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Q1. なぜランがおすすめなの?
A. 体脂肪が効率的に燃やせるから。
コロナ禍による運動不足で太った人は多い。運動不足にしろ、食べすぎにしろ、太って緩んだカラダを絞るなら、走るのがいちばん手っ取り早い。
肥満は、単に体重が重たいことではなく、俗に贅肉と呼ばれる無駄な体脂肪が溜まった状態。痩せるには、体重ばかりに気を取られないで、体脂肪を絞る意識を高めるべき。そのために有効なのは、運動中に酸素を介して体脂肪を消費する有酸素運動。そのエース的存在がランだ。
有酸素には、他にも水泳やバイクなどがある。でも、水泳には技術が要るし、プールに通わなくてはならない。バイクにも快適に走れるスポーツタイプの自転車が不可欠だ。
その点ランに特別な技術は不要。自宅周辺で気軽に行えるし、シューズ以外に道具も要らない。消費カロリーが稼げ、始めるハードルも低く、日常生活に組み込みやすくて継続性も高いから、効果抜群なのである。
Q2. どのくらいのペースで走ったら痩せるの?
A. 笑顔で話せるニコニコペースが最適。
ランで挫折する人の多くは、だいたいペースが速すぎる。走力以上のスピードで走った挙げ句、「こんな辛い運動は嫌だ!」と気持ちが折れてしまう。
痩せランに至適なのは、友人と笑顔で会話できるゆったりペース。いわゆるニコニコペースだ。3密を避けて一人で走ることが求められるウィズコロナ時代に即して言うと、一人で鼻歌が歌えるペース。自覚的には「ややきつい」と感じる速さだ。
なぜニコニコペースがいいのか。ランの2大エネルギー源は、糖質と脂質(体脂肪)。ペース(運動強度)が速いほど糖質が使われやすく、ペースが遅くなるほど体脂肪が使われやすいという性質がある。
そう聞くと、ランより遅くてラクなウォーキングでいい気もするが、そうは問屋が卸さない。有酸素運動の消費カロリーはペースが速くなるほど大きい。ウォーキングはランより体脂肪が使われやすいのは事実だが、ペースが遅すぎて消費カロリーがあまり稼げないから、思ったほど痩せられないのだ。
消費カロリーがそこそこ稼げて、体脂肪が燃えやすいのは、ニコニコペースのランニング一択なのである。
Q3. いきなり走ってもいいの?
A. 太った人はまず歩く。でも速歩で。
健康体ならランはすぐにでも始められる。だが、太りすぎている人は、走りたい気持ちをグッと抑えて、まずはウォーキングから始めた方がいい。ランでは、着地時に体重の2〜3倍の衝撃が膝などに加わる。体重が重たい人ほど、着地時の衝撃が強くなり、膝などがトラブルに見舞われる危険が高い。痛みがあるとメゲて、ランをドロップアウトしたくなる。
基準にしたいのは、身長と体重から求めるBMI。これが25を超えると日本では肥満とされる。BMI25以上の人はウォーキングから開始。ウォーキングは着地衝撃がほぼないから、太った人も安心なのだ。
ただし、痩せランの前哨戦となるウォーキングは散歩とは違う。減量狙いだから、大股で腕を大きく振り、キビキビ歩く速歩で。これなら体脂肪も効率的に燃える。しばらく続けてBMI25未満になったら、速歩のペースを速めてランへ移行しよう。
Q4. 週何回走ったら痩せるの?
A. 月40kmをクリアする頻度が正解。
太った人ほど成果を出したくてウズウズして、「週5回走って激痩せだ!」といった無謀な目標を立てがち。走れば走るほど、消費カロリーが増えて痩せやすいが、太っている人は総じて運動が苦手。いきなり週5回も走れる人は、激レアだろう。
週何回走れるかは人それぞれ。在宅勤務中ならいつでも走れそうだが、通勤が復活したら走るタイミングは限られる。事情を無視して一律に週何回と決めるのは乱暴すぎる。
有効なのは、月単位&週単位で走る距離を決めること。頻度を問わず、トータル何km走ったかで、どれほど痩せられるかが決まるからだ。
「初心者は月40km、週10kmをクリアするように計画して習慣化しましょう。週3回なら1回3km強、2回なら1回5kmです」(フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さん)
途中歩いてもOK。これなら頻度は好きに決められる。 最終的な狙いは月80km、週20km。
「月80km走れるようになれば、体脂肪を燃やしやすい痩せ体質に変身できます。走りすぎると障害を負うリスクも上がりますが、80kmまでなら、その恐れもほぼないでしょう」
Q5. どこを走ったらいいの?
A. 信号機だらけのご近所が初心者にGOOD。
ランナーにはお気に入りのホームコースがある。
信号機のない自然豊かな公園や遊歩道が徒歩圏内にあるのが理想だが、そう都合よく公園や遊歩道が近所にあるわけではない。わざわざ遠くまで行くのも面倒だから、そういうときはあえて自宅周辺にホームコースを設定。不便さを逆手に取れば、ランは続けやすくなる。
「自宅の周りのコースだと、必然的に信号機があります。初心者は走り続けるのを嫌いますが、赤信号で足止めを食らうたびに呼吸がラクになります。信号機でストップ&ゴーを繰り返して休み休み走ると、知らない間に走力が高まり、案外長い距離を走れるようになるものです」
自宅近辺でランが習慣化できたら、時間に余裕がある休日に最寄りの公園などまで遠征。一定ペースで走り続ける気持ちよさを体感しよう。
Q6. いつ走ったらいいの?
A. 自分が続けやすいタイミングを見つけよう。
ランナーは大きく朝ラン派と夜ラン派に分かれる。朝型で早起きが得意なら、朝イチで走ろう。朝運動しておくと、その日一日が快適に過ごせる。
夜型で日が落ちてからもまだまだ元気なら、夕方以降にランニング。カラダを動かすと体温が高くなり、その後体温が下がるときに眠りに入りやすくなるから、安眠できそう。
在宅勤務日や休日は、午後ランを試してみるのもいい。体温は早朝と夜が低く、午後3時〜6時頃にいちばん高くなる。運動生理学的には、体温(筋温)が高い方がカラダは動かしやすい。この時間帯なら、ランが多少不得手な人でも、楽勝で走れるかもしれない。
月曜は朝、水曜は夜などと浮気せず、時間帯はなるべく固定した方が継続性は高い。定期的に走らないと痩せられないから、自分にとって続けやすい時間帯を見つけよう。
Q7. シューズ選びのポイントは?
A. フィット感を大切にリアル店舗で。
ランを続ける秘訣は、まるでシンデレラのように、自分の足にぴったり合うシューズを見つけること。便利だからと、ネットショップで足入れもせずに買い求めるのは論外。
シューズを作る土台となるラスト(靴型)はメーカーによって違うし、同じメーカーでもモデルで異なる。品揃えができるだけ豊富なランニング専門店に足を運び、初心者モデルを片っ端から試し履き。そこから、マイベストフィットを見つけよう。
「オレは学生時代からN社のシューズしか履かない」といった謎の思い込みに囚われるのはNG。
「運動不足や加齢などで土踏まずのアーチが落ちたりすると、足の長さや形は変化します。学生時代はフィットしていたとしても、現在も同じかどうかはわからないのです」
また、足腰がまだできていない初心者は、安定性とクッション性に優れたタイプから選ぶのが鉄則だ。
チェックしてみよう!
- ランニング専門店で買う。
- レベルに合ったものをチョイス。
- 足にフィットするものを選ぶ。
- スタビリティ(安定性)は十分か。
- クッショニング (衝撃吸収性)は十分か。
- アッパーの伸縮性は十分か。
- その場で軽く走り、 違和感はないか。
Q8. 走る目安は時間? 距離?
A. 初めは時間、慣れたら距離で走る。
走るときは時間を目安にすべきか、それとも距離を目安にすべきなのか。時間が指標だとオーバーペースが防げる。30分走ると決めたら、速く走っても、ゆっくり走っても同じ。ならば、のんびり走ろうと思える。
ペースが摑めてきたら、距離を基準とする。前述のように、月間&週間の走行距離を決めると、生活パターンに即して走る頻度が定まる。
距離を基準にすると、気になる消費カロリーも概算できる。ランの消費カロリーの目安は、体重×距離という公式で求められる。体重70kgの人が5km走ったら、70×5で約350キロカロリー消費するのだ。
消費カロリーがわかると、何kg痩せるかが気になるが、そこにあまりこだわりすぎるのはNG。
体脂肪は1g7.2キロカロリー。ランで350キロカロリー消費しても、体脂肪換算では50gしか減らない計算。ガッカリしそうになるが、一度走ると代謝が高い状態が24時間以上続く。その間は普段より多くのカロリーと体脂肪が燃えているから、実際にはこの机上の計算を遥かに超えて痩せられる。心配無用だ。
Q9. ウェアは何を基準に選ぶべき?
A. デザインとともに機能性を重視する。
デザイン性に優れた、気分が上がるウェアがあれば、運動だって楽しくなる。加えて重視すべきは、機能性。部屋着のように何の仕掛けもない服ではなく、専門店でラン用を買おう。
肌寒い季節こそ、ランのベストシーズンだが、寒すぎるとカラダの動きは悪くなるから、保温性を大事に。でも、走ると体温は上がるから、外へ出たときに、「少し寒いかな」と思うくらいの装いでちょうどいい。
冬でも汗をかくから、吸汗速乾性はマスト。上から羽織るウィンドブレーカーは、発汗を妨げない通気性の高いものをチョイスしたい。
コンプレッション系のウェアなら着膨れが避けられるし、筋肉が適度に刺激されて動きを意識しやすくなる。紫外線は年中降り注いでいるが、紫外線が目から入ると疲労を起こしやすい。帽子とサングラスで防ごう。
ウェア選びのポイント
- 少し寒いと感じるくらいがちょうどいい。
- 吸汗速乾性の高いものを選ぶ。
- ウィンドブレーカーは通気性の良いものを。
- コンプレッション系ウェアで動きやすく。
- 帽子やサングラスで紫外線を避ける。
- 鍵やスマホを入れるスペースを確保。
Q10. マスクして走るべき?
A. 3密を避け、間隔を空けよう。
コロナ以降の「ニューノーマル」の一つに運動中のマスク着用がある。
ジムなど屋内での運動ではマスク着用は必須だが、屋外でのマスク着用はケース・バイ・ケース。日本臨床スポーツ医学会と日本臨床運動療法学会は、すれ違う程度で感染するリスクは低いため、屋外運動時のマスクや口鼻を覆うものの着用は、基本的に推奨しないとしている。
何よりも大切なのは、3密になりそうな場所と時間帯を避けて一人で走ること。ほぼ誰ともすれ違わないなら、必ずしもマスクはしなくていい。
それでもマスクはポケットに忍ばせておく。スポット的に3密が生じているところを通過する際は、すかさずマスクで口鼻を覆おう。走り終わってカフェやコンビニなどに立ち寄るときは、タオルで汗をよく拭き、呼吸が落ち着いてからマスクをして行く。汗だくでハァハァゼイゼイと荒い息のままで人前に出るのは、マナー違反だ。
Q11. ウォーミングアップは必要?
A. 速歩から始めれば省略して大丈夫。
教科書的には、運動前には準備運動としてウォーミングアップが欠かせない。運動の主役となる筋肉は、体温が十分に高く、血液循環が活発になっている方が動きやすい。そうした環境を整えるのが、ウォーミングアップの狙いである。
だが、ランに関しては、ウォーミングアップは省略してもOK。そもそもウォーミングアップでもっともポピュラーなのは、スローテンポでのラン(ジョギング)。ゆっくり走り出せば、いちいちウォーミングアップをやらなくてもいい。走る前にやるべきことが多すぎると、それを面倒に感じてランに取り組む気持ちが萎んでしまう恐れがある。
速歩→ゆっくりランと少しずつスピードアップして、顔が火照って軽く汗ばんできたら準備完了のサイン。天気によっても変わるが、時間にしてここまで6〜8分前後だろう。そこから、ニコニコペースまで足を速めていこう。
Q12. 食べてから走るべきか、空腹で走るべきか?
A. どちらにもメリットがある。
痩せたいなら、食べてから走るべきか、それとも走ってから食べるべきか。結論を先に言うと、どちらにも、それなりのメリットがある。
食後すぐに寝ると牛になるという古い戒めがあるけれど、確かに食後にダラダラしていると太りやすい。そのメカニズムはこうだ。標準的な食事には多くの糖質が含まれており、食後は血糖値が上がる。怠惰に過ごすと使い道のない血糖は、脂肪細胞で体脂肪に合成される。
しかし食後に走ると、血糖は運動のエネルギー源として筋肉で消費され、余分な体脂肪の蓄積が防げる。それで肥満が防げるのだ。
次に、走ってから食べると、運動中の体脂肪の燃焼が促される。
食前の空腹状態(ファスト)で有酸素運動(カーディオ)を行うことを「ファスト・カーディオ」と呼ぶ。空腹時は体脂肪をエネルギーとして使いやすいので、そのまま走ると体脂肪が減りやすいのだ。ただ、脱水しないように、冬場でも事前の水分補給は怠らないようにしたい。
食事との兼ね合いに神経質になりすぎないで、思い立ったら吉日で好きなときに気軽に走り出そう。
Q13. 走る前にはやはりストレッチ?
A. ストレッチはむしろ終わった後に。
運動前にストレッチをすべきだというのは、律儀な日本人の常識に刷り込まれている。ここでいうストレッチは、反動を使わずに筋肉を静かに伸ばして緩める静的ストレッチのことだ。
しかし、運動前のストレッチはパスしていい。ストレッチがウォーミングアップになると誤解している人もいるが、ストレッチに筋肉やカラダを温める作用はほとんどない。
「それどころか、熱心なストレッチで筋肉を緩めすぎると、関節の安定性が下がり、ランのパフォーマンスが落ちる恐れもあります」
運動前にやるとしたら、動的ストレッチ。動的ストレッチとは、ラジオ体操のように反動も使いながらカラダをダイナミックに動かすもの。股関節や肩甲骨まわりの動きが滑らかになって走りやすいし、筋肉を温めるウォーミングアップにもなる。
ただ、ウォーミングアップ同様、本題前の前置きが長くなると、腰が重くなってしまうから、走る前には静的も動的もストレッチは不要。
静的ストレッチをするなら、走った後で。酷使して緊張したままの筋肉をストレッチでほぐしてやると、明日に疲れが残りにくくなる。