本当に効く「腰痛セルフケア」ベスト10
コロナ禍以降、在宅勤務で坐っている時間が増え、運動不足に陥ったおかげで、慢性的な肩こり・腰痛に悩む人が増えた。こうした肩こり・腰痛の多くは、画像診断でも整形外科的には原因が分からず、病名も付かないもの。セルフケアで軽減するほかない。今回は「腰痛セルフケア」10選を紹介!
取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/萩村千紗子(林さん)、天野誠吾(寺坂さん) イラストレーション/Mariko Yamazaki
初出『Tarzan』No.824・2021年12月16日発売
目次
専門家が選んだ「腰痛セルフケア」
今回、治療やリハビリの最前線で活躍する専門家5人に声をかけ、本当に効く腰痛のセルフケア法を教えてもらった。そこからさらに編集部が厳選したベスト10を一挙公開。あなたの辛い腰痛に効く切り札がきっと見つかるはず!
私たちが本気で選びました
デスクワークが続くと、どんどん重く辛くなる一方なのが腰。慢性的な痛みや不調は日々の積み重ねで起こるものだから、効くものを見つけたら、セルフケアも根気よく続けてほしい。ここでは腰痛に直結するお悩み&自覚症状別にベスト10+4を紹介。筋肉、筋膜、関節、メンタル面までカバーする優れモノ揃いだ。
寺坂頼我さん
実演してくれた人
てらさか・たいが/〈祭nine.〉リーダー。『ウルトラマントリガーNEW GENERATION TIGA』(テレビ東京系)に主人公・マナカケンゴ役で出演中。写真集『寺坂頼我/マナカケンゴ From ウルトラマントリガー』が発売中。
林ゆめさん
実演してくれた人
はやし・ゆめ/モデル・女優として活躍し、バラエティ番組にも多く出演。地元北海道富良野市の「2021ふらの観光親善大使」を務めるほか、FMフジ『劇団サンバカーニバル』にレギュラーアシスタント出演中。写真集『ゆめみごこち』(講談社)が発売中。
第1位 片脚ニープル
骨盤前傾を促す腸腰筋(背骨、骨盤、大腿骨を結ぶ)と大腿四頭筋(太腿前側)。後傾を促す大臀筋(お尻)とハムストリングス(太腿後ろ側)。引き寄せる側で前傾筋、床を押す側で後傾筋を刺激。反対の筋肉をほぐす。
こんな人に…
- 腰が反っている(骨盤前傾)
- 腰が曲がっている(骨盤後傾)
推薦コメント
「骨盤が前傾しすぎて腰が反っている人、後傾しすぎて腰が曲がった人、両者に有効です」(三枝剛さん)
左右各10回×1〜2セット
①床で仰向けになり、両膝を腰幅に開いて立てる。②両腕を体側で伸ばし、手のひらを床につける。
③右膝を胸に引き寄せる。行けるところまで思い切り。④同時に左足の踵で床を強く押す。元に戻り、左右を変えて同様に行う。
第2位 脊柱起立筋のトリガーポイントストレッチ
トリガーポイントをマッサージしてから行う。痛みの発信源となり、ストレスとも関わる脊柱起立筋(背骨の両側を走る筋肉)を緩める。骨盤が前傾しても、後傾しすぎても、負担がここに集中しやすい。
こんな人に…
- 腰が反っている(骨盤前傾)
- 腰が曲がっている(骨盤後傾)
- 精神的なストレスが強い
推薦コメント
「精神的ストレスから腰痛が発することも。腰腿点のケアでストレスを和らげましょう」(伊藤和憲さん)
ツボへの刺激《腰腿点》
左右各5秒×5セット
ストレスに伴う腰痛に効くツボ。手の甲の人差し指と中指の骨が交わるところ、中指と薬指の骨が交わるところの2か所がある。人差し指と中指の骨に沿って反対の手の親指を押し、痛いところを探して指圧。5秒押して5秒離すことを5セットほど繰り返す。左右を変えて同様に行う。
第3位 三日月ストレッチ
筋膜などを介して中臀筋(お尻の外側の筋肉)と腰方形筋(肋骨と骨盤を結ぶ筋肉)をほぐし、腰の緊張をオフにする。
こんな人に…
骨盤の高さに左右差がある
推薦コメント
