新年度への変わり目に。ストレスに強い「中庸な体」とは?(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回はテーマは「ストレスに負けないカラダづくりの考え方」について。
新年度への変わり目。環境が変わったり新たな目標を設定したりして、エネルギーに満ち溢れている方が多いのではないでしょうか。
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
春のポジティブなストレス
さて、この何かに取り組もうとするエネルギーは多くの場合、ポジティブなストレスとして私たちのカラダに働きかけます。
交感神経系が活性化され、心拍数や呼吸数が上昇し、血圧が上昇するなどの反応が起こります。これらの反応は、カラダを危険から守るための生理的反応であり、必要な状況下では有益です。
春のウキウキは私たちを強くするというわけです。
長期的なストレスの影響
一方で、ストレスというワードにはネガティブなイメージの方が色濃いものです。
長期的なストレスは、ストレス反応が持続する状態であるため、カラダの様々な機能に深刻な影響を与えます。長期的なストレスは、心血管系、免疫系、消化系、生殖系など、多くの生理学的系に悪影響を与えることが知られています。
また、長期的なストレスは、カラダの神経系にも影響を与え、うつ病、不安障害、睡眠障害などの精神的症状を引き起こすことがあります。
体質によってストレスの影響は異なる
ウキウキがいつの間にかしんどいに代わってしまう経験は誰しもありながら、その境目は気が付きにくいもの。そしてカラダへの影響の仕方も体質によって違いがあります。
漢方の目線で実証と呼ばれる体質の方は、見た目は丈夫です。しんどいながらも無理が通るカラダなので日常をやりくりすることができます。ですが大病でパタッと倒れてしまうなんていうことも。
一方で虚証と呼ばれる体質の方は頻繁に体調を崩します。大病は避けられますが、日常に支障をきたし、それがまた新たなストレスを呼んでしまうこともあるでしょう。
ご自身はどちらの体質に近いと感じられましたか?
できるならストレスに強いカラダになりたいものですが、実でも虚でもない理想の体質とは、一体どんなものなのでしょうか。
理想的な体質とは
専門的な言い方で中庸(ちゅうよう)と呼ばれるのが理想的な体質です。
疲れれば当然休まなければいけないし、時に風邪もひきます。でも回復力があります。よく眠り、そして風邪をひいても長引かないし、むしろ風邪から回復するときに様々な不調を風邪と一緒にリセットしてしまうのがこの体質です。
ストレスに対して強いというのは、こうした回復力を備えた体質のことです。
中庸体質へ近づくためには?
① 実証体質の場合
実証体質の方が中庸に近づくためには、瀉法といって余計なものを除いていく体質改善方法が合います。便秘の方はちゃんと出るように、気が昂る場合は出口を作ってめぐりを良くする、などの方法です。
② 虚証体質の場合
虚証体質なら補法です。栄養バランスのいい食事をすることはもちろん、胃腸の疲れを感じるならその時はあえて食事をとらずに、消化にかかるエネルギーを温存して体力の回復にあてることも有効です。
自分の意識で補瀉をコントロールすることもあれば、無意識下でこれを助けてくれるのが腸内細菌たちです。
免疫、内分泌、神経と、三つの重要な分野でヒトのカラダに働きかける腸内細菌たちですから、ストレスに強いカラダの基本がここにあると言われるのがよくわかりますね。
腸内環境を整えることは一朝一夕でどうにかなるものではないので、日頃から腸活は意識しておきたいものです。
ウキウキで始まる新年度、期待や不安が入り混じる今は総じてパフォーマンスの高い状態です。大事なのはこれから。
ご自身のカラダがどんな状態で、どんな養生を必要としているのか、都度認識して適切に対処していきましょう。