踵をつけてしゃがめる? “正しくしゃがむ”ためのピラティス
生活様式の変化で、できない人が増えた動作と言えば、“しゃがむ”だろう。踵を地面につけたまましゃがむのは本来できなくてはいけない動作。今回はラクに、美しくしゃがむために、股関節まわりを活性化するピラティスを紹介。
取材・文/鈴木一朗 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 編集/堀越和幸 実演/佐川裕香 監修/菅原順二(アランチャ)
初出『Tarzan』No.838・2022年7月21日発売
まずは「股関節を深く曲げる」を覚える
確かに昭和の終わりごろまでは存在していた。何がって、和式のトイレだ。誰もがしゃがみ、立ち上がっていた。
今は洋式へと取って代わり、人はこの動作を忘れた。その結果、しゃがもうとするとバランスを崩してひっくり返ったり、踵を地面につけたまましゃがめない人が増えた。だが、公園の砂場を見ればわかる。子供たちはしゃがみっぱなしで、砂いじり。そう、本来ならできなくてはならない動作なのだ。
できない動きがあるとカラダの一部の機能が低下する。そして、それが少しずつ全体へと波及していってしまうのだ。
そこで、まず股関節を深く曲げることを覚える。この関節に関わる筋肉の柔軟性を高め、活性化させよう。また、腕と脚を伸ばすことで腹の筋肉も働く。体幹が安定してカラダのバランスも取りやすくなる。
ダブルレッグ・ストレッチのやり方
① 膝を曲げて、床に仰向けになる。腕は体側に伸ばし、手のひらは床につける。
② 膝を胸に引き寄せるように曲げ、足首を伸ばす。同時に頭と肩を床から浮かして持ち上げ、手を足首(できなければ脛)の横に添える。
③ 息を吸いながら、腕と脚を斜め上方に伸ばす。このとき指先、足先がカラダの中心からできるだけ遠くに行くように意識する。動作中は常に腰を床に押し付け、背骨を伸ばしておく。
④ 息をすべて吐きながら、弧を描くように両腕を外側から回し、同時に、胸に向かって膝を引き寄せていく。動いている間はずっと、頭の位置が変わらないように注意すること。
⑤ ②のポジションに戻ったら、③〜⑤の動きを5回繰り返す。
カラダを整えるピラティス実践のポイント
凝り固まったカラダのケアとして定番のストレッチ。でも、せっかくストレッチで筋肉を伸ばしても、いつもの生活の習慣やクセで、カラダは少しずつ元の状態に戻ってしまう。よい状態をずっと留めておくには、仕上げにトレーニングを行うのが一番。それにはピラティスがいいだろう。
「いつ、どんなときにも正しい姿勢を維持して動けるようになります」と、トレーナーの菅原順二さん。行うときには重要なポイントがある。
「一つはエロンゲーション。ピラティスでは、立位や座位での正しい姿勢を維持するには、重力による下向きの力に対して、自分で伸びる上向きの力が重要と考えています。これがエロンゲーションで、頭が上方に引っ張られて背骨が伸びるイメージを常に持ちながらメソッドを行ってください。同様に、指先はカラダの中心からより遠くに。足は押し下げるように意識しましょう(下写真)」
メソッドでは動きを止めないこともポイント。ゆっくりと動いてポジションを変えることで、全身が鍛えられる。ラクに美しく動けるようになろう。