「体側の筋肉が凝っていると、腰が緊張しやすい。体側をほぐして腰痛を避けましょう」(澤木一貴さん)
左右各30秒×1〜2セット
①床で仰向けになり、右足を左膝の外側に置く。②左肘を曲げ、右手で持つ。
③右足で左脚を右側へスライドさせて下半身を曲げる。④右手で左肘を右側へ引いて上半身を曲げる。⑤全身で三日月を作るようにしならせて体側を伸ばし、呼吸をしながら30秒キープ。左右を変えて同様に行う。
第4位 ロックバック
腰痛持ちは股関節と骨盤をリンクして動かすヒップヒンジが下手。ロックバックは四つん這いで行うスクワット。ヒップヒンジを促す。
こんな人に…
しゃがむ動作が苦手(股関節の動きが悪い)
推薦コメント
「正しいフォームでスクワットするにはまずロックバック。ぎっくり腰予防にもなります」(伊藤和磨さん)
20回×1〜2セット
①両手、両膝を床について四つん這いになる。手は肩の真下、膝は股関節の真下につく。②爪先を伸ばす。③肛門を後ろに向けるように骨盤を前傾させて腰に軽いアーチを作り、ロックする。
④骨盤と腰椎をロックしたまま、息を吸いながらお尻(坐骨)を踵に近づける。息を吐きながら戻る。
第5位 ハムストリングスAIS
伸ばすストレッチと休むレストを2秒間隔で繰り返すAIS(アクティブ・アイソレイテッド・ストレッチ)で、骨盤を後傾させるハムストリングス(太腿後ろ側の筋肉)を緩める。
こんな人に…
腰が曲がっている(骨盤後傾)
推薦コメント
「通常のストレッチよりもAISは硬い筋肉の可動域を広げる効果が高いと期待できます」(澤木一貴さん)
第6位 ゆらゆら・くるくる
体重をかけて股関節と肩関節の動きを良くし、股関節の奥の腸腰筋(背骨、骨盤、大腿骨を結ぶ筋肉)の緊張を取る。股関節の動きが悪いと、腰椎の負担が増えて腰痛に陥りやすい。
こんな人に…
- しゃがむ動作が苦手(股関節の動きが悪い)
- 腰が曲がっている(骨盤後傾)
推薦コメント
「体重を加えて股関節と肩関節を安定させると腰の緊張が取れやすくなります」(三枝剛さん)
第7位 仰向けグリコ
股関節の詰まりを取り、骨盤の動きを良くする。仰向けの姿勢で背骨全体を伸ばしつつ、あわせて腰椎にかかるストレスの軽減を狙う。
こんな人に…
- しゃがむ動作が苦手(股関節の動きが悪い)
- 腰が曲がっている(骨盤後傾)
推薦コメント
「“ゆらゆら・くるくる”の後にやるとより効果的。道頓堀の超有名看板をイメージして」(三枝剛さん)
左右各10回×1〜2セット
①お尻の下に重ねたバスタオルを置き、床で仰向けになる。②両腕をY字を作るように床で伸ばし、手のひらを天井に向ける。③両脚を揃えてまっすぐ伸ばす。
④右膝を胸にできるだけ引き寄せる。⑤両手を引っ張られるように伸ばす。⑥床に置いた脚も引っ張られるように伸ばす。左右を変えて同様に行う。
第8位 内転筋群のストレッチ
股関節の動きが悪いと、腰椎が頑張りすぎて腰痛を招きやすい。股関節の動きを制限する固まった内転筋群(太腿内側の筋肉)の可動域をストレッチで広げ、腰椎の負担を減らす。
こんな人に…
しゃがむ動作が苦手(股関節の動きが悪い)
推薦コメント
「意外に知られていませんが、内転筋群が硬いと股関節の動きが悪くなり、腰痛の恐れも」(澤木一貴さん)
30秒×1〜2セット
①クッションをお尻に敷いて坐り、背すじを伸ばして骨盤を立てる。②足の裏を合わせ、爪先を両手で持つ。③爪先を引き上げ、胸を床に近づけ、膝を床に近づけて、太腿内側をストレッチ。呼吸をしながら30秒キープ。
第9位 かかしストレッチ
ズレた上半身と下半身の中心(軸)を揃えるために、体側の内腹斜筋(脇腹の深層にある筋肉)、中臀筋(お尻の外側にある筋肉)、大腿筋膜張筋(太腿の外側を走る筋肉)の緊張を取り除く。
こんな人に…
骨盤の高さに左右差がある
推薦コメント
「普段からスライドしにくい方に荷重して立つ、歩く練習をすると腰痛緩和に有効です」(伊藤和磨さん)
