サバイバル時に確実に着火させる。火おこしの方法 を学ぶ
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「火おこしの方法」。
edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。
初出『Tarzan』No.840・2022年8月25日発売
一度の着火で確実に火をおこす
サバイバルにおける火おこしで重要なのは、確実性だ。マッチやライターなどの種火には限りがあるから、なるべく一度の着火で確実に火をおこしたい。そのためには、事前の準備が何よりも大事だ。
まず用意するのは3種類の燃料(樹木やガレキ)。
火おこしに必要なものは3種類
① 火口(ほくち):よく乾いた杉や松の枯れ葉や樹皮、新聞紙など
② 焚きつけ:これは3サイズあるといい。鉛筆の芯ほどの小枝から、小指〜親指サイズ、それより太いもの
③ 薪:主燃料。長く燃えるように太い方がいい
頭に入れておくべきは、火はいきなり大きく燃えないということ。火口→焚きつけ→薪と徐々に火を移し、少しずつ大きく育てていくものなのだ。
慣れないうちは、火口をたっぷりと用意しておくのがコツ。30秒〜1分間燃えてくれる量があれば、焚きつけへの移行は確実性が増す。
親指サイズ以上の焚きつけを燃やすことができれば、次第に火床には熾(おき)が溜まり始める。赤熱した炭のようなもので、熱量が高く、長く燃える。
この状態になれば主燃料となる薪にも火がつき始め、火の維持に神経質になる必要もない。火おこし完了だ。
これが一連の流れとなるが、最後に何よりも重要なこと。それは、種火の存在だ。きりもみ式など原始的な方法もあるが、現実的にはマッチやライター頼みとなる。常に携帯し、複数箇所に分散して常備しておくことで、いざというときに備えよう。
火おこしお3つのテクニック
テクニック① 身の回りにある良質な火口を見逃すな
良質な火口とは、カサカサ&ホワホワしているもの。つまり、よく乾いていて軽いものがいい。
掃除機の中に溜まっている埃や、ジーンズのポケットの中の綿埃。川岸に打ち上げられた乾いた水草など、身の回りを探せば、火口になるものは意外と多い。
また、緊急時には油も有効だ。軽油をボロ布に染み込ませれば、太めの焚きつけもすぐ燃えてくれる。
火口になる身近なもの
- ダクトテープ(布テープ)
- 掃除機の中の綿埃
- 除光液
- 牛乳パック
- 新聞紙
- ろうそく
- ポテトチップス …etc.
テクニック② ティピー型に組めば素早い着火が可能
最も効率的な火おこしの方法のひとつがティピー型。
やり方は簡単で、下から火口→焚きつけ→薪の順番に組み、それから火をつける。炎は上に立ち上がるため、熱を無駄にせず、短時間で火をおこすことができる。
一度着火すれば自然と薪まで燃えてくれるため、手を加える必要はない。寝床の準備や食材のカットなど、他の作業を進めておこう。
テクニック③ 紙類はねじって丸めると長持ち
街中では紙が一番身近な火口だ。なかでも新聞紙は油分も含むので都合がいい。
ただし、すぐに燃え尽きてしまうため、単に火をつけるだけでは焚きつけに火を移すのは困難。そこでひと工夫。ねじって丸めてやると、持続時間は格段にアップする。コツは、潰しすぎず、ほどよく空気を含ませること。
最後に片側を結べば導火線のように使える。