扁平足のあなたに。長時間歩いても疲れない足のアーチづくり

日本では数少ないポダイアトリスト(足病医)の川股弘治先生に、ウォーキングに重要な「足の構造」と、それを妨げないための「エクササイズ」を伺った。今回は歩行時の理想的なアーチを再現するための「距骨下関節」について解説する。

取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/野村憲司、今牧良治(共にトキア企画)

初出『Tarzan』No.828・2022年2月24日発売

足のアーチと距骨下関節

川股弘治先生

川股弘治先生

教えてくれた人

かわまた・こうじ/〈東京ポダイアトリー〉院長。オーストラリアおよびニュージーランドの国家足病科医師免許取得。海外のクリニック勤務を経て現職に。メディカルエビデンスに沿った診断とトリートメントを行う足病学の第一人者。

足の裏のアーチは歩行時に3つの形に変化する

ウォーキングは外側と内側の縦アーチ、そして横アーチの3つが機能してなんぼ、とよく言われるが…、「アーチは歩行という動作のなかのひとつの現象にすぎません」と川股先生。

一般的には欧米人に多いのが土踏まずの高さが高いハイアーチ、日本人に多いのがほぼアーチがない扁平足で、その中間がニュートラルなアーチ。

「ところが歩行時の足は勝手にハイアーチになったり扁平足になっているんです。着地時には扁平足になって衝撃を吸収し、蹴り出しのときにはハイアーチになることで歩行の推進力が生まれます。このふたつの動きができるのがニュートラルなアーチを持つ人です」(川股先生)

ニュートラルなアーチと扁平足のアーチ

着地時に体重がかかって距骨が下がると扁平足状態のアーチになり、蹴り出しのときに距骨が上がるとハイアーチの状態になる。一番右はニュートラルなアーチの状態。

普段じっと立っているときはニュートラル。歩き出したらハイにもローにもなるアーチの動きを再現できることが理想なのだ。

足の歪みの原因のひとつは距骨下関節の歪み

距骨下関節の図解イラスト

歩行に重要な働きをする距骨下関節は距骨と丸く大きな踵骨の接地面。扁平足の人はこの距骨下関節のはまりが緩くなり、足の歪みが起こりやすくなる。

大地を駆ける狩猟民族はハイアーチ、大地にどっしり構える農耕民族は扁平足。ゆえにニッポン人には扁平足が多いという話。

でも、ポダイアトリーの観点から言うと、「扁平足の人は距骨下関節が緩みやすい傾向があります」とのこと。距骨下関節とは距骨と踵骨のジョイント部分のこと。

「足関節が2軸の動きとすると、距骨下関節は3軸の関節であるため、より自由な動きをします。体重のかかっていない状態で内側に20度、外側に10度傾くのが正常な可動域ですが、日本人は距骨が内旋して踵骨が外側に倒れやすい傾向があります」(川股先生)

距骨下関節の可動域チェック

ポダイアトリストの診断基準のひとつは、距骨下関節の可動域チェック。イラストは右足。内側に向かって20度傾き、外側に向かって10度傾くのが正常だ。

距骨下関節の荷重状態では外転方向の負荷がかかりやすく内転は苦手。アーチはぐにゃっと潰れて扁平足になり、アキレス腱が常に伸ばされ捻挫をしやすいというデメリットも。扁平足気味の人、即対処を。

距骨下関節運動でニュートラルなアーチに!

一歩踏み出すごとに変化するアーチを再現できれば、力強い蹴り出しを可能にし、長時間歩いても疲れにくい足が手に入る。そのためには距骨下関節の正常な可動域を取り戻し、歪みを改善するしかない。

「日本人の8割程度は足になんらかの歪みがあるといわれています。足関節のストレッチとともに距骨下関節のエクササイズはマストと考えてください」(川股先生)

足首くらい自分の意思通り自由に動かせる? 自信満々のそこのあなた、トライしてみてください。かなり難しいです!

① 足首タオル内返し

足首タオル内返し

椅子に座り、2つに畳んだタオルを足元に置く。タオルの端が爪先の前に来るように。踵を床につけたまま足の指でタオルを摑み、内側に引っ張ってずらす。逆端まで行ったら次は逆の足で。

② 足首トータル運動

足首トータル運動

椅子に深く腰かけて両足を揃えて床から浮かせる。足の爪先をできるだけ下に下ろして3秒キープ。上方向にできるだけ上げて3秒キープ。午前中2回、午後2回を目安に行う。

③ 足首サークル運動

足首サークル運動

足首サークル運動 2

足首をうまく回せない人は床に座って片手で足首を固定、反対側の手を添えて回そう。

今度は足首の円運動。両足を揃えて上、右、下、左と時計回りに大きくゆっくり回転させる。3回回したら逆回転で3回。右のトータル運動と合わせて午前中と午後に2回ずつ行う。