20秒×1〜2セット
①壁に踵、ふくらはぎ、お尻、背中、後頭部をつけて腰幅でまっすぐ立つ。②両腕を肩の高さで床と平行に伸ばし、手のひらを下に向ける。
③両足を固定したまま、腰(骨盤)を真横へできるだけ大きくスライドさせる。④スライドしにくい方(おそらくその反対の足に体重を乗せて立ったり、歩いたりする癖がある)へ、最大限スライドさせて体側をストレッチ。
呼吸をしながら20秒キープしたら、ゆっくり戻す(急に戻すと腰のストレスになるので要注意)。
第10位 オーバーヘッド・ランナーズランジ
腸腰筋(背骨、骨盤、大腿骨を結ぶ筋肉)を緩め、体幹から力が抜けないように腹圧をしっかり保ち、腰椎の適度な前彎カーブを作る。
こんな人に…
- 腰が反っている(骨盤前傾)
- 腰が曲がっている(骨盤後傾)
- しゃがむ動作が苦手(股関節の動きが悪い)
推薦コメント
「腰痛があるのに動かなければならないときのアクティブストレッチとしても推奨します」(嶋﨑愛さん)
左右各10回×2セット
①両脚を揃えてまっすぐ立ち、両腕を体側に下げる。②手のひらを内側に向けて両腕を下から上へ振り上げながら、片足を大股1歩分前に踏み出すフロントランジを行う。
③目線は天井に向け、前足を蹴って元に戻る。④体幹を固定して力を抜かず、骨盤は前傾も後傾もしないニュートラルポジションに保ちながら行う。
左右を変えて同様に行う。
まだあります! 効くセルフケア4種目
① 腰方形筋のトリガーポイントストレッチ
トリガーポイントをマッサージしてから行う。痛みの発信源となり、骨盤のズレをなくす深層のインナーマッスル、腰方形筋(骨盤と肋骨を結ぶ筋肉)を緩める。
こんな人に…
骨盤の高さに左右差がある
推薦コメント
「腰方形筋は胸郭と関わり、呼吸を補助しています。腰痛で呼吸が浅い人にもお薦めです」(伊藤和憲さん)
② 内野手ストレッチ
骨盤を後傾させている硬い大臀筋(お尻の筋肉)とハムストリングス(太腿後ろ側の筋肉)を伸ばす。股関節と骨盤の稼働性もアップ。
こんな人に…
- 腰が曲がっている(骨盤後傾)
- しゃがむ動作が苦手(股関節の動きが悪い)
推薦コメント
「しゃがむ&屈む動作の安全なエンドポジション(最終的な位置)を身につける効果も」(伊藤和磨さん)
30秒×1〜2セット
①両足を肩幅よりもやや広めに開いてまっすぐ立つ。爪先を外側に向ける。②両腕を伸ばし、手のひらを太腿に置く。
③踵で床を押しながら、股関節をヒンジのように曲げて上体を前傾させる。手を膝へスライドさせながらしゃがむ。④手のひらを膝頭にひっかけてロック。野球の内野手が待機するような姿勢を取る。⑤肩をしっかり下げる。
⑥鼠蹊部を後ろへ引き込むイメージでお尻を突き出し、大臀筋とハムストリングスをストレッチして呼吸をしながら30秒間キープする。
③ 坐骨神経フロッシング
硬直している坐骨神経(お尻から脚に向かって延びる太い神経)まわりの組織を緩め、滑りを良くする。痛みや痺れが強くなる場合は即刻中止。
こんな人に…
お尻から脚にかけて違和感がある
推薦コメント
「お尻から脚にかけて違和感や痺れがある、いわゆる坐骨神経痛の緩和にも役立ちます」(嶋﨑愛さん)
左右各10回×2セット
①床で仰向けになり、左脚の太腿に両手を回す。②右脚は床でまっすぐ伸ばす。③両手で左脚を手前に引き寄せ、太腿後ろ側のハムストリングスをストレッチする。
④腰の負担を減らすために、膝は軽く曲げておく。⑤その状態で足首の屈伸を行う。左右を変えて同様に。
④ 腸腰筋のトリガーポイントストレッチ
トリガーポイントをマッサージしてから行う。股関節の動きを良くする腸腰筋(背骨、骨盤、大腿骨を結ぶ筋肉)を柔らかく伸ばしてやる。
こんな人に…
しゃがむ動作が苦手(股関節の動きが悪い)
推薦コメント
「椅子に坐って行わなくても、床に片膝をついた状態でも同じようにより手軽に行えます」(伊藤和憲さん)