暑くないのにかく「冬の寝汗」の原因は?(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回はテーマは「冬の寝汗」について。
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
冬に寝汗をかくことありませんか?
季節は冬。今年は秋がちょっと長めだった印象がありますが、12月ともなるとやっぱり冬らしさが強くなりますね。
さて、冬の寒い気候でも汗をかくことがありますか?
ドラッグストアの制汗剤やデオドラントアイテムは売り場の隅へと追いやられていますが、なくならないところを見ると需要はあるんだなと思います。 今回はちょっと気にかけて欲しい冬の汗についてです。
暑ければ汗をかく、それは自然なこと。ですが汗をかくイコール代謝がいいとは限りません。暑くもないのにかく寝汗、暖かい部屋に入った途端にかく火照りを伴う急な汗、これらを紐解いてみましょう。
冬の寝汗のメカニズム
漢方の世界では寝汗のことを盗汗と書き、そのまま「とうかん」、または「ねあせ」と読みます。なぜ「盗」の字があてられているか、気になるところですよね。
暑くないのにかく寝汗は、外気ではなく自分のカラダの中の熱感が原因です。しかしこの熱感、内側に熱の塊があるわけじゃないのが厄介なんです。「熱源がある」のではなく、冷ます力がないのです。
夜、人は眠りにつくときに体温を下げながらお休みモードにカラダを切り替えます。ですが冷ますための陰の力が巡らない人は汗をかくことで体温を下げます。
これが暑くないのにかく寝汗です。そして汗の元になるカラダの水分とは、実は陰の性質をもつ物質です。陰の力が不足しているのに汗としてさらに奪われる、だから盗汗(とうかん)と言ったのですね。
では陰の力を補えばいいのか。もちろんそれも一つの方法です。しかし陰は水だけでなく血も含む概念です。さらに汗をコントロールする力は陽です。
冬の寝汗におすすめの漢方
浮腫と乾きが顕著なとき
浮腫や喉の渇きを伴いながら寝あせが気になるなら、五苓散(ごれいさん)や柴苓湯(さいれいとう)がおすすめです。
ストレスがかかっているとき
心配事や考え事が増えてから寝汗をかくようになった方は、血を含めた陰のケアが必要です。この場合は帰脾湯(きひとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などがいいでしょう。
カラダが弱っているとき
体力の衰えや虚弱体質が明らかな寝汗であれば専門家へ相談を。ドラッグストアでは取り扱いのない玉屏風散(ぎょくへいふうさん)や黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)などを処方されることもあるでしょう。
寝汗は陰の力のめぐりの悪さを示しています。陰の力がめぐらないと、疲れが取れない、頭が働かない、子宝に恵まれないなど、困ったトラブルを引き起こします。
たかが汗と侮らずに、カラダからのサインを受け止めてください。
次回(12月20日公開予定)は暖かい部屋で急にかく汗についてです。