「足がつる(有痛生筋肉痙攣)」の原因と対処法
連載「コンディショニングのひみつ」。第49回は「足がつる(有痛生筋肉痙攣)」について。どの部位でも起こる可能性があるが、最も多いのが「こむらがえり」の名称でも知られるふくらはぎ。その原因と対処法を学んでいこう。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.856・2023年5月11日発売
つる=筋肉をうまく弛緩できない状態
運動中に突然、足がビキッとつって動けない…といった経験がある人は多いだろう。医学的にもれっきとした名称があり、「有痛性筋痙攣」と呼ばれるこの症状。筋肉が必要以上に硬く収縮して痛みを伴い、うまく弛緩することができない(=ゆるめられない)状態のことを指す。
一般的につりやすい部位としてはふくらはぎが最も多く、「こむらがえり」の名称もよく知られる(こむら=ふくらはぎの意味)。続いて多いのが、足首や足裏、足指といった膝下の下肢。さらに太腿や首、腕のほか、カラダのどの部位においても発生する可能性はあるものだ。
筋肉をつってしまう原因は?
きっかけになる直接の原因としては、急にカラダを動かす、同じ動作を長時間繰り返す、踏ん張り続ける、慣れない動きを急にたくさんやる、といったもの。運動前のウォーミングアップが重要であることは、ここからも十分に理解できるだろう。
そのほかにも、急激な寒暖差や冷え、熱中症が引き金になったり、就寝中に突然、足がつったりすることもある。また、妊娠や加齢によっても発生しやすくなるとされている。
一方、間接的な原因として見逃しやすいのが、ビタミンやミネラルなどの栄養不足によるもの。なかでもマグネシウムは、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温や血圧の調整などに不可欠な栄養素にもかかわらず、日本人はマグネシウムが大幅な不足傾向にあることが分かっている。これが、筋肉の痙攣を引き起こす大きなリスク要因と考えられるのだ。
もうひとつ、体内における水分不足は血中のミネラルバランスが崩れる原因になる。ここに冷えなどの要因が加わると、血液の循環が悪化し、細胞レベルでますますミネラルが不足する悪循環に陥ることに。
そのため汗でミネラルが失われる運動中のこまめな水分補給はもちろん、普段からマグネシウムが豊富なナッツや海藻、大豆製品、魚介類といった食品を積極的に摂るように心掛けたい。
足をつってしまったときの対処法
ここからは、実際に足がつったときの対策を紹介。
まずはゆっくり深く呼吸して、カラダの緊張をゆるめよう。ふくらはぎの場合は、足先を包むように持って足首を背屈(=脛の方向へ曲げる)させ、筋肉の収縮と逆方向へと、手を使ってじわじわ優しく伸ばしていく。
ある程度、動けるようになったら、ふくらはぎの筋肉をゆるめる静的なストレッチを行ってもいい。運動後にも有効だ。
ふくらはぎのストレッチ
片足を後ろに引き、曲げた前脚に体重をかけて膝裏からふくらはぎをストレッチ。踵は無理のない範囲で床に近づける。30秒キープして反対側も。
日常的な予防法
ふくらはぎの張りや硬直をほぐすケアとしてお薦めなのが、フォームローラーを使った筋膜リリースだ。膝下から足首まで、縦に転がしながらイタ気持ちよくほぐしていく。さらにローラーで押さえながら足先をブラブラと振り子のように動かし、筋肉の弾力性を引き出していこう。
フォームローラーを使った筋膜リリース
フォームローラーを縦に転がし、ふくらはぎ全体をマッサージ。さらにローラーを当てたまま足先を揺らし、筋肉を捉えて動かし、ほぐすケアを。
さらに一歩進んだ予防策としては、ふくらはぎの筋トレ・カーフレイズを行うといい。段差を使って筋肉の稼働域を大きくすることで、より強く、柔軟な筋肉を養うことができる。
予防エクササイズ「カーフレイズ」
段差に足先を乗せて立ち、踵を上げ下ろしする。それぞれふくらはぎが最大に伸び縮みしたところで3~5秒キープし、10往復。
復習クイズ
答え:マグネシウム