風邪で“発熱”。熱は下げない方が治りが早い?(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回はテーマは、発熱時の考え方について。
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
発熱は下げなくてもいい場合もある
さて、自分や家族が発熱したらどうしますか?
解熱剤を服用して冷却ジェルシートをカラダに貼って休む、これが一般的な対応かと思います。熱が出たらまずは下げなくちゃと思うものですよね。かつて発熱といえば悪者で、あの手この手で下げるものでした。
しかし最近では、医療機関でもあえて高い熱を維持して回復を促すように指導されることもあります。
発熱は正常な防御反応であり、カラダに入り込んだ菌やウイルスをやっつけるのに必要だということを聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここに早い段階で解熱剤を用いると、せっかくの防御システムにブレーキがかかってしまい、却って症状を長引かせてしまう場合もあります。
あえて体温をあげる漢方の処方
歴史の長い漢方薬には発熱時に敢えて体温を上げて汗をかかせる処方がいくつかあります。発熱しているのにさらに熱を上げるなんて、かつての感覚ではびっくりする考え方ですよね。
ですが実際に使ってみると1日から2日程度で自然に熱は下がり、カラダがスッキリして予後も良いことが多いです。元気な子供や基礎疾患のない大人は、その体力を使って発熱防御システムを大いに稼働させるべきです。
つまり恐れ過ぎずに発熱を歓迎してほしいのです。
暖かくして布団にくるまり、しっかりと体温を上げます。寒さがおさまらなければ、背中の上の方(肩甲骨のあいだ辺り)にカイロを貼るのも有効です。上がった体温をキープすることが大事ですから、かいた汗でカラダが冷えないように着替えもします。
肌に触れるのはしっかりと汗を吸う綿素材がいいですね。水分補給も忘れずに。
葛根湯と麻黄湯には発汗作用があり
熱は高いのに汗をかけない場合は、先に述べた漢方薬の出番です。葛根湯や麻黄湯などが有効です。
これらは発熱時にあえてカラダを温めて発汗させることが得意なお薬です。ですので解熱剤と一緒に服用することのないようにお願いします!
また、発熱とともにじわじわと発汗がみられる場合は桂枝湯を選びます。この場合は胃腸に負担をかけないことが早期回復のコツです。
解熱剤によって熱が下がるとカラダが楽になります。それは間違いありません。ですがこれは治ったのではなく一時的に辛い症状が除かれているにすぎません。
発熱によるリスクが高い方や、どうしても今解熱する必要がある方は解熱剤を使うべきです。ですが自分で治すシステムを働かせられる方は、こちらをお勧めします。
また、発熱システムをもって自己治癒するには相当の体力が要ります。解熱後も少しの間安静にするのはもちろんですが、日頃から養生に努め、悪さをする菌やウイルスに打ち勝つ力を養っておきましょう。