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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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子どもの頃は近くの字も遠くの景色もくっきり鮮やかに見え、硬いものを苦もなく嚙み砕く白い歯を32本持っていた。数十年経った今、あなたの目と歯はあの頃のようにきちんと機能しているだろうか? 否という人、今こそ知っておこう。これからの人生の幸せのカギを握る、目と歯のこと。
目次
「アイフレイル」という聞き慣れないワードがある。これは視覚の重要性を唱える日本眼科啓発会議が提示した加齢による目の機能低下のこと。
「私の個人的な感覚では、アイフレイルは40歳以降から始まるイメージです」
と言うのは東北大学大学院医学系研究科眼科学分野の中澤徹教授だ。加齢とともに目の機能が衰え、そこに紫外線などの外的ストレスが加わることでアイフレイルに陥り、さらに機能低下が進んでいくという。
「肌や歯の衰えが生じるのも40代以降ですが、目も同様。この年代で早期のフレイルが早く出る人ほど、日常生活に支障が出る虚弱状態、フレイルに移行するのも早いと思います」
目の機能が衰え、最悪の場合失明などに至ると回復は難しい。行き着く先は健康寿命の短縮。アイフレイルという概念はまさに目の健康寿命を延ばすためのキーワード。下のチェックでまず自身の目の機能を確認しよう。
2つ以上当てはまったらアイフレイルかも?
聞いたことはあるけれど今のところリアルな自分ごととは思えない。それが緑内障という病。ところが、下のグラフをご覧の通り、失明の原因トップがこの病気。40代以上の5%は緑内障患者だという。
「昔は糖尿病による失明などが多かったのですが、近年は治療法が確立されて失明にまで至るリスクが減っています。緑内障は唯一増えつつある目の病気で、アジアではとくにその傾向が強いです」
パターンとしては、40代中盤頃から発症して10年くらいは自覚症状がないまま進行する、65歳の退職の時期に中期の状態になり85歳くらいで失明状態に陥るケース。緑内障の主な原因は眼圧の上昇だが、日本人は正常眼圧の患者が多く、血流の悪化や酸化ストレスで緑内障にかかる人が多いのだとか。
「5年に一度でもいいのできちんと健診を受ければ目は守れます。80歳以降、感覚器が健康でないと人生楽しくありません。今のうちに自発的な対策を講じましょう」
移動中はもちろん、食事中、ベッドの中、片時もスマホを離さずガン見している人は少なくない。
「本を読むときの目と本の距離は33cmくらいですが、スマホは20cm以下。目からの距離が近いとピントが合わないところが出てきます。視野の真ん中には集中できますが、周辺がぼやけると眼球は前後の長さを伸ばしてピントを合わせようとします。つまりそれが近視になる要因に」
さらに利き目ばかりを使ってスマホを見続けることで斜視のリスクが高まる可能性があるという説も。
「デジタルデバイスの多用で近視になると、将来緑内障や網膜剝離などの病気のリスクが10倍、20倍に増えます。目の寿命はおよそ60歳。それを越えると眼科を受診する患者さんが実際に増えているからです。目の不調を放っておくと、60歳くらいからいろんな意味で病気のリスクが高まると思います」
今ケアしなければ寿命100年分の視覚は担保できないのだ。
2022年、政府は骨太方針のひとつとして「国民皆歯科健診」の具体的検討を推進することを明記した。これ、将来的に全世代の日本人の歯科健診が義務化されるということ。
「今、歯科健診が義務づけられているのは一般的に1歳半と3歳、小中高の学校健診だけです。それ以降は自分から歯科医院に行かない限り、受ける機会はありません」
と、日本歯科大学新潟生命歯学部長の中原賢教授。
「目的は主に歯周病の予防にあります。歯周病菌が脳梗塞や心筋梗塞などの全身症状の原因となる可能性が示され、認知症との関連の研究も進んでいます。歯科健診での口腔ケアでこうした病気を防ぎ、健康寿命を延伸するのがひとつの目的です」
下のグラフの通り、定期的に歯科医院を受診している割合は全体の5割で、「受けたこともない」という人が1割強も存在する。痛くなったり不具合が生じて初めて歯医者に行く、というのが多くの日本人の感覚。来る人生100年時代、もうそれでは通用しないということかも。
日本歯科医師会は2021年に行った1万人の実態調査で、「デンタルIQ」という言葉の認知度を尋ねている。この言葉は「自分の歯と口の健康についての関心や意識の度合い」を意味するもの。IQが高い人ほど歯に対する健康意識がより高いということになる。
欧米人は子どもの頃に歯列矯正するのが当たり前。大人になっても定期的に歯科健診を受け、歯周病になった場合、担当の歯科医師を訴える人さえいるという話もある。つまり、デンタルIQが日本人に比べてめちゃめちゃ高い。
素晴らしい歯並びで自信たっぷりの笑顔を浮かべる欧米人に対し、乱杭歯を指して「八重歯は愛嬌があるからね」などと言っている日本人はここらでちょっと意識を改めた方がいい。
手始めに自分のデンタルIQを診断できる下のテストを試してみてほしい。15の項目を○×形式で答えていき、正解数が12個以上なら高め、10〜11個なら中くらい、9個以下なら低めとなる。より詳しいテストはこちらのページでトライできるので挑戦を。
正しいか正しくないかを○×で答えてください(答えは下のBox)
正しいものは:1 2 3 5 7 8 9 10
昭和生まれの人間なら子どもの頃、歯医者の金属音を聞いてすっかりトラウマになってしまった経験があるかもしれない。虫歯の1本や2本、口の中に常に飼い慣らしていたことだろう。ところが現在は様子が激変。
「80年代には1人当たり4本から5本の虫歯があったんですが、今は1本もない世代もいます。全体的にどの世代も虫歯の数は減っています」
今や虫歯を知らない子どもも珍しくない。喜ばしいけど一体なぜ?
「考えられる理由のひとつとしては、歯のケアを教育された世代が親になり、子どもに同じような教育をしているという可能性があります」
なるほど。といっても手放しで喜んではいられない。高齢になって歯を失う確率は逆に高いからだ。
「口の中には28本、親知らずを入れると32本の歯があります。40代前半では歯が全部揃っている人がほとんど。でも50代からどんどん減っていって60代後半からは10本近くなくなっていくというのが現状です」
虫歯は減っているのに歯はどんどん抜ける…はて、このミステリーの答えとは?
まずは上のグラフをご覧いただこう。これは4mm以上の歯周ポケットがあるという人の年代別の推移を表したもの。歯周ポケットは歯と歯茎の間にある溝のことで、健康な人はせいぜい1mm程度。4mmとなると立派な歯周病患者だ。
「歯周病の方はかなり多く、しかも過去よりも今の方が増えています。40代から50代は半分以上、40代以降の8割は歯周病という説もあります。虫歯は減って歯は残っているんですが、その残っている歯が歯周病になっている可能性があるのです」
現在、歯を失う原因は虫歯より歯周病であるというのが現実であり定説になりつつある。つまり、虫歯から逃れて残った歯が歯周病にやられて80歳で13本という残念なことになっている可能性が高いのだ。
「すでに述べたように40代前半ではすべての歯が残っているという人は多いんです。ですから歯の健康のターニングポイントは40代からというイメージです」
80歳になるなんてまだまだ先のこと、と呑気に言っていられない。
取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/中田真代 取材協力/中澤徹(東北大学大学院医学系研究科眼科学分野教授)、中原賢(日本歯科大学新潟生命歯学部長)
初出『Tarzan』No.844・2022年10月20日発売