緑内障・黄斑変性症・糖尿病網膜症。視力を失う怖い病気
最悪の場合、失明に至る可能性がある3つの代表的な病気、緑内障、黄斑変性症、糖尿病網膜症。生活習慣次第で誰でも罹患する可能性がある怖い目の病気。その仕組みと対策を知っておこう。
取材・文/井上健二 取材協力/平松類(二本松眼科病院副院長、医学博士)
初出『Tarzan』No.844・2022年10月20日発売
目の構造と3つの病気
① 緑内障
成人の失明原因の第1位は、緑内障。高い眼圧(眼球内を満たす眼内液の圧力)で視神経がダメージを受けて視野が徐々に欠け、進行すると失明に至る。
目の中では、毛様体が、水晶体などに栄養を与える房水を分泌。隅角という部分から排出される。房水の分泌量が増えたり、排出量が減ったりすると、眼圧が高まりすぎるのだ。
「欠けた視野や傷害された視神経を元に戻すことはできません。健康診断で眼圧をチェックし、40歳以降は定期的に眼科で視野検査をしてください」(眼科専門医の平松類さん)
治療の第一選択肢は、眼圧を下げる目薬を正しくさすこと。それで効果が薄い場合、房水の排出を促す手術が検討される。また、うつ伏せ寝や横向き寝は、目が寝具で圧迫されて眼圧が高まりやすいので控えよう。
② 黄斑変性症
目のフィルムに当たる網膜の真ん中にあり、モノを見るときに中心的役割を果たすのが、黄斑。その名は、黄色い色素ルテインが集まることに由来する。
黄斑に異常が起こるのが、黄斑変性症。視野の中心が欠けたり、周辺が歪んで見えたりして、進行すると失明する。黄斑の組織が加齢で萎縮したり、新生血管と呼ばれる異常な血管からの出血が起こったりして、視力の低下などをもたらすのである。
欧米では失明原因の1位は、加齢による黄斑変性症。黄斑の変性を促すのは、余分な脂質。欧米食は脂質が多いため、黄斑変性症も多い。そこで脂質をなるべく控え、有酸素運動で脂質を燃やすことが有効。
ルテインが加齢で減るのも黄斑変性症の一因だから、ホウレンソウなどからルテインを摂るのも効果的。
③ 糖尿病網膜症
糖尿病とは血糖値が高くなり、下がりにくくなる病気。それに伴う合併症の一つが、糖尿病網膜症。
発端は、網膜の細い血管が、高血糖で傷害されて血流が滞ること。血流が悪い部分を養うために血管が新生するが、この新生血管は脆く破れやすい。出血が起こり、その刺激で増殖膜という組織が発生。網膜を引っ張って網膜剝離を起こし、失明しやすい。
糖尿病と診断されたら眼科で検査を受け、網膜の状態をつねにモニタリング。むろん、元凶の糖尿病の治療もマスト。
「糖尿病でなくても、食後に血糖値が高くなる食後高血糖も網膜に負担をかけます」
食後眠気が強い人は、食後高血糖が起こり、反動で血糖値が下がりすぎる恐れも。病院などで食後高血糖の有無を調べよう。