膝の内側からの衝撃で起こる、膝外側側副靱帯(LCL)損傷
連載「コンディショニングのひみつ」第47回。膝関節の障害と、そのコンディショニングについて解説するシリーズの8回目は「膝外側側副靱帯(LCL)損傷」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.854・2023年4月6日発売
膝の内側から強い力が加わることで靱帯が損傷
膝関節には4本の主要な靱帯があり、各方向にかかる力に抵抗して関節の安定性を保つ役割を担っている。
このうち、膝蓋骨(膝のお皿)の外側を通って大腿骨と脛骨をつなぐのが膝外側側副靱帯(LCL)。膝関節の内側から外方向へと強い衝撃が加わる、膝下を内側に強くひねるなどでこれが損傷したり、断裂したりするのが膝外側側副靱帯損傷だ。
ただし膝の内側から力がかかるケース自体はそれほど多くはなく、LCL損傷の発生頻度もほかの靱帯に比べて少ない。
原因で多く見られるのは、交通事故などの不慮の事故。例えばオートバイ乗車中の接触事故では、脚の内側にある車体に押されるような形で衝撃ストレスが外側の靱帯に加わることで発生する。
またスポーツでは例えばラグビーで膝の内側からタックルを受ける、柔道で膝下に内側から足払いされるといったシーンにも原因がよく見られる。
膝外側側副靱帯(LCL)損傷の症状
症状としては、膝の外側の強い痛みや腫れ、曲げ伸ばしの運動制限、膝が抜けるような不安定感を伴うこともある。
その程度は3段階で評価され、重症度が高いⅢ度では手術に至る場合もあるが、LCLの単独損傷であれば膝の固定をともなう保存療法が選択されることも多い。
そのうえで、LCLへの負荷を軽減する筋力トレーニングが有効となるのだ。以下に具体的な方法を説明しよう。
改善トレ① 外側広筋の強化トレーニング
椅子の前の方に座る。片脚の膝を90度以上に曲げて爪先を内側に向け、そのまま180度まで伸ばして繰り返す。1セット20回。
太腿の外側から脛の前面につながる外側広筋は、膝関節の伸展動作に関わる大腿四頭筋のうちのひとつ。膝蓋骨の安定にも大きく関わり、膝を外側から支えるこの筋肉を強化して、関節の内側から加わる力にも耐えられるようにするのが狙いだ。
外側広筋は特に、足先を内側にねじった状態で膝関節を20~35度ほど曲げたところから伸展させると、より効果的に鍛えられる。
これを応用した「レッグエクステンション」を行うときは、椅子の前端に座り、スタートポジションでは膝を90度より深く曲げておく。これによって外側広筋の可動域が広がり、トレーニング効果がさらに高まるのだ。
受傷後はまず自体重だけで可動域の訓練を行い、やがて回復に応じて足首に巻くタイプのウェイトを徐々に追加するといい。重さは20回1セットをギリギリできる程度が目安だ。
改善トレ② 下肢の協調性トレーニング
足は腰幅で立ち、片足を後ろに引いて踵を上げる。両手のひらを上向きで前に伸ばし、そのまま腰を落としながら上体を曲げた脚のほうへねじる。1セット20回繰り返す。
強化したい脚の外側に加重しながら「スプリットスクワット」のように膝の曲げ伸ばしを行うことで、股関節と足首までが連動した、膝関節に負担のない動きを実現させる。
最大のポイントは、前に伸ばした手でリードするように上体にねじりを加えて腰を落とすこと。この動きとともに外側広筋を使いながら重心を移動させることがバランスの訓練にもなり、スムーズな膝の動きに必要な下肢全体の協調性をもたらす。
①②は並行して行い、いずれも受傷した側の脚は2~3セット行うといい。また左右のバランスや協調性を高めるうえでは、反対側の脚も1セットは行っておくとベストだろう。
復習クイズ
答え:外側広筋