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汗っかきの人も、そうじゃない人も。私たちにとって非常に身近な「汗」だけど、意外に知らないことばかり。10個のQ&Aで知る常識と新知識。上手に付き合って、いい汗かける夏を迎えよう!
目次
A. 馬やカバ、猿やゴリラなどが汗をかきます
人間は体温を一定に保つために汗をかくが、同じように体温調節が目的で汗をかく動物もいる。
「代表的なのが馬や牛、豚などで、特に馬は運動後や緊張、興奮状態になると、全身から白く泡立った汗をかきます。カバも汗をかきますが、彼らの場合は体温調節ではなく皮膚の乾燥や日焼け、細菌への感染を防ぐのが目的。ピンク色をしているのが特徴で、動物園などで見た人も多いと思います」(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の室田浩之さん)
また猿やゴリラも汗をかくものの、全身ではなく手汗のみ。滑り止めとしての役割が大きいという。
A. 遺伝は無関係。発汗能力は住む環境によって変わる
「人間は200~500万程度の汗腺を持って生まれ、その数は生涯変わりませんが、生まれてすぐは汗を出す能力が未熟で、うまく汗をかけない。
その後暑い環境で過ごしたり、カラダを動かしたりといったさまざまな刺激によって汗腺が徐々に汗をかく能力を獲得し、2歳半~3歳頃までに一定程度の汗腺が能動化され、成人までに汗をかく能力がピークを迎えます」(室田さん)
つまり遺伝云々は無関係だ。
A. 思春期以降、女性の汗腺は肥大しにくくなる。
子どもの頃の発汗量には男女差はないが、汗腺が発達する思春期以降は男性の方が発汗量が多いのが一般的。
「女性は男性ホルモンの分泌量が少ないため、汗腺が肥大しにくいのが大きな理由です。女性は汗が少ない分、皮膚への血流量を増やすことで体熱を放散する仕組みをよく使います」(井上さん)
ただし汗腺の機能は運動で蘇らせることが可能。こちらのサーキットトレーニングを参考に。
A. アルコールの血中濃度は下がらない
昔の野球選手の定番エピソードに「深酒した翌朝はカッパを着て走って酒を抜いて試合に挑んだものよ」というのがある。
実際に汗をかくことで酒は抜けるのだろうか。
「飲酒後に発生し、頭痛や吐き気の原因となる有害物質アセトアルデヒドは汗をかけば体外に排出されると思われがちですが、汗腺にはアセトアルデヒドやアルコールの排出機能はなく、運動しても脱水症状が進むだけ。二日酔いの時は水分をしっかり摂り、脱水を防ぐのが一番です」(大阪国際大学の井上芳光さん)
A. トイレの回数は増えても発汗量は増えない
暑い時期、水をゴクゴク飲めばそのまま汗がブワッと出るイメージがあるが、それは間違いです、と井上さん。
「汗はあくまで体温が高くなった際に皮膚の表面から水分を蒸発させ、体内の熱を放出するのが役割。体内に水分が過剰に増えても、トイレに行く回数が増えるだけで汗の量が増えるわけではありません。運動前にしっかり水分を摂ることが、脱水症状防止のためにも、汗をちゃんとかけるようになる近道です」(井上さん)
A. 暑くなる前に汗をかき、夏でもうまく体温調節できるようにすること
「暑熱順化は簡単に言うと“カラダを暑さに慣れさせる”こと。本来は梅雨の時期から夏にかけて徐々に気温が高くなるとカラダが自然に順化していきますが、近年のように夏前でも急に猛暑が続いたりすると、カラダが適応できず、熱中症などのリスクが高まります。そこで、涼しい時期から意識的に汗をかいて暑さに慣れようというわけです」(室田さん)
具体的には、カラダが汗ばむ程度の軽めの運動を、個人差はあるが1週間~10日程度続けること。
A. 汗腺の密度は痩せた人より低く、発汗量も変わらない
太った人は脂肪が多く、体内の熱が放散しにくいので体温が上がり、汗を大量にかいたり、汗腺の数も多いイメージがある。だが、必ずしも「汗っかき」とは決めつけられないと井上さん。
「汗をかいて体温調節を行う能動汗腺の数は2歳半頃までに決まり、それは一生変わりません。実際の発汗量は痩せた人と同様。むしろ汗腺の密度は痩せた人よりも低くなります」(井上さん)
A. 女性はキンモクセイに似た匂いの香料が有効
人の皮膚に特定の香りの香料を塗ると、なんと汗の量を調節できるという。突き止めたのは室田さんらによる長崎大学の研究グループである。
「汗を出す皮膚には汗を出さない皮膚よりも多くの匂いを感じ取る受容体が存在することが判明しました。
さらに分析を進めると、人の皮膚にキンモクセイに似た匂いの香料を塗ると、男性は汗が増え女性は汗が減るなど、発汗量が変化することもわかりました。この結果を新たな治療薬の開発につなげる予定です」(室田さん)
A. 適度な運動を続ければ若者と同程度の発汗を維持できる
他のカラダの機能と同じく、汗腺の機能も加齢とともに衰えるのは事実。しかし年齢を経ても汗腺を意識的に使う、つまり運動して汗をかく機会を増やすことで、汗腺の機能は再び蘇ると井上さん。
「効果的なのは、汗をじわっとかく程度の低~中強度の運動。ウォーキングやジョギング、軽めのエクササイズを継続して発汗を習慣化しましょう」(井上さん)
A. 逆に発汗量は少なくなる傾向がある
一年を通じて暑い地域で暮らす人たちは、さぞかし汗も大量にかくのでは…と思いきや、逆に発汗量は日本人よりも少ない傾向がある、と井上さん。
「熱帯地域の人たちの能動汗腺数は寒冷地の出身者よりも多いのですが、だからといって大量に汗をかくと、脱水症状になる危険性が高まる。そのため現地の人々のカラダは、皮膚の血流量を増やして体熱を放散するように順応しています。ちなみに、熱帯地域じゃなくてもずっと暑い場所で過ごすと、3日程度で発汗量が減り、その後は大量の汗をかかなくても体温が上昇しにくくなります」(井上さん)
人間の適応力は侮れないのだ。
取材・文/黒田創 イラストレーション/前田豆コ 取材協力/井上芳光(大阪国際大学人間科学部名誉教授)、室田浩之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授)
初出『Tarzan』No.858・2023年6月8日発売