災害時にスマホなしで“自分の位置を知る”3つのテクニック
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「自分の位置を知る」。
edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。
初出『Tarzan』No.850・2023年2月9日発売
スマホが使えない環境で自宅に帰れるか?
想像してみよう。外出先で巨大地震が起きたとして、キミはスマートフォンを使わず、自宅へ帰ることができるだろうか?
いつ起きてもおかしくないといわれる首都直下地震では、電波障害や停電が発生する可能性が高く、防災の観点からは、スマホは使えない前提で備えておく必要がある。そこでターザンマンに求められるのが、己の位置を知り、進むべき道を見つけ出す地図読みのスキルなのだ。
必要なものは、時計と紙の地図。コンパスがなくとも、2ステップでおおまかに状況を把握することが可能だ。まずすべきことは、時計と太陽から北の方角を導き出すこと。
そして、持っている地図の北を実際の北へ向けること。すると、周辺の地形や建物などから現在地と目的地の方向を知ることができる。安全なルートが確認できたら歩き出そう。都市部の場合には目印になるものが多く、登山に求められるほどの高度な地図読みスキルは必要ないから、普段から練習しておくといい。
ちなみに、もしスマホが使える場合でも、その後、停電や電力不足によって充電ができなくなる可能性もある。貴重なバッテリーは家族の生存確認や情報収集に使うべきで、電力消費が激しいGPSなどの使用はなるべく控えたい。
何より大切なのは、日頃から防災を意識して歩き、方向感覚を養っておくこと。スマホに頼らず、生き抜く力を身につけよう。
① 防災リュックには必ず地図を入れておく
災害時には、スマホの地図やナビゲーションの利用が困難になる可能性が高く、それらに頼らない道しるべが必要だ。そんな時に頼りになるのが紙の地図。できれば常に携帯を。
一時待機の際の支援施設や緊急時の対応マニュアルなどが掲載された「帰宅支援マップ」は重宝する。防災リュックに必ず一冊、準備しておこう。
また、それだけで安心せず、通勤先などよく行く場所の周辺にある危険箇所を定期的にチェックし、帰宅ルートをシミュレーションしておくことも大切だ。
② 時計と太陽から方角を知る
時計は、時刻がズレていなければ何でもよい。まず、時計を水平に持ち、短針を太陽の方向に合わせる。すると、文字盤上の「12」の位置(長針ではない)と短針のちょうど真ん中が南となり、その真反対が北となる。
上のイラストは、午前8時の場合。また、太陽は1時間に15度ずつ東から西に進み、正午には真南となることも覚えておこう。
③ “正置”によって道は開かれる
正置(せいち)とは、地図の向きを現実の方角に合わせること。本来、登山では正確性が求められるが、都市部においては、おおまかでも十分に機能する。
やり方は、まず地図を水平に持ち、北を実際の北へ向ける(地図は北を上にして表される)。そして周りを見渡し、目印となる建物を地図上に見つければ、大体の現在地を割り出すことができるはずだ。