イライラする日にはハッカを。体調・体質と「香り」の関係(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「香りの魅力と好みの分かれ道」について。
便秘体質だとバラのお茶が飲みたくなる?
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
薫風。初夏の若々しい緑に加え、見ごろを迎えた花々もまた多く、ふと鼻をかすめる香りの源はどこかしらと思わず足を止めることもしばしばです。そんな香る花の代表のひとつがバラですが、皆様、バラの香りはお好きでしょうか?
私は学生のころバラの香りがとても好きで、バラの花びらのお茶を好んで飲んでいたことがありました。そんな話を友人にしたところ、彼女は「口に入れるもののニオイとしては受け入れられない」と言うのです。
私がバラの花のお茶を好んだ理由は香りのほかにもう一つ。当時便秘がちだった私ですが、バラのお茶を飲むと翌日は必ず気持ちのいい便通があったのです。
漢方屋となった今、なるほどと思うことがあります。漢方処方にもバラ科の生薬がいくつかあるのですが、その中に「瘀血(おけつ)の便秘に良い」」ものがあります。瘀血とはいわば血の巡りの滞りです。血の巡りの滞りは婦人科疾患を生みやすく、かつ便秘の原因にもなります。
学生時代の私は確かに月経不順もあり、その上で便秘もあり、まさにバラのお茶がぴったりだったのでしょう。そんな体質がバラのお茶を好きにさせていたと考えられます。
月経不順も便秘もすっかり手放すことができた今となっては、友人の「口に入れるもののニオイとしては受け入れられない」というバラのお茶に対する意見も理解できます。
私自身は今も変わらずバラの香りは好きですが、かつてのように好んでバラのお茶を飲みたいかと問われればそうでもありません。嗅覚や味覚が変わるというのは、こうした体質の変化を反映している部分があるのだろうと実感させられました。
個性的な香りと好むであろう体質
さて、そんなことを踏まえて、特徴的な香りをもつものと、それを好むであろう体質をいくつか挙げてみましょう。
① 薄荷(ハッカ)、ミント
鼻の奥へ抜ける強い清涼感が特徴です。気を巡らせて熱を取るのが得意な生薬ですから、ストレスが熱に変わる方に合います。
イライラしやすかったり、充血や炎症を起こしやすい体質の方です。普段は苦手な方でも「なんか今日は嫌いじゃないな」と思ったら、カラダが必要としているタイミングでしょう。
② 生姜
スパイシーで刺激的、食欲をそそる香りです。胃腸を温めて元気にする生薬として、漢方処方にも用いられます。
普段からアイスコーヒーやお刺身など、冷たいもの、生ものを口にする機会が多い方や、胃腸がお疲れの方は特にお好きなのではないでしょうか。
③ お酢
濃ければツンとした刺激がありますが、調味料と合わせたり、飲用の果実酢は唾液の分泌を促すほどですね。
酸味には引き締めの効果があります。開ききった毛穴から汗がとめどなく出てくるようなときには大活躍です。一緒に適度な甘味を摂ると、失った水分を上手に補えます。疲労がたまりやすい方は取り入れてみてください。
旬の食材を上手に活用しよう
なるほど、あるある、と感じていただけるものはあったでしょうか。
「健康のために毎日!」というよりは、その時々に合わせて体調と食材をマッチさせてみてください。今時期から店頭に並ぶ食材は、湿度の高くなる日本の夏を乗り切る力を持ったものばかりです。
旬の魅力を再確認できると思いますよ。