燃焼に必要な3要素を正しく学ぶ。「生きるための焚き火」
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「生きるための焚き火」。
edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。
初出『Tarzan』No.838・2022年7月21日発売
焚き火は命を繫ぐための手段
ヒトは、火を扱う唯一の生き物だ。
約50万年前、自力で火を起こし、生活の一部として火を操れるようになったことで、文化レベルは飛躍的に向上した。いま、僕らが揺らめく炎に癒やしを感じるのは、そんな人類の歩みと密接な関係があるに違いない。
しかし、サバイバルにおける焚き火の目的は、もちろん観賞ではない。太古の人類と同じく、明日に命を繫ぐための手段である。
まず、もっとも重要な役割が「暖房」だ。温暖な季節であっても、夜には冷え込むこともある。そんなとき、体温の低下を防ぎ、安全に一夜を過ごすには、火を起こして暖を取るのが得策だ。都市部においても災害などで電気やガスが止まっている状況では、迷わず焚き火を囲むべし。
「照明」としても重宝する。現代的なLEDライトに比べれば心許ないが、高く上がった炎は、簡単な作業をするには十分な明るさで手元を照らしてくれる。
そして「調理」をすることもできる。煮る・焼くが可能になると、食べられる食材の種類も増えるし、もちろん、飲み水を確保するのにも欠かせない。
ほかにも、のろしを上げて助けを求める「通信」など、一口に焚き火といってもさまざまな役割がある。
それが、サバイバルで役立つ“生きるための焚き火”だ。キャンプなどレジャーで焚き火をする際にも、少し意識しながら薪をくべてみよう。いつもとは違う気付きがあるはずだ。
焚き火の2つのテクニック
テクニック① 物が燃えるにはこの3要素が必要だ
火は化学反応である。これを理解すれば、火起こしは難しくない。
ポイントは、薪自体が燃えるのではなく、薪から出る可燃性のガスが燃えるということ。可燃性のガスは、薪が熱せられることで発生し、250度以上に達すると空気中の酸素と結びついて燃焼する。
「燃料」「熱」「酸素」のどれかが欠けると火は起きないし、たとえ勢いのあった焚き火でも鎮火してしまうのだ。この燃焼の3要素を正しく理解することが、焚き火マスターへの第一歩だ。
テクニック② かまどを作れば、焚き火は難しくない
火を自在に扱うには、かまどを組むといい。石をコの字に積むだけだから簡単だ。
メリットは、石が蓄熱し、反射するため、かまどの外に熱を逃がしにくいこと。そして、開口部から風を取り込むことで燃焼効率が高まり、よく燃えてくれる。
強風時には開口部を風下に向ければ風除けも可能。さらに調理器具を置く五徳にもなり、火との適切な距離を保つことで、弱火から強火まで自由自在だ。
まずはスタンダードに開口部を風上へ向けて組んでみよう。