ロープワークの実用性と応用力を上げる「本結び」と「プルージック・ノット」
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「 つなぐ、吊るす、 先人の知恵」。
edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。
初出『Tarzan』No.848・2023年1月4日発売
危機を生き抜くために本当に必要なロープワークは、とてもシンプルだ。前回までに紹介した「ふた結び」と「8の字結び」だけでも、布で最低限の屋根を作り、ビルの上階から脱出することまでできる。
そこに今回紹介する「本結び」と「プルージック・ノット」を加えれば、実用性と応用力が格段にアップする。
① 本結び(Square knot)
まず、「本結び」。歴史は古く、新石器時代からとされており、近代でも帯やエプロンを結ぶ際に用いられる、生活に密着した結び方だ。
特徴は、ロープの末端同士をつなぐこと。1本のロープで輪を作ったり、2本のロープを連結することができる。
「本結び」の結び方
日本では、もっともポピュラーな結びの一つと言っても過言ではない本結び。非常に似た結びに固結びがあり、間違えると解けにくくなってしまうため、覚えやすいように上の結び方を推奨する。
解けやすいので末端を長めに残すのが結び方のコツ。解くときには、どちらかの末端と元紐を持ち、一本に伸ばすように引っ張ると簡単に解ける。
② プルージック・ノット(Prusik knot)
そして、本結びによって可能になるのが「プルージック」だ。固定と移動が自在にできる信頼性の高い結び方で、本来の用途はクライミング。
木や岩に固定したクライミングロープに対して結び付け、カラビナを介してクライマーのハーネスと連結。すると、誤って手を離してしまっても結び目がロックし、落下を防いでくれる。
一方、プルージックの結び目を持って動かせば自在に動くため、崖を上り下りする際の安全確保に用いられてきた。キャンプやサバイバル下では、タープやランタンなどを吊るすために役立ってくれる。
「プルージック・ノット」の結び方
オーストリアの登山家、カール・プルージックが発明したといわれる結び方で、フリクションノット(巻き付け結び)の代表格。
結び付ける先のロープよりも細い紐をプルージックに用いることで、太さの差による摩擦抵抗が生まれ、しっかりと固定することができる。ロックの利きが悪いときには、巻き付ける回数を増やすといい。
さて、3回にわたって紹介してきたロープワークは、どれも覚えやすく、実用的で、応用が利くもの。組み合わせは無限大。自分だけのアイデアを実現してみよう。
シンプルだからこそ用途は幅広い
これまでに紹介したロープワークを使うと、こんなシェルターを構築できる。
まず、2本のロープを本結びで連結。それを2本の木の間に、片側をふた結びで、反対側をふた結びを応用した自在結びでピンと張る。そこへプルージックをふたつ結び付け、それぞれをタープと連結。
タープの長辺が張るようにプルージックを移動すれば、Aフレーム型の基本的なシェルターの完成だ。