シンプルかつ強固なロープワーク「8の字結び」の活用テク
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「輪の可能性は無限大」。
edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。
初出『Tarzan』No.846・2022年11月24日発売
命を預けられる8の字結び
危機を生き抜くための必須スキルであるロープワーク。たった4種類だけ覚えておけば、生存確率は格段にアップする。今回はその2つ目「8の字結び」を紹介しよう。
8の字結び(Eight Knot)
- 二重にした先端を元紐に下から掛け、上側に持ってくる
- 1.でできたループに先端をしたから上へ通し、元紐と先端を引き締めていく
- 二重にした紐は一本ずつ引いていくと結び目がきれいな8の字になりやすい
単純だが、非常に強固で信頼性が高い(ほどけにくい)ロープワークで、一度結べば輪の大きさは変わらない。
正確には「二重8の字結び」といい、2本分を一つの結びにするから“二重”。結び方は2通りあり、サバイバルでは図の紐を二重にしてから輪を作る“オン・ア・バイト”だけ覚えれば十分に活用可能。登山では“フォロースルー”も必須となる。
作り方を見れば分かる通り、結び方は極めてシンプル。しかし侮るなかれ。もともとは山を登るために生み出されたもので、クライミングロープを使って安全確保を行う際、ハーネスとロープを接続するために用いられている結び方だ。
その信頼性の高さは、文字通り命を預けられるほど高い(言うまでもなく、耐荷重の高いクライミングロープを使うことは大前提)。登山における最も重要な基本スキルのひとつといわれている。
サバイバルにおける8の字結びとは、いわば「ほどけにくい強固な輪」。これを使いこなせるようになると、できることは格段に飛躍する。
登山の命綱としての役割はもちろん、ランタンを吊るしたり、ポールを固定したり。また、一本のロープに何個も輪を作れば、はしごのように使うこともできるし、輪を滑車の代わりとして用いることで、小さな力で重いものを上げ下げすることだって可能になる。
最後に一緒に覚えておきたいのが、ロープ強度のハナシ。“どれだけ頑丈なロープでも、結び目を作れば、その部分の強度は低下する”ということだ。
8の字結びも例外ではなく、時に命を預ける重要な結びだからこそ、ロープが無駄にねじれたりしないように心掛ける必要がある。高所で命綱的に用いるのならば、たとえお試しでも、必ずクライミングロープの規格に適合したものを使うべし。危険を予測し、安全に配慮できてこそ、立派な“ターザンマン”だ。
テクニック① 連続して結べば高所から下りられる
ロープワークは、考え方次第でどんなものでも作れる。それを体現しているのが、この使い方。強度が高いことを利用し、一本の長いロープに何度も8の字結びを作れば、はしごの代わりになるのだ。
地震や火災で高所に取り残されたときに役立つ可能性がある。また、一人で動かせない重いものも、これを結びつけ、複数人で引っ張れば、強い力を生み出せる。
テクニック② タープを張る際の基本スキル
8の字結びは、キャンプでタープを張るときにも役立つ。通常、メインポールには安定性を持たせるために二股のロープを用いるが、一本の紐を半分に折り、その先端に8の字結びを施すことで作れる。
最も単純なひと結びでも輪は作れるが、固く引き締まって、ほどけなくなる可能性がある。その点、8の字結びは力が掛かってもほどきやすいので有利だ。