災害時に無事に徒歩帰宅するための「防災リュックの中身」
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「防災リュックの中身」。
edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。
初出『Tarzan』No.856・2023年5月11日発売
防災リュックは自分の力量に合わせて整えよう
徒歩帰宅の明暗を分けるのは脚力ではなく、防災リュック。個人でオフィスに用意している人は少ないかもしれないが、あるとなしでは大違いだ。想定される距離や地形、自分の力量に合わせて、オリジナルの装備を整えよう。
避難先での滞在を目的とした自宅用防災セットとの違いは、安全に移動することに重点を置いたアイテムを揃える点だ。そのため、過度な水や食料は持たない。
両手をフリーにし、落下物などから身を守って安全に歩ける格好に、最低限の水と行動食。そして、ケガなどに対応できる救急キット。服や電池など予備の装備も忘れてはならない。
今回、下で紹介するのは、あくまでも最低限のもの。何でもリュックに詰め込めれば安心だが、重量が増すばかりで歩きにくい。あらゆる状況を生き抜くターザンマンならば、最小の装備で最大の効果を得るという心構えも忘れてはならない。
① 防災リュックは登山用がベスト
災害時の道は平坦とは限らない。重さ数kgにもなる荷物を背負い、瓦礫の山を乗り越えていくには、登山用のリュックが最適だ。カラダに密着して背負いやすくフラつかないし、必要なものをすぐに取り出せるポケットは災害時にも重宝する。
容量は登山でも定番の30L程度が理想。今回紹介するものを入れても少し余裕がある程度がちょうどいい。
② 身に着けるもの
ガラスや看板などの落下物、火災の炎、足元の瓦礫…。災害時の道は危険で溢れている。徒歩帰宅をする際には、そうした危険から身を守る装備が最も大切だ。
また、夜だけでなく、停電に備えてヘッドランプは昼間でも必須。さらに、ホイッスルはすぐ手に取れるところに。長距離になるなら、歩きやすく頑丈なスニーカーやブーツも備えよう。
- 雨具(セパレートのもの)
- ヘルメット
- 防災頭巾手袋
- ヘッドランプ
- ホイッスル
- 地図
③ 救急キット
ガラスによる切り傷や釘の踏み抜きなど、ケガのリスクがいつもよりグンと高まるのが災害時。その場で応急処置をするための救急キットは必ず用意したい。
とはいえ、大量に持つ必要はない。大型のバンダナ一枚あれば止血帯にもなり、骨折時の腕吊りにもなるように、2つ以上の機能を兼ねられるアイテムを持つのが軽量化のコツだ。
- 絆創膏
- 消毒液
- 脱脂綿
- 大型のバンダナ
- 包帯
- 痛み止め
- 化膿止め(錠剤と塗り薬)
- 綿棒
- ピンセット
- 十徳ナイフ
- 安全ピン2〜3本
- 常備薬
④ 予備の服や電池
雨に濡れてしまったときに乾いた服に着替えなければ低体温症の可能性も。予備の下着類は必須だ。また、現代においてスマートフォンは生命線。乾電池で充電できるタイプがあると、より多くのシチュエーションに対応できる。
現金はレジが使えない停電時にも使えるため、お札だけでなく小銭も用意しておこう。ゴミ袋は防寒にも役立つ。
- 防寒着
- 予備の下着類
- モバイルバッテリー(もしくは電池式の充電器)
- 予備電池
- ゴミ袋(45〜50Lを数枚)
- 現金1〜2万円
- エマージェンシーシート
- 細引き(ひも)3m×3本
⑤ 食料類
まず最重要は飲み水。災害時には3日分以上を備えることが理想とされるが、あくまでも帰宅するために必要な量に限定する。
食料も、自宅まで辿り着けるだけの分があれば十分だ。お湯を沸かせる金属製のキャンティーンカップや固形燃料(もちろんライターも忘れずに)があれば、暖を取ったり、煮沸消毒をすることができるので安心だ。
- 飲料水最低1日分(1〜1.5L/男性の場合)
- キャンティーンカップ
- 固形燃料
- 行動食(飴やチョコレートなど)