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大坂なおみトレーナー・中村豊インタビュー。「機能する美しいカラダ」

トップテニスプレイヤー、大坂なおみ選手。その美しいカラダの秘密を、専属トレーナーに直撃。

女性の「黄金率ボディ」とは?

雑誌『ターザン』No.801の特集「黄金率ボディの作り方。」で追求した「美しいカラダ」。その結論を「ウェスト、上腕、肩幅が描き出す“菱形体型”にあり」としたが、もっともそれは男性のためのもの。それでは女性が目指すべきカラダの定義とは?

ロールモデルの一人は2020年秋、3度目のグランドスラム優勝を遂げた大坂なおみ選手。ダイナミックさとしなやかさを兼ね備えたカラダはまさしく機能美の極み。2021年、女性が目指す黄金率ボディに相応しい。彼女をサポートするトレーナー、中村豊さんからヒントをいただくことにしよう。

大坂なおみ選手のトレーナー、中村豊
中村豊(なかむら・ゆたか)/1972年、東京都生まれ。米国フロリダ州をベースに活動するフィジカルトレーナー。2011〜18年までマリア・シャラポワ選手の専属トレーナーを務め、2020年6月から大坂なおみ選手の専属トレーナーに就任。9月の全米オープン優勝に貢献した。

「テニスという競技は瞬発系の運動でもあるし、2〜3時間のゲームを戦い抜く持久力系の体力も必要です。時速150kmを超えるサービスに対応する動体視力敏捷性速筋遅筋すべての運動機能をフルに備えていなくてはならない競技なんです」(中村豊さん)

確かに。数ある球技の中でも広いコートをたった一人でカバーするテニスのシングルス。鋭い反射神経や脚力など、あらゆる身体能力を動員させる必要がありそうだ。選手のポテンシャルはもちろんだが、指導者としての手腕も大いに問われる。

カラダ作り、3つのポイント。

中村さんが重視している指導のポイントは次の3つ。

ひとつは軸の形成。立ったときにカラダの真ん中の正中線を境に左右対称に立てることが大切です。そうしたカラダの軸があって初めて出力がきちんとできるんです。

もうひとつは、テニスは全身運動であるということ。全身を使って力を出すためには体幹の強化が不可欠です。

3つ目は運動のリズム。テニスの動きには強弱があります。ボールを打つとき、走るとき、状況に合わせて出力を調節する意識を持つことが重要になってきます」

大坂なおみ
写真/アフロ

この3つのポイントを体現するために行っているのが、下に示したトレーニングメニューだ。オフコートでのこうしたトレーニングを取り入れることによってテニス選手のカラダはここ20年、飛躍的に進化したという。

とくに、シーズンオフはトレーニングの成果をいちばん出せるチャンス、と中村さん。

中村豊
全方向からカラダに刺激を入れる。/ウォーミングアップでダイナミックストレッチを行った後、全身の筋肉をバランスよく鍛える。その後はランニング、ラダーやミニハードルを使ったアジリティトレーニングで異なる刺激を入れていく。

「シーズンオフの1〜2か月は一年を振り返ってできたことできなかったこと、来年に向けてやりたいことを吟味する時間。そこで筋力なり心肺機能なりを底上げしてカラダを変えることができます。

ただし、コートに入ったときに変化したカラダを生かせるかどうかはまた別の話。筋肉をつければいいというものでもないし、体脂肪を減らせばいいというものでもありません」

中村さんがサポートチームに加わる前の話になるが、2018年、大坂選手はシーズン前に7キロ減量している。その後のシーズンではグランドスラム初優勝を果たした。

大坂なおみ
大坂なおみ(おおさか・なおみ)/1997年、大阪府生まれ。3歳で渡米し、2013年にプロ転向。日本人初のグランドスラムシングルス優勝、男女を通じてアジア初の世界ランキング1位を果たす。写真は、2019年、ストレートヘアに変身して話題となった大坂選手。ドレスはドバイデューティーフリーWTAサマーパーティーで着用したもの。
写真/REX/アフロ

「そのタイミングでの減量が大坂選手には合っていたんでしょうね。今後は筋力を上げていくことでポジティブな部分が出てくると思います。人間のカラダ、とくに女性のカラダは常に変化しているので、トレーニングのやり方もただカラダを絞るのではなく、バリエーションをつけていくことが大事です」

大坂なおみ
オフコートでの筋トレのショット。広背筋を鍛えるラットプルダウンを行っている。筋トレの頻度は週に4回。
写真/Abaca/アフロ

大坂選手の身長は180cm。以前、中村さんが指導していたシャラポワ選手は188cm。どちらも高身長で四肢が長い体型。こうした体型はテニス競技に有利といえるのだろうか?

