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成長期のスポーツで発症するオスグッド・シュラッター病

連載「コンディショニングのひみつ」第48回。膝関節の障害と、そのコンディショニングについて解説するシリーズの最終回は「オスグッド・シュラッター病」について。

オスグッド・シュラッター病 コンディショニングのひみつ

成長期のスポーツで発症しやすいオスグッド・シュラッター病

本連載ではここまで、膝関節に発生する障害および、そのコンディショニングについて複数回にわたって紹介してきた。最後に本稿では、「オスグッド・シュラッター病」について解説していこう。

あまり聞き慣れない病名かもしれないが、成長期にスポーツを活発に行ったときに多く発症する、膝のオーバーユースによる代表的なスポーツ障害だ。20世紀初頭、アメリカの整形外科医・オスグッドスイスの外科医・シュラッターがそれぞれ確認した症例を同時期に発表し、この名称が付けられている。

スポーツ全般において発症するが、特に多い要因としては、バレーボールバスケットボールなどのジャンプ動作における膝の屈伸動作、陸上競技のスタートダッシュサッカーでのキック動作などが挙げられる。

オスグッド・シュラッター病はなぜ起こる?

ここで大きく影響するのが、太腿の前側にある大腿四頭筋の働きだ。骨盤から始まり、膝蓋骨を経由して脛骨の上部(より具体的には脛骨粗面)に付着するこの大きな筋群には、股関節の屈曲・膝関節の伸展という2つの大きな作用がある。

つまり機能解剖学的に見ると、下肢を使った運動を行う場合は常に、大腿四頭筋が生み出す力が最終的に脛骨粗面へ伝わるともいえる。ところが脛骨粗面の範囲はごく狭く、大腿四頭筋の引っ張る力が過度に働くと物理的な刺激となりやすい。

オスグッド・シュラッター病

大腿四頭筋の腱は膝蓋骨を経由して脛の上部(脛骨粗面)に付着するが、筋が引っ張る力によって成長期の軟骨部に過度な負荷がかかることで、痛みや炎症が発生する。

なかでも身長が伸びる10~15歳頃は骨も急激に成長するが、これを取り巻く筋肉や腱といった軟部組織の成長が追いつかない傾向にある。

このように筋肉の強度と柔軟性がない状況で前述のようなスポーツ動作を繰り返すと、大人に比べて柔らかい脛骨粗面(結節)にはより大きな負担となる。その結果、成長軟骨部の結節部位が徐々に突出して痛み、場合によっては炎症や熱感といった症状が表れるのだ。

予防・改善には股関節にフォーカスしたスクワット

対処法としてまず推奨されるのは、当該のスポーツ活動を控えること。カラダが成長を終えると多くは治癒するものの、我慢して運動を続けると成人後に後遺症となってしまう場合もあるため、油断は禁物だ。

また、オスグッド・シュラッター病をはじめとした膝の障害で多く見られるのは、大腿四頭筋の起始部にあたる股関節がうまく使えず、そのぶん膝に過度な負担がかかっているケース

そこで予防と改善の下肢トレーニングとして行いたいのが、股関節にフォーカスしたスクワットだ。尻を大きく後ろに引く動作で臀筋群が効率よく鍛えられ、バランスよく股関節を使えるようになる。

トレーニング① 股関節フォーカスのスクワット

オスグッド・シュラッター病

足は腰幅で、膝と爪先を軽く開いて立つ。尻を後ろへ引きながらしゃがみ、へそが前に倒れるイメージで立ち上がる。20回。

ある程度、股関節の動きが改善したら、続いてはこれに手でリードする動きをプラスしたスクワットに移行しよう。

手をさまざまな方向へ、遠くにリーチさせるようにしながら尻を突き出して行うことで、股関節の三次元的な動きが引き出され、失いがちな膝との協調性がより高められる。

成長期の子供だけに限らず、膝に違和感を抱える大人にも、ぜひ試してほしいスクワットなのだ。

トレーニング② 手でリードするスクワット

オスグッド・シュラッター病

①のポジションで上向きの両手を前に伸ばし、尻を引いて手をさらに遠くへ伸ばしながらスクワット。続いて右、左へと手でリードする方向を変えながら15セット行う。

復習クイズ

大腿四頭筋の停止部となる部位は次のうちどれ? 脛骨粗面 臀筋粗面 大転子

答え:脛骨粗面

取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)

初出『Tarzan』No.855・2023年4月20日発売

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