わる衝撃は膝や股関節の最大3倍にもなります」
すでに触れたように、距骨が作る距腿関節は、膝関節などと比べて堅固に作られている。でも、歩いたり、走ったりするたびに、毎日最大3倍ものショックが加わり続けると、いつトラブルが起こっても不思議はない。
求められるのは転ばぬ先の杖。フットケアを怠らないようにしよう。
片足で26個もある足の骨でも、もっとも重要な骨の一つに挙げられるのが、これまで幾度か話題になってきた距骨。距骨を大事にしてくれないとボクは困ってしまうんだ。
距骨には、いろいろとユニークな性質がある。たとえば、骨には動かすための筋肉が通常付いているが、距骨には直接付着する筋肉はなく、靱帯のみで関節と連結している。筋肉が付いていない骨は、おそらく距骨だけ。それだけ自由度は高い。
また、骨と骨が接する面は、一般的に軟骨で覆われている。
「なかでも距骨は、表面のほとんどが軟骨。四方八方がツルツルであり、動きやすい作りをしています」
そもそも軟骨内には、血管が一本も走っていない。代わりに、軟骨にはスポンジのような特性があり、力が加わるとスポンジを握ったように内部から水分(組織液)が染み出し、力が緩むと周辺から水分が入り込む。この繰り返しにより、血管がなくても新陳代謝が進むのである。
荷重されると距骨の軟骨が圧迫されて、内部から組織液が出る。力が抜けて圧迫から解放されると周囲から組織液が距骨の軟骨に入る。
ところが、運動不足などで軟骨のスポンジ作用が働きづらくなると、軟骨の新陳代謝がダウン。その機能が損なわれやすい。
軟骨成分が多めの距骨は、こうしたスポンジ作用の低下の悪影響を受けやすく、それは足全体の働きを悪くする誘因となる。
取材・文/井上健二 イラストレーション/ニシワキタダシ 取材協力/原口直樹(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院病院長) 編集/門上奈央
初出『Tarzan』No.863・2023年8月24日発売