「手脚が長い選手は動作モーメントが長いので、ある意味、末端に振り回されやすい。だから体幹を徹底して鍛える必要があります。サービス、リターン、フォアハンド、バックハンド、どんなときも頭のてっぺんから脊柱、股関節にかけてまっすぐな状態で前後左右に自在に動けるようにする。

独楽(こま)がうまく回転しているときは軸がまったくブレませんよね。あれと同じことで左右のブレがない状態で出力するとボールに力が伝わるんです」

大坂なおみ
テニスの練習の前に行うダイナミックストレッチ。脊柱の可動域を高めることが軸をしっかり保つ秘訣だ。
写真/Abaca/アフロ

よって、シャラポワ選手には徹底した体幹トレーニングを指導した。一方の大坂選手への指導はまたひと味違うものがある。

「シャラポワ選手は骨盤が広い体型ですが、大坂選手は骨盤が狭く股関節がタイト。野球でいうならホームランバッター、陸上ならスプリンタータイプの体型です。こういうタイプは出力が高い。その動きにもっと磨きをかけるためには、追い込まれたときに崩れない筋力をつけながら、同時に柔軟性を養うことが課題になってきます」

大坂なおみ
チューブを使ったコンディショニングトレーニング。体幹を軸に肩関節の出力を高め、パフォーマンスアップに繋げる。
写真/Abaca/アフロ

ただでさえポテンシャルの高い体型。さらに柔軟性を身につければ鬼に金棒。今後、さらなる飛躍が期待できそうだ。

「美しさ」のポイント。

シャラポワ選手はプロテニス選手とモデルの二足のわらじを履いていたことは有名だし、大坂選手も時計のCMでスラリとしたドレス姿を披露した。いずれも機能だけでなく美しさも兼ね備えた、まさに黄金率ボディ。

マリア・シャラポワ
マリア・シャラポワ/1987年、ロシア生まれ。世界4大大会すべてに優勝し生涯グランドスラムを達成。“テニス界の妖精”と称された美貌でも名を馳せた。2020年2月引退。写真は、米国雑誌主催のパーティーで披露したドレス姿。
©ZUMAPRESS.com / amanaimages

鍛え上げられた筋肉と女性らしい美しさは一見、背反するようでいて実はそうではない。

「人間のカラダの中で一番出力が高いところは肩関節と股関節です。その間にある体幹がブレずに動けることが重要です。

肩まわりと股関節まわりの筋肉をつけてキュッと絞る。体幹の筋肉をプランクなどで養う。筋肉というエンジンがちゃんとしていて脂肪がコントロールされていれば女性として美しい体型と言うことができると思います」

マリア・シャラポワ
188cmというテニス界屈指の高身長。サービスの際には長い手脚に振り回されやすい体型だが、中村さんの徹底的な体幹トレーニングで軸を獲得。コート中のプレイに反映された。
写真/AP/アフロ

股関節まわりの筋肉は具体的に言うと、大臀筋中臀筋ハムストリングス内転筋。肩関節まわりは広背筋をはじめとする肩甲骨周辺の筋肉だ。とくに姿勢に影響する背面の筋肉をつけることは大事なポイント。

「こうした筋肉をしっかりつけていくと、激しい動きの中でも軸をしっかり保つことができるようになります。まっすぐ立っているときだけでなく、激しい動きの中でも軸がブレない。それが“美しい”と表現されるんです」

自分には無関係と思うなかれ。

プレイ中の彼女たちのフォームを見てみると、確かに軸がブレていない。文句なくカッコよく美しい。とはいえ、所詮はトップアスリートの話だし、自分には無関係、と思うなかれ。

マリア・シャラポワ
オフコートでの筋トレのショット。広背筋を鍛えるラットプルダウンを行っている。筋トレの頻度は週に4回。
写真/AP/アフロ

「カラダは良くも悪くも思っている以上に変わります。トレーニングを始めて1週間から2週間で変わってきたなという感覚が生まれてくるはず。大坂選手でも一般の人でもこの感覚は同じはずです。同時に、トレーニングしている意義が何かをより明確にすることが大切。

プロ選手が試合に勝ちたいというモチベーションがあるように、一般の方なら痩せたいのか筋力をつけたいのか、どの部分をどうしたいのかをはっきりさせる。何が自分にとってのモチベーションになるのかを明確にしてほしいですね」

勇気、いただきました!

取材・文/石飛カノ

初出『Tarzan』No.801・2020年12月17日発売

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