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連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「生き延びる人の薪の組み方、燃やし方」。
目次
焚き火をしたことがあればわかるだろうが、思い通りに薪を燃やすのは案外難しい。ましてや、薪が湿っていたり資源が限られていたりするサバイバル環境であれば尚更だ。
大量に薪を燃やせば楽に暖は取れるが、それでは、朝を迎える前に燃え尽きてしまうだろう。目的に合わせた効率的な薪の組み方、燃やし方を知っているか否かが、時に生死を分ける。
本連載のvo l.3(TarzanWeb記事:燃焼に必要な3要素を正しく学ぶ。「生きるための焚き火」)では、焚き火の役割には照明、調理、暖房があることを紹介した。
今回は、それぞれに適した焚き火の方法を4つ紹介するが、そもそも、これらを使い分けるには、焚き火にはふたつの状態があることを知っておく必要がある。
それが、炎を上げて燃えている状態と、赤熱した熾火(おきび)の状態だ。
前者は明るく勢いがあるが、持続時間が短い。後者は木炭のように安定した火力で長く燃える。薪の組み方を工夫するのは、この性質を使い分けるため。そうすれば、消費する薪も最小限で済むというわけだ。
ここで紹介する組み方、燃やし方は基本中の基本だが、人類が脈々と受け継ぎ、今でもアウトドアマンたちに愛用されている確かな方法だ。これらを実践し、焚き火を自在にコントロールすることができれば、君も立派な上級者。もう、どんなシチュエーションでも怖くない!?
暗闇で作業をするためには、大きな炎を上げて、周りを照らしてやればよい。そのために最も適しているのが、このティピー型だ。
組み方は、薪を縦にし、円錐形になるように並べていくだけ。炎は上へと燃えるが、それは薪から出る可燃性のガスが空気より軽いから。加えて熱による上昇気流によって大きな炎を作ることができる。
より明るく、大きく燃やしたいのなら、内側にたっぷりの熾火や火の点いた太い薪があると効率が良い。
薪の消費スピードは早いが、素早く熾火を作りたいときにも有効で、ティピー型で燃やした明かりで食材を切り、できた熾火で調理すればスマート。
熾火とは、薪が炭化して黒くなり、芯から真っ赤に燃えている状態のこと。炎は上がらないがとても高温で、しかも長く燃えてくれる。これがあると焚き火も簡単には消えず、太い薪も燃えてくれるようになる。
この熾火は、調理にも適している。
まず、煙が少なく、火力が安定していること。風で揺れる炎だとムラができやすいが、熾火なら満遍なく調理器具を熱することができる。何より、五徳がなくても鍋などを安定して乗せることができるのは利点だ。
たくさんの熾火を1か所に集めれば火力を強く、散らせば弱火にと、火力調節も簡単。あとは食事を楽しむだけだ。
2本の丸太を平行に置き、その間で焚き火をするシンプルなスタイル。非常にシンプルだが、丸太が壁となって熱が逃げず、丸太自身も燃えることで、安定した焚き火が可能だ。
火を強くしたいなら丸太同士を近づけて熱がたまりやすくし、弱めたいなら離すことで火力もコントロールできる。
暖房として優秀なのが大きなメリットで、ティピー型よりも幅広い面積が燃えるロングファイヤー型は、横になって寝たときにも広い範囲を暖めてくれる。
ちなみに、本連載vol.1(TarzanWeb記事:布一枚で夜を明かす。「ダイヤモンド型」シェルターの張り方)で紹介したダイヤモンド型に張ったタープの下でこの形を組めば、効率よくタープ内を暖めることが可能だ。
レジャーとしてのキャンプであれば、寝るときには消火するのがお約束。しかし、生死に関わる状況では別だ。せっかく火を起こしたのに寝ている間に消えてしまっては、あまりにもったいない。
そんなときは、ロングファイヤー型に1本丸太を足して、わざと酸欠状態を作り出す。隙間なく組むほど薪が燃えるスピードがゆっくりになり、翌朝まで火を保つことができるのだ。
起床後には薪を足し、空気を送ってやればすぐに焚き火を始めることができるってわけ。隙間が空きすぎていると空気を取り込んでどんどん燃えてしまうので、薪が動かないよう注意。石などで固定するとより安心だ。
edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。
初出『Tarzan』No.842・2022年9月22日発売