小島慶子さん・原田龍二さん対談 更年期とどう向き合うか
数年前にカラダの不調を感じ始め、自身の更年期について発信しているエッセイストの小島慶子さんと、最近妻・愛さんが更年期の症状を訴えている俳優の原田龍二さん。立場は違えど同じ悩みと向き合う同世代の2人に、「更年期」を真剣に語ってもらった。
取材・文/黒田創 撮影/山城健朗 スタイリスト/天水沙織(小島さん) ヘア&メイク/中台朱美(小島さん) イラストレーション/3rd eye

家族や医者に適切に頼ることが大切

原田龍二さん(はらだ・りゅうじ)/1970年生まれ。映画、ドラマなどで活躍。『バラいろダンディ』(東京MX)金曜MC。映画『太陽とボレロ』に出演中。新著『精霊たちのブルース』(万代宝書房)を上梓。
頭痛やめまいを起こすことが増えてきて、最初は「疲れが溜まっているのかな?」ぐらいに思っていたのですが、その後膣の突き当たりのあたりに常に静電気が溜まっているような不快感を感じ始めて、次第にイライラするようになってきました。
腰にアースを付けて今すぐ電気を抜きたい!って。

小島慶子さん(こじま・けいこ)/1972年生まれ。TBSアナウンサーを経てエッセイスト、タレントとして幅広く活躍。『さよなら! ハラスメント』(晶文社)など著書多数。東京大学大学院情報学環客員研究員。
すると先生が「小島さん、これは更年期の症状かもね」って。それでいよいよ私にも来たか、と。以来、ホルモン剤を処方していただいたり、肩こりやメンタルの不調を和らげる薬を飲んでいます。
ホルモン剤は2種類あって、ジェル剤を内腿やお腹のあたりに毎日塗るのと、月に1回注射剤で補充しています。あとは漢方薬も組み合わせたり。

そういえば原田さんの奥様も更年期の症状で通院なさっているとか。
以来たまに注射していますね。
わが家は8年前から生活拠点をオーストラリアに移していて、夫と2人の息子が向こう、私が日本に単身赴任という状況なのですが、私は家族に何でも話すので、更年期のこともビデオ通話で普通に打ち明けました。
「女の人は生理がなくなるタイミングで必ずそういう変化があるんだよ」って。
今まで更年期が正しく理解されていなかった
“もう20代ではない女性”に向かって年齢を強調するつもりで言ったのだと思います。「更年期」という言葉に若くない女性をバカにする意味合いを込めたんだなと。
ショックでした。そもそも更年期が正しく理解されていないなって感じました。
あと、今まで「私は更年期です」と堂々と語る人があまりいなかったというのもありますね。やっぱり発言しないと理解はなかなか深まらないなって。
ところで原田さんは男性更年期的な症状を自覚することはあるんですか?
ただ、ここ数年記憶力が落ちたな~とは感じています。セリフひとつとっても30~40代と比べて覚えが明らかに遅くなっているし、同世代の友人と話していても、固有名詞がなかなか出てこないのはしょっちゅう。「ほら、あのあれだよ」なんて会話ばかりです(笑)。
でも年をとれば自然と男性ホルモンも減っていくでしょうから、それは仕方ないのかなと。


こんな時代だからこそ根源的な生き方に学びたい
生きるか死ぬかの状況で暮らしていると、更年期という概念は限りなくゼロに近い気がするんです。
女性は生理が終わる時期にカラダの変化という形で更年期が訪れますが、男性更年期に関してはいろいろと進化しすぎてしまった社会の負の側面の表れじゃないのかな、とも感じるんです。
あまりにもストレスを溜め込みすぎているというか。
あとはデジタルデトックス。今はどうしてもスマホに向かう時間が長くなるので、一日数十分でいいからスマホを手放して公園で森林浴をしたり、お寺で座禅を組んだりすると、心がクリアになってスッキリします。
自分を無の境地に近づけるのも男性更年期対策になるんじゃないかな。
考えてみれば、ほんの70年前まで日本人の平均寿命も60歳台だったんですよね。当時は寿命が短い分、更年期が問題になることは少なかったのでは。
でも、頑張れば給料が上がるから無理ができたんですよね。もう20年も給料が上がっていない今の日本で、今までのような働き方は疲弊するだけです。
加えて、長く働く女性が増えています。昇進の機会と重なる更年期の不調が大きな問題になっている。現代の更年期って、働き方問題ともリンクしているんです。
これは更年期で休める制度がないのが大きく関係していて、各企業は“更年期休暇”を真剣に考える時期に来ているんですよ。従来の組織だと、少し体調を崩すと「あいつはもうダメ」と見放される空気があった。でも人は誰しも調子が悪くなるのが当たり前だし、そんなときは更年期も含めて、普通に「休みます!」と言える社会になってほしいなって。
また、誰かが休みをとっても業務をカバーできる仕組みを整えることも大事。そうすれば周りも「この忙しいときに何やってんだ」ではなく、ちゃんといたわってあげられますから。
僕らの世代だと、小学校で授業中にトイレに行きたいと言うと笑われる雰囲気があったじゃないですか。特に大便だと「あいつ学校でウンチした」なんてバカにされて。
子供も大人も、そこでコソコソする必要はない。そういうことを小さい頃から教えてあげないと。

ちゃんと「人体リスペクト」できる社会になってほしい
実際、自分の更年期について発信することで、初対面の女性からも「私も更年期で大変なんです」と打ち明けられる機会が多くなりました。仲間が増えた気分。
あと、普段からちゃんとコミュニケーションをとっていないと、お互い辛さを気軽に話せませんよ。
でも、最近話をするなかで、夫が数年前から心身ともにしんどかったこと、最近そのモヤモヤが晴れたことなどを告白してくれて。「だから慶子の更年期の辛さが理解できる」とも。
つまりそれが彼にとっての更年期だったのかなと。もっと話を聞いてあげればよかったと後悔しました。
即ち相手の老いを受け入れることなのですが、そのことは決してマイナスではない。自分も更年期を経験しているからこそ、相手をいたわる気持ちも芽生えてくると思うんです。
第2次ベビーブーム世代の私たちが更年期を機に「若さ」から降り、今後の人生をどう心地よく過ごすかを考えることは、経済優先で人にやさしくない日本社会を大きく変えるかもしれない。今はそんなことも考えているんです。
