災害時、安全に帰宅するための事前準備。“危険箇所を読み解く”3つのテク
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「危険箇所を読み解く」。
edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。
初出『Tarzan』No.852・2023年3月9日発売
自宅や職場の周辺を歩いて確認しておこう
災害時、無事に生き残れたとして、目の前に広がるのは、様変わりした街の姿かもしれない。交通機関の麻痺、建物の倒壊。窓ガラスは道に散乱し、水没した道が川となって行く手を阻む。
そんな時、どうやってリスクが少ない道を選び、無事に家に帰り着けるか。今回は、地図や実際の街から危険箇所を読み解く方法を紹介する。
まずチェックすべきは防災の基本、ハザードマップだ。災害発生時の危険箇所や避難場所などの有益な情報を地図にまとめたもので、危険レベルによって色分けがされているため、一目で危ない場所を把握できる。
そして地図を持ち、まずは自宅や職場の周辺を歩きながら、より細かな危険箇所をチェックしていく。その代表例が下の表だ。すると、自ずとリスクの少ないルートを導き出せる。
用水路・側溝 | 普段は脅威を感じない場所にも注意が必要。用水路や側溝など水が少ない場所でも、水害時にはあっという間に増水・氾濫となり、周囲を危険にさらしてしまう。 |
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工場や飲食店密集地 | 火や可燃性の物質を扱う工場や繁華街等の飲食店が密集しているエリアは災害時に火災が発生する可能性が高い。避難ルートが被る際には、なるべく避けておきたい。 |
ブロック塀 | 意外な落とし穴なのがブロック塀。基準を満たす鉄骨が入っていないものや、古いとただブロックを積んだだけのものも未だに多く存在し、地震の際には道を塞ぐ原因に。 |
ビルの多い通り | 近年ビル自体の耐震性は上がっており、建物が倒壊するようなリスクは低いとされる。ただし窓ガラスが割れ、破片が上から降ってくるといった危険にも目を向けたい。 |
古い建物・大きな看板 | 築数十年〜100年を超える古い木造家屋は、住宅街に意外と多い。倒壊に注意が必要だ。また、頭上に吊るされた大きな看板も落下の危険があるためチェックすべし。 |
周囲より低い場所 | 谷になっている場所やアンダーパスなど、周囲より低い場所は、ゲリラ豪雨や台風による大雨時の冠水に注意。車両が水没するなどの重大な事故にも繫がりかねない。 |
小さな河川・小川 | 現在地で雨が少なくても上流で降った雨により急に増水することもある。川沿いの道路や橋などには近づかないのがベストだ。冠水・浸水の危険がある箇所は特に注意。 |
マンホール | 身近なものの中では、こちらも危険要因のひとつ。水害の際には間欠泉のように噴き上がったり、落とし穴のようになることも。死亡例もあるため、油断ならない。 |
崖 | 地すべりや土石流、崖崩れなど、土砂災害が起こりうる傾斜地は、その大小にかかわらずなるべく避けるのが吉。完全に塞がれて通れず、迂回するはめになりがちだ。 |
狭い道や袋小路 | 避難ルートを考える際、近道だからと狭い道を選択するのはとても危ない。人の密集、建物の倒壊などの可能性がある。出口のない袋小路も、迷い込むと厄介だ。 |
職場や自宅から避難所へ、そして職場から自宅へ。なるべく複数のルートを見つけておくといい。
最後に最も重要なこと。それは、完成したルートを実際に歩いてみることだ。その際には、防災グッズを背負っていくこともオススメしたい。重さが負担になりすぎないか、装備に過不足はないか。周りの風景を覚え、もっと良い道があればブラッシュアップすることもできる。
いつ起こるともしれない大規模災害。その備えは特別じゃない。やるかやらないかだ。
危険箇所を読み解く3つのテクニック
テクニック① 自分だけの防災マップを作る
防災意識を高めるためには、自分だけの防災マップを作ることが有効。
自宅や職場周辺の地図に、自治体が配布しているハザードマップや防災冊子から得た情報を書き込み、さらに自分の目で見た情報を重ね合わせる。家族や職場で共有し、定期的に更新することも忘れずに。
テクニック② 帰宅支援マップは必携のアイテム
首都圏においては帰宅困難者が歩いて帰ることを想定し、あらゆる情報を集約した帰宅支援マップが有効。
勤務先や外出先から主要な場所への帰宅ルートや、一時滞在施設や支援施設の位置を示すほか、危険箇所や水・トイレなどの情報までが細かく収録されている。防災リュックやいつものカバンに一冊は入れておこう。
テクニック③ 帰宅困難者の定義って?
自宅までの距離が10km以内の人は「帰宅可能」。10〜20kmでは、距離が1km長くなるごとに帰宅困難となる割合が10%増加。20km以上で「帰宅困難」とされる。ただし、二次災害の危険から、近距離でもむやみに移動を開始しないことが大前提。
帰宅は自分の体調や体力と相談し、時には命を守るために必要な支援を頼ろう。