暑いうちから始める「冬に備える」漢方3つのポイント(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「冬に打ち克つための準備」について。
冬を制すために今からケアを始めよう
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。漢方の魅力を現代に合わせて発信しています。
暦の上ではすでに秋です。とはいえ、蝉の大合唱をBGMに汗を拭う暑さの中、秋を意識することはまだ難しいかもしれません。それでも先手を打つのが漢方です!
漢方には冬病夏治(とうびょうかち)という言葉があります。「冬に発症したり重症化しやすい病気は夏のうちにケアしておくと良い」という意味で、古くから実践されている教訓でもあります。
(ちなみに漢方とは養生法や鍼灸を含めた健康のための方術です。漢方薬は漢方の手段のひとつということになります)
今回は寒い季節が来る前の、まさに今やるべき漢方をいくつかご紹介したいと思います。
寒い季節にパワフルになる厄介な症状と言ったら何が思い浮かぶでしょうか。肩こりをはじめとする筋肉の強張り、末端から時には全身にも及ぶ冷え、そして慢性疲労など、この辺りは多くの方が経験されたことのあるトラブルと言えるのではないでしょうか。
まだ陽の気が充実している今のうちに、厄介者はぱぱっと払ってしまいましょう。
① 詰まりを流す5分マッサージ
暖かい今の季節ならセルフケアのマッサージも実感しやすいです。
頭皮、首から肩、鎖骨に沿うライン、手首から肘にかけて、脇、脇腹、腰、お尻、もも、ふくらはぎ、などなど、気持ちのいいところを見つけて流してみましょう。
手で撫でたり揉むだけでも、自分のカラダのどこが詰まっているのか発見できます。ここ! と思う部分にゴルフボールからテニスボール大のものをあてて転がしたり、もしご自宅にマッサージアイテムがあればぜひ活用してください。
たった5分! めぐりの悪い状態のままカラダを放置し続けないことがポイントです。ただし痛いのを我慢するマッサージはセルフケアではNGです。気持ちがいいことを大事にしてくださいね。
詰まりを上手に流すために、カラダをゆるめる入浴の習慣もお忘れなく。夏だからといってシャワーだけで済ませていると、寒い季節に勝てるカラダが育ちません。
② 内臓を冷やさない
内臓が過度に冷えること、それは37度の体温で真価を発揮する私たち人間が、正常な機能を失うということ。
ちょっと大袈裟すぎる? いいえ、決してそんなことはありません。夏野菜や南国のフルーツが持つ体の熱をとる性質に比べると、氷入りの飲み物などがカラダを冷やすパワーは桁違いです。
日常生活では飲食物の温度は下げすぎず、食材の性質を使ってカラダの熱をコントロールしましょう。冷たいものをいただいたら、その後には温かいお茶をいただくといいですよ。
③ 充分な睡眠
寒い季節は陽の気が不足します。疲労感たっぷり、やる気が出なくて動けない、という経験はありませんか? そこで見直したいのが睡眠です。眠ることはカラダを回復させる行為にほかなりません。睡眠を無視してカラダを回復させることはできないと言ってもいいでしょう。
陽の気が充満している今の季節なら、多少の疲れがあっても動けてしまいます。が、寒くなってくるとそうはいきません。疲れが無視できなくなる前に、カラダを回復させる習慣をきちんと作っておきましょう。
まだ寝苦しい夜もありますが、エアコンとお布団とを上手に組み合わせて、快適な睡眠環境と時間を確保してください。つい楽しくて夜更かししてしまうこともあるでしょうが、十分な睡眠に裏打ちされた元気なカラダは、その何倍も楽しいことをさせてくれるはずです。
パワー不足では到達できなかった境地へ、自分を押し上げてみてください。
いかがでしょうか。寒い季節に備える漢方と言っても、特別なことというよりはどこかで聞いたことのあるものばかりだったかもしれません。
聞いたことがあっても意外と実践できていないと思ったら、とっても伸びしろがあると前向きにとらえてください! 漢方薬も体質を変える大きな助けとなりますが、自身の振り返りがまずは大事です。
暑い季節も後半戦、今から備えれば寒い季節も怖くありません。お薬だけじゃない、コツコツ漢方で悩まないカラダを作りましょう。