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食物繊維は知っていても「発酵性食物繊維」と言われると何それ? という人も多いはず。実はこれ、近年腸内環境改善の注目株としてにわかに脚光を浴び、健康意識の高い人に認識されつつある存在なのである。
そもそも発酵性食物繊維って何を指すの? 管理栄養士、フードプランナーの岸村康代さんに聞いてみた。
「食物繊維は野菜や果物、穀物などに含まれ、酵素で消化されずに腸まで届いて腸内細菌全体のエサになったり、腸内で発酵することで腸に善玉菌が棲みやすくなる環境を作るのが、主な役割です。
腸内細菌には腸で発酵する有用菌、腐敗する有害菌、環境によってどちらにもなる日和見菌がありますが、そのうち、特に有用菌のエサとなり腸内環境を改善に導くのが発酵性食物繊維です」
有用菌は発酵性食物繊維をエサにして酪酸や酢酸といった「短鎖脂肪酸」を増やしていく。この短鎖脂肪酸が腸の働きを改善し、腸内フローラを整え、アレルギーの抑制、便秘の改善、肥満予防、血糖値のコントロールやがん化細胞の増殖抑制など、さまざまな働きをしてくれるのだ。
「従来、食物繊維は水溶性と不溶性の2種類に分けられ、前者は発酵しやすく後者は発酵しにくいとされてきました。
しかし近年、不溶性食物繊維の食材の中でも押し麦や大麦に含まれるβ−グルカンや小麦全粒粉や小麦ブランに含まれるアラビノキシランといった種類の食物繊維は、腸の中ほどや奥で分解され、有用菌のエサとなることが判明。不溶性でも穀物類の一部は発酵性食物繊維として見なされるようになりました」
発酵性食物繊維を含む穀物類は下の図の通りだが、玄米や小麦全粒粉、オートミールやスーパー大麦などは、多くの量を主食として摂れるのが大きな特徴。また、野菜・果物類ではゴボウや玉ネギにはイヌリン、ブロッコリーやニンジン、キウイフルーツにはペクチンという発酵性食物繊維が含まれていることがわかっている。
現時点で発酵性食物繊維を多く含むことがわかっている主な食材がこれ。いずれも100g当たりの含有量だ。腸の始め、中ほど、終わりそれぞれに効く食材をうまくチョイスし、1日7gの摂取を目指そう。継続すれば自ずと腸内環境改善が見えてくる。
「腸の奥まで届く」と聞くとヨーグルトなどに含まれる乳酸菌をイメージしがち。もちろん、乳酸菌も腸の健康を保ってくれる大事な存在だが、大腸に到達したとしても生まれつき母親から受け継いでいる有用菌と違って定着しにくく、便と一緒に排出されてしまうケースが多いのがウィークポイントである。
「その点、発酵性食物繊維は腸内に定着しやすく、その分効果が持続して腸にある有用菌を増やし、有害菌を減らしてくれます。また、水溶性の多くに含まれる発酵性食物繊維は大腸の入り口から中盤付近で、不溶性の一部に含まれる発酵性食物繊維は大腸の終わりにかけて効果を発揮します。
野菜や果物だけ、穀物類だけとどちらかに寄らず、両者をバランスよく毎日の食生活に取り入れることで、よりよい腸内環境にすることが期待できるのです」
発酵性食物繊維はまだ研究が始まったばかりのニューカマー。現時点では上の図で示した食材に多く含まれていることが判明しているが、他の食物繊維系ではどの食材にどの程度含まれているか、わからない部分が多いのが実際のところ。
ただし研究は日進月歩で進んでおり、今後も増え続けることは間違いない。食材の選択肢が広がればもっと取り入れやすくなるし、サプリで手軽に摂れる可能性も出てくる。
「発酵性食物繊維を摂れるサプリは現在イヌリンなどがありますが、食品からだと単体でなく複合的に食物繊維が摂れるのが魅力。海藻の食物繊維も発酵性が高いと考えられるので今後の研究に注目です。
現在、日本人は1日平均5g程度発酵性食物繊維を摂取しているといわれていますが、もう2g増やして7g摂れば腸内環境の改善が期待できます」
取材・文/黒田創 撮影/小川朋央 監修/岸村康代(管理栄養士、フードプランナー)
初出『Tarzan』No.817・2021年8月26日発売