体質別「蕁麻疹」のおすすめ生活養生&漢方薬(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「蕁麻疹に効く漢方薬」について。
蕁麻疹のお悩み、漢方は得意です!
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。漢方の魅力を現代に合わせて発信しています。
漢方薬局に寄せられる、よくあるお悩みのひとつに「蕁麻疹(じんましん)」があります。赤くぷっくりと皮膚が腫れて、かゆみを伴います。一見虫刺されのようにも見えますが、腕に、脚に、ときに体中に現れます。
急で広範囲、「ただ事ではない!!」と思わせるに十分な迫力あるビジュアル、しかしそれが数時間のうちに跡形もなく消えてしまうため、病院に行った頃にはまるで何事もなかったかのよう。
運よく(?)症状のあるうちに診てもらえても、明確な原因がわかることは少なく、分かったとしても対症療法しかないのがほとんどです。そこで漢方薬局の門が叩かれる、というわけです。
さて、漢方薬局の方でも「蕁麻疹にはこれが特効薬です」なんていうお薬をお出しできるわけではありません。が!独壇場といえるくらい、蕁麻疹は漢方療法が向いているお悩みのひとつなんです。特効薬ではありませんが、対症療法ではない根本治療のためのお薬をお出しすることができます。
その方の蕁麻疹の原因がどこにあるか、これをきちんと探っていくのが大きなポイントになります。
蕁麻疹を発する「生活の癖」を見つける
カラダに合う漢方処方を見つけるために、蕁麻疹を引き起こす生活の癖を探します。同じことをしていても、蕁麻疹を発症しない人もいます。ですので「誰でもやっていることだし、まさかこれが原因なんて!」と驚かれることもあります。
生活の癖のツケ、いわゆる症状というものは、人によってどこに出るかが違います。冷え性として出る人、生理痛として出る人、汗のかき方として出る人など、様々です。
ですので同じ蕁麻疹のお悩みの人でも、カラダに合うお薬は違いますし、冷え性と蕁麻疹という異なるお悩みに同じ漢方薬が効くこともよくあることです。あの人はあの人として一旦置いておき、自分のカラダを振り返ってみましょう。
漢方とは方術。お薬だけでなく養生法も大変重要視します。今回は蕁麻疹の体質別おすすめ生活養生法と漢方薬をご紹介します。
① 胃腸虚弱タイプの蕁麻疹
胃腸虚弱タイプの特徴は、低気圧に弱い、下痢しやすい、声が小さい、などです。少食の人に多いです。
冷たいものや生ものの消化が苦手ですが、周りに合わせて「とりあえず冷えたビール」とか「刺し身盛り合わせ」などを食べているうちに、この体質を拗らせていきます。消化力が高くないことに加えて、水分代謝が下手です。そのために低気圧に振り回されたり下痢しやすい傾向にあります。
暖かいもの、加熱したものを、自分に合った量、とることが体質改善の一歩となります。おすすめの漢方薬には六君子湯(りっくんしとう)、人参湯(にんじんとう)などがあります。
② 血巡り不良タイプの蕁麻疹
血巡り不良タイプの特徴は、生理にトラブルがある、虫刺されの痕がいつまでも残る、上半身は暑いけど下半身は冷えている、などです。
加工食品を日常的に食べる、入浴の習慣がなくいつもシャワーだけ、という人に多いです。忙しい日常を効率的にやりくりしているように見えますが、その生活は血の巡りを犠牲にしています!
まずは食品添加物の摂りすぎに気を付けること、そして入浴とふくらはぎのマッサージを行うことで全身の血流を少しずつ改善していきましょう。
おすすめの漢方薬は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、便秘があれば折衝飲(せっしょういん)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などが候補です。妊娠中の方は体質的に当てはまると思っても、これらの漢方薬はやめておきましょう。
③ 神経質タイプの蕁麻疹
神経質タイプの特徴は、細かい気配りができる、評判が気になる、気温によらない汗をかくなどです。頑張り屋ですが、その頑張りのために休憩をおろそかにしていることが多いです。
頑張るときと休むとき、自律神経のスイッチの切り替えが伴うものですが、多くの時間を、連続的に「頑張るモード」で過ごすために、休憩時間を設けてもなかなかカラダがいうことを聞きません。つまり休めていない状況が続いています。
このタイプは「休むこと」に対する認識を改めます。頑張るにはそれと同じくらい、休むことが大事です。体側を伸ばし、深い呼吸をすることが自律神経のスイッチを切り替える助けになります。
おすすめの漢方薬は四逆散(しぎゃくさん)、生理前に気になる症状があれば加味逍遙散(かみしょうようさん)、冷えが気になれば柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などがおすすめです。
薬のチカラより日常のチカラ
ここに紹介した体質は蕁麻疹の原因になる主なものですが、これら以外の体質でも蕁麻疹は起こります。また、例に挙げた漢方薬も飲みさえすれば大丈夫というものではなく、生活の癖を改めることが大原則です。
特に気にも留めていない日常的なことが原因となっている場合がほとんどですので「これ、いつもの私だ!」と思うものがもしあったら、気を付けてみてください。蕁麻疹は出ていなくても、普段お悩みの症状が改善する可能性は